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052 一人の限界

 マジックバッグ……収納の魔導具という名前だと魔法付与に気づかれそうだということで、この名前になった……は、かなり浸透してきているらしい。

 エリーザさんも手に入れたらしいし、八百屋や肉屋のご主人に聞くと、仕入れを担当している商人がマジックバッグで仕入れ量が増えたとか。


「街中の商品の値段が下がってきたのは良いことなんだけど、次が求められるとはなぁ」


 そう。王族貴族や冒険者だけでなく、商人にまで普及してきたことで、もっと使い勝手のいいマジックバッグを、と求められ始めたのだ。

 小分けにした肉や手で持てるサイズの果物、卵なんかは既存のマジックバッグに収納できるが、出来ることなら肉はそのまま1頭、野菜や卵も箱ごと入れたいと要望が来たのだ。

 まあ、要求は理解できる。箱に入っている果物や卵を1つ1つマジックバッグに入れるのは大変だし、肉だって小分けしないほうが楽だろう。


「とはいえ、どう考えても鞄に付与するようじゃ、要望は叶えられないよなぁ」


 当たり前のことだけど、果物が箱ごと入る鞄は存在しないし、牛や豚を1頭単位で淹れられる鞄なんて作ることは不可能だ。

 収納の魔導具は重量を感じないから、その点では持ち歩きが不便になることはないけれど、それだけ巨大な鞄となると、かさばるという点で持ち歩きが困難だ。

 もちろん、街の外から仕入れる商人なら馬車を使っているけれど、そんな巨大な鞄に牛や豚を入れていたら怪しすぎるだろう。


「別に鞄に限ることはないんだよな……」


 よくよく考えてみると、無属性の魔石を組み込めるのは鞄に限らないし、理論的には鍋でも巾着でも付与は可能なはずだ。

 となると、商人が持ち歩くもので、巨大なものを入れても不自然ではない……馬車か?

 ちなみに、実験で空間収納の魔法は入口に展開されるので鞄の中に何か入れていても影響はないらしいから、馬車の中にカモフラージュ用の荷物を入れておけば不審にも思われない。


「問題は誰がどこで付与するかだな」


 当たり前のことだが、馬車みたいな大きいものを錬金術師ギルドに運んでもらうわけにもいかないし、馬車置き場のような商人なら誰でも入れる場所で付与をすれば魔法付与の秘密が簡単にばれてしまう。

 馬車の一部だけを持ってきてもらって、錬金術師ギルドで付与する? ……いや、これも難しいか。

 付与自体はできるだろうけれど、どうやって組み込むかを大工に正確に伝えないといけないし、そもそも壊れやすい魔石を付けたまま組み立てるのも不安だ。


「うーん」


「悩んでいるわね」


 おっと、錬金室で悩んでいたのだが、どうやら扉が開いてたようで隙間から師匠の声が聞こえる。


「入っても大丈夫ですよ」


「どう? 商人協会からの依頼は?」


「難しいですね。ギルド内で付与できるものだと商人たちの要望は叶えられないんですよ」


「商人たちの要望は今よりも大型の荷物を入れられる収納の魔導具……まあ、ココの狭さを考えたら難しいわよね」


 錬金術師ギルドはこのサイズが多いので、別に師匠のギルドが特別に狭いというわけじゃないけれど、それでも商人たちの要望を叶えるのは難しいだろう。


「一応、馬車に付与すれば要望は叶えられると思うんですけど、僕が馬車置き場に赴くわけにもいかないですし、かといって部品に付与した後、大工さんに組み込んでもらうのも不安で……」


「なるほど。解決策は考えてあるのね……そうね、そもそも商人たちの魔導具ってギルドで作る必要ある?」


「は?」


 師匠が変なことを言い出したぞ。協会長からは商人たちからの要望を叶える方法考えて欲しいって……あれ? よく考えたら僕に付与しろとは言ってないな。


「気づいた? 別にカズに付与してほしいって依頼じゃないわよ?」


「……すみません、自分が付与できるので仕事の依頼だと思ってました」


「そういうことだから……そうね、錬金術協会と付与魔術師協会に頼むなら大型の倉庫でも借りてもらって、そこで付与する形ね。外国との取引をするような商会なら、帝城で付与してもいいんじゃない?」


 はあ~、やっぱり一人で考えているとアイディアが凝り固まってダメだな。

 師匠の言うことはもっともだし、協会の方にはこれを基本として考えてもらおう。


「……すみません、それで協会の方に伝えてもらって良いですか?」


「ええ、もちろんよ。……そこまで落ち込むことないわよ、馬車に空間収納の魔法を付与するってアイディアは最高だし」


「そうですか?」


「どこに付与するのが良さそう? やっぱり馬車の入り口?」


「秘密保持契約を結んでいる運び手が十分にいればそれでもいいですけど、人数が少ないなら馬車の中に組み込むのもアリかなって」


 馬車内に付与すれば、仕入れている農家だったり酪農家だったりに馬車の中に運んでもらって、村人たちが離れてから自分たちでゆっくり収納することができるだろう。


「ふむふむ、その辺も協会に伝えておくわ」

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