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049 陛下との話し合い(エレオノーラ視点)

「なっ!? 貴重な空間収納の魔導具をハーフエルフに放出しろだとっ!?」


 カズの師匠こと私、エレオノーラは錬金術師協会の協会長とともに帝城にやってきて、カズが言っていたように空間収納の魔導具をハーフエルフが購入できるように皇帝陛下に奏上したわ。

 そうしたら案の定、噛みついてきたのは謁見室に集まっていただけの貴族たち。

 皇帝陛下や宰相が国の趨勢を考えて文句を言ってくるのなら、こっちとしても話し合う余地はあるけれど、自分の利益しか考えない木っ端貴族なんて無視でいいわね。


「少し黙れ。オリアーニ公爵令嬢……いや、今は市井に下り、ただのエレオノーラだったか」


「はっ! オリアーニ公爵家との縁が切れたわけではありませんが、現在は錬金術師ギルドを経営するただの錬金術師です」


「錬金術師風情が皇帝陛下に意見するなど、何たる不敬な!」


 陛下に黙れと言われたばかりだというのに、木っ端貴族がまたも口をはさんでくる……あら、よく見たらオリアーニ公爵家を一方的にライバル視している侯爵家の当主じゃない。

 確か令嬢が第二王子の婚約者になったのに、まったく王子妃教育が進んでいなくて、なぜかウチの陰謀だとか喚いているのよね。


「騎士団長」


「はっ! ……陛下の言葉を遮る貴様が不敬だ。直ちに出ていけ!」


 あらあら、騎士団長の命を受けた近衛騎士団の騎士たちに羽交い絞めにされて、侯爵家当主は連れて行かれてしまったわ。

 まあ、親があの有様では娘の王子妃教育が進むはずがないだろうし、下手をしたら第二王子との婚約もなくなるかもね。


「ふう、雑音が減ったな。……して、エレオノーラ」


「はっ」


「稀人様はハーフエルフが空間収納の魔導具を購入できるようにすることを望んでいるのだったな」


「はい。先日、私のギルドを訪れたハーフエルフの冒険者によって、この世界の現状を知ったようです」


「……ふむ、確かにハーフエルフの冒険者は種族特性ゆえに特殊な状況になっておるが」


「そもそも現在の冒険者はハーフエルフに荷物を持たせ、自分たちが戦うと言ったスタイルです。ならば、大量の荷物が入る空間収納の魔導具はハーフエルフにこそ持たせるべきでは? というのが稀人様の見解です」


「ふむ」


 これはカズと事前に打ち合わせていた理由。稀人様であるカズが言えば、たいていの願いは受け入れられるはずだけど、それでも理由は必要。

 陛下や貴族たちが納得するのもそうだけど、カズ自身が稀人様だからという理由でゴリ押しするのを嫌がっているからね。


「もちろん、貴族や騎士団に供給し終わった後で十分です。都市間の輸送を行う商人、単独行動がメインの高位の冒険者、そしてサポートをメインにするハーフエルフの冒険者という順番で市井に流していただければ」


 稀人様であるカズが要求したとしても、流行の最先端にいたい貴族や大規模討伐に出る可能性が高い騎士団よりも優先するのは不可能なこと。

 でも、普通の冒険者や少しの荷物しか運ばないような人が空間収納の魔導具を持っているのに、ハーフエルフの冒険者が買えない事態は避けたいのよね。


「ふむ、それでも時間がかかるが」


「もちろん、錬金術師協会も協力させていただきます」


 ここでようやく協会長が口を開く。まあ、ここで黙っていたら何のためについてきたのかわからなくなるしね。

 これも事前に協会長とは話し合い済み。錬金術師協会では付与魔法は施せないけど、無属性の魔石を組み込んだ魔導具を作ることはできるからね。


「付与は帝城で……か」


 ちなみに謁見室には既に魔導具と付与魔法の関係を知っている人間しかいない。

 先ほど連れて行かれた公爵家当主も確か騎士団の兵站部門の責任者だから知っているはずだけど、そこからも外されるかもね。


「もちろん空間魔術師として私も協力はしますが、1日に作成できるスクロールには限度があります」


 錬金術師と空間魔術師の魔力は別物だけど、それでも空間収納は高レベルの魔法だから、そんなポンポンとスクロール化できないのよね。

 そもそも空間魔法は低レベルの時点では防御用の魔法ばかりで、便利系の魔法がないからレベルが上がりにくいのよね。

 空間収納を覚えると高頻度で使うことになるから、レベルはすぐに上がるんだけど。


「ふむ……そうだな。確約することはできんが、心には留めておこう。……宰相、次の貴族会議では稀人様のお言葉として議題に上げるぞ」


「はっ、準備と根回しをしておきます」


 ま、今回はこのくらいで十分かな。もとより1回の謁見で簡単に決まることではないと思ってはいたし。

 あとはお父様と話し合って、空間魔術師をそろえていかないとね。

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