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048 これからの目標

 ハーフエルフは成長が遅いからスキルや魔法の習得が遅い……言われてみれば納得だが、そもそも天職でもない魔法を覚えられるメリットの方がデカくないか?


「確かに天職の覚えが悪いのは困りますが……」


「ま、そういうわけでハーフエルフはどの職業でも一人前と扱われづらくって、冒険者のランクも分けられているのよ」


「武器を使った戦闘でも魔法でも、わたしたちハーフエルフは他の人の足を引っ張ってしまいますから」


 エリーザさんは悲しそうにそういうが、本当にそうか?

 そもそも、この世界の魔力は魔法やスキルごとにあるから、魔法の使える種類が増えるということは、それだけ使える魔法の回数が増えることになる。

 レベルの低い魔法であっても、魔法が使える回数が増えるのは便利だし、魔力が余っているのなら、それこそ野営で活躍しそうなもんだが。


「そういうわけで、S級冒険者のハーフエルフは荷物持ちや雑用を担当しているんです」


 そういうと、エリーザさんは購入したポーションや魔導具を持って帰っていった。


「師匠、この世界でも色んなことがあるんですね」


「エリーザのこと?」


「はい、僕はこの世界は天職があるし、自分のやりたい事かどうかは別として生きるのに苦労している人はいないと思っていました」


 この世界には天職がある。それは前の世界のように自分に何ができるのか、何ができないのかがわからないということがない世界と言える。

 だとしたら、やりたいかどうかは別として全員が手に職をつけることが可能だと思っていた。

 しかし現実には天職によって求められるものと求められないものがあり、ハーフエルフという天職にも制限がある種族がいることも分かった。


「どうにかしたい?」


「そうですね。僕の力でどれだけのことができるかはわかりませんが、少しでも不幸な人を減らしたいとは思います」


 別に御大層なことを考えているわけでも、直ぐにでも何かできるというわけでもないが、この世界で生きるための目標ができた気がする。

 これまでは割と自分勝手に魔導具を作ってきていたが、天職というこの世界独特の制度で苦しむ人たちのために、これからは魔導具を作ってみよう。


「ま、いいんじゃない? 稀人様はみんなそうやって困っている人のために行動してきたしね」


 そんなものか? まあ神様も世界を救うほどの善人……自分では自分がそうとは思わないけど……をこの世界に転生させているみたいなことを言ってたしな。

 そう考えれば異世界にやってきたとしても、誰かを救いたいと思うような人たちが集まっていても仕方がないのかな。


「とりあえず僕は天職についていろいろと調べていこうと思います。……師匠には悪いんですけど」


「別にカズの分くらいカバーするわよ」


「いいえ、そうではなく。師匠には錬金術師協会と帝城に空間収納の魔導具をハーフエルフの冒険者が購入できるように働きかけて欲しいんです」


「……ふーん、なるほど」


 天職に関する調べ物をしながらでも、これまでの魔導具づくりは続けられるけれど、協会や帝城との話し合いは師匠に任せたほうが良い。

 師匠ですら稀人である僕に気を使っている節があるので、協会や帝城に僕が直接話しに行けば要求はすんなりと通るだろう。

 だけど、それでは他への影響がわからない。稀人である僕が無理を通すことによって、他の人が悲しむようなことになっては本末転倒だ。


「師匠には手間になると思いますが……」


「わかっているわ。他とバランスを取りつつ、必要な人に魔導具がいきわたるようにすればいいんでしょ? 多分、大丈夫よ」


「そこまで試行を読まれるのは怖いですが、大丈夫なんですか?」


「そもそもS級冒険者みたいに荷物持ち専門にしている人たちが使ってこそ、空間収納の魔導具は意味があるしね。……それこそ、遠出しないのに貴族が持っていても宝の持ち腐れでしょ?」


 まあ、師匠の言うこともそうだけど、簡易金庫代わりと考えれば貴族がもつ意味もあるとは思う。


「同意見ですが、あまり他からの反感を買わないようにしてくださいね」


「大丈夫よ。なんせ私は市井に下ったとはいえ、公爵家の息女で妹は第一王子の婚約者なんだから」


 確かに、そう考えると師匠よりも偉い人は帝都の中でも王族くらいだろうな。

 まあ、貴族や王族といったものと縁遠い僕よりも、権力の恐ろしさは師匠の方がよくわかっているだろうし、あまり口を挟まないほうが良いか。


「では、そちらはお願いします」


「ええ、任せておいて。カズの方は便利な魔導具を作ることを最優先にしなさい」


 そう言い放つと、師匠はギルドから出ていく。

 僕の方は、とりあえず買ってきたものを整理して、それから天職について調べてみるか。

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