047 Sランク冒険者
「しかし、若そうなのに冒険者として活動しているんですね」
エリーザさんは見たところ10代中ごろ。前の世界とは成人年齢が違うと聞いているから、普通のことかもしれないが、やはり中学生くらいの見た目で命を懸けていると聞くと心配になってしまう。
「?」
「??」
「どうしました、二人とも?」
「いえ、わたしはカズさんと同じくらいの年ですよ?」
「そうそう」
ん? なんだ、この世界の人間は見た目年齢もいじれるとかそういうことか? いやいや、でも師匠は僕と同じくらいの見た目だけど、年下だぞ?
「どういうことでしょう?」
「わたしはハーフエルフですから。見た目はこんなですが、年齢は24歳ですよ」
「…………ハーフエルフ」
もちろん師匠から、この世界は前の世界とは違って人間以外の種族がいるということは聞いていたけれど、見るのは初めてだ。
確かによくよく見てみると、綺麗な髪から見え隠れする耳は、僕のものと違って少し尖っている。
「エリーザ、嘘は良くない。……カズ、エリーザがハーフエルフなのは本当だけど、ハーフエルフだから幼いんじゃなくて、エリーザの発育が悪いだけよ」
「どういうことです?」
「ハーフエルフは18歳までは普通に成長して、それからは見た目が変わらない種族なの。つまり、18歳の見た目で止まっているわけで、それまでにここまでしか成長しなかったのがエリーザよ」
は~、それはそれは。何とも世の女性がうらやみそうな種族特性だな。
「エレオノーラさん! 言わなくてもいいじゃないですか!」
「どうせ他のハーフエルフに会ったらわかることでしょ?」
「……そうですけど」
「まあまあ、成長速度は人それぞれですから。僕も師匠と会ったときに年齢で驚かれましたし。……あ、ちなみに同い年ですね。僕も24歳ですよ」
「エレオノーラさんから聞いていたので知っていましたけど、実際に会うとびっくりします。カズさんも若く見えますよね」
まあ、この世界は前の世界……というか、僕のいた国と比べると顔の造作がはっきりしている人が多いから、そう見えるんだろうな。
「そういえば、ハーフエルフと言っていましたけど、エルフもそうなんですか?」
「ああ、エルフはカズは会うことはないから気にしなくても良いけど、基本的に若いままね」
「会うことがない? 帝都にはいないんですか?」
師匠の言い方が気になる。エリーザさんに注意した時は、他のハーフエルフに出会えばバレると言っていたが、エルフは会うことがないと言う。
「エルフは基本的にエルフの森と呼ばれる大森林から出てくることはないんです。わたしのようなハーフエルフは、エルフの森に滞在した冒険者との子供ですね」
「カズは帝都から出るつもりはないんだから、エルフと会うことはないでしょ?」
なるほど。確かに帝都に出てこないというのなら、僕と出会うことはないだろうな。
「そういうことなら、会わないでしょうね。他の種族もそうなんですか?」
「そうね。ドワーフはハーフも含めて魔石鉱山に籠っていて出てこないし、リザードマンも竜骨湿原から出てこない……そう考えると、帝都で出会うのはハーフエルフくらいね」
「そうですね。わたしも帝都に長くいますけど、ハーフエルフ以外は人間にしか会いませんね」
師匠もエリーザさんもそう言うってことは、本当にハーフエルフだけが特別なんだろうなぁ。
「そういえば、冒険者のこともよく知らないですね。エリーザさんはどんな冒険者なんですか?」
「わたしですか? ……えーと、採取や討伐など色々やっているS級冒険者です」
「S級? すごいですね」
前の世界で読んでいた小説なんかでは、S級冒険者というと世界に何人かしかいないようなもので、冒険者の頂点だったはずだ。
「カズ、勘違いしているわね。冒険者の最高ランクはAよ」
「はい?」
すごいすごいと僕が騒いでいると、師匠がそう言ってきた。
「冒険者はGランクから始まって、最高ランクがAよ」
「でも、エリーザさんはSと言っていましたよ?」
「Sランク冒険者は、サポートランク。サポート専門の冒険者です」
はい? サポート専門?
「ええと、天職がサポート向きなんですか? 僕の付与魔術師みたいな」
「違うわ。ハーフエルフは全員がSランクなの」
「種族が関係するんですか?」
「そうです。ハーフエルフは天職に関係なくすべての属性魔法が使えるんです」
ほう、それはすごい。自分の天職とは関係のない魔法を覚えるのは、簡単なモノでも年単位の時間がかかる。
しかし、それが本当ならサポートどころかメインで活躍できるのでは?
エリーザさんの言葉に対して、僕はそう疑問を持った。
「その代わり、ハーフエルフは天職でも成長が遅く、まともな魔法もスキルも使えないんです」




