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050 なかなか上手くいかない

 師匠に協力してもらって、空間収納の魔導具をハーフエルフの冒険者に優先的に回すというのは何とか道筋がついた。

 ……ま、問題は俺の方で起きていて、あれから色々と魔導具を考えて作ってみたけど、どれもこれも実用性なし。

 自分が才気あふれる天才だと思っていたわけではないけれど、スクロールを仕入れては失敗を続ける生活はやはりメンタルにくるものがある。


「あ~~~! 上手くいかないっ!」


「いやいや、カズ。どれもこれも今までにはない魔導具で喜んでいる人はいるから」


「それはそうですけど、どれもこれも冒険者向けじゃないって言われたじゃないですか」


 ちなみに、ここ最近の新作は、空間魔法の防御魔法、空間固定を付与したマントと水魔法を付与した簡易放水機。

 簡易放水機はウォーターカッターをイメージして作ったけど、ウォータージェットにすらならなかった失敗作だったな。

 空間固定を付与したマントはマントを着用していると全方位を守れる優れものだけど、効果時間が1時間しか保たないことと空間固定が目に見えないので味方からも見えないのはダメと言われた。


「放水機は花屋のご主人が便利だって言ってたじゃない」


「……空間固定のマントは、ただでさえ少ない空間魔術師のスクロール付与が滞るから禁止されましたけどね」


 錬金術師協会としても王族や貴族にとっても、僕の魔導具の中では空間収納の魔導具が一番使い勝手が良いから、空間魔法を使った魔導具はあんまり歓迎されないんだよな。

 ちなみに錬金術師協会では無属性の魔石を付けた魔導具のストックは十分らしいし、これまでは協会やギルドのなかった付与魔術師も集まって組織を作り始めたらしい。


「そういえば、カズ。協会長からの依頼は受ける気はある?」


「受けません」


 実は錬金術師協会の協会長から付与魔術師協会の協会長に就任してほしい、あるいは付与魔法の使い方を付与魔術師たちに懇切丁寧に説明してほしいと依頼されていた。

 もちろん、受ける気はゼロだ。そもそも、僕は師匠に恩返しするために錬金術師ギルドに所属しているのであって、付与魔術師協会の協会長になったら、それが叶わない。

 さらに言えば、付与魔法のやり方を懇切丁寧に説明するなんて、この世界のルールに抵触するようなことをするつもりはない。


 師匠が僕にやったように、この世界では先人からの口伝や本での学習がメインで、天職持ちなら自然とスキルや魔法の使い方がわかるようになっている。

 これまでに有効なスキルの使い方がわからなかったからという理由や、僕が稀人だからという理由で、その習慣を変えるようなことはしたくない。


「そう? 私としてはありがたいけど」


「付与魔術師たちには師匠が僕にしてくれた程度の説明はしましたし、付与魔法の勉強をしたときに使った本も教えましたから」


 この世界のルールは変えたくないけれど、それで付与魔術師たちを見捨てるというわけにもいかないので、簡単な説明と勉強になる本は紹介してある。

 そのことは錬金術師協会の協会長にも伝えてあるんだけど、懲りずに師匠経由で依頼してくるものだから困ってしまう。


「本で勉強できる人は一部だと思うけど?」


「それはそうですが、僕自身がそうやって付与魔法を勉強しましたからね。それ以上に説明してほしいと言われても、困ってしまいますよ」


 これは付与魔法だけに限らず、錬金術でもそうだ。

 師匠の元から離れるつもりはないけれど、もしも師匠の下から離れて錬金術師ギルドを立ち上げることになったとしても師匠から教わったようにしか教えられない。

 そもそも錬金術にしても付与魔法にしても、原理もわからなければ何ができるかも正確にはわかっていないのだから。


「ま、あとは組織を立ち上げようとしている付与魔術師たちが考えることね」


「ですよ。こちらは、いつも通りの錬金術師としての仕事をするだけです」


 僕のせいというのはあるけれど、今は錬金術師としての仕事が立て込んでて僕も師匠もあり得ないくらいの忙しさだ。

 師匠は今まで通りの魔導具づくりに加えて空間収納のスクロール作り、僕は僕で錬金術で魔導具を作る傍ら、錬金術師協会から運ばれた魔導具に魔法付与やスキル付与をする毎日。

 それなのに、付与魔術師たちの面倒まで見ろと言うのは、流石に物理的に無理な話だろう。


「この忙しさもいつまで続くのかしら」


「空間収納の魔導具がある程度いきわたるまででしょうねぇ」


 唯一の救いは1日に使える魔力に限りがあることと、魔力回復ポーションが希少過ぎて街中では消費されないことだろうな。

 もしも魔力回復ポーションが日常で使用できるものだったら、それこそデスマーチ並みの労働時間を課せられていただろう。

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