046 エリーザとの出会い
結局、鑑定系のスキルが付与された魔導具は一般販売されることになったけれど、空間収納が付与された魔導具は王族・上位貴族・騎士団の団長・高位の冒険者など一部にだけ公開となった。
というのも、空間魔術師はレアな天職らしく帝国全土を見回しても、なかなか発見できないらしい。
かといって師匠にばかり負担がかかるのもよろしくないということで、魔導具にスキル付与する方法は公開されたが魔法付与とスクロールの関係は非公開となった。
「まあ、魔法付与で出来た魔導具は失敗続きだったから、非公開になったとしてダメージは少ないしね」
あの後も風魔法や土魔法などを付与した魔導具を作っては見たものの、どれもこれも面白さはあっても利便性はないものばかりとなってしまった。
魔石が存在する属性の魔法は、魔法付与するよりも魔石を利用した魔導具の方が利便性が高いんだよな……交換とか作成も楽だし。
「師匠、ただいま戻りました」
「おかえり、カズ」
つらつらと考え事をしながらの買い出しを終え、ギルドに残っていた師匠に帰りのあいさつをする。
「おや、お客さんですか?」
師匠の前には1人の少女。師匠とは違って、小柄ですらっとした体形をしている。……師匠は肉感的なプロポーションの持ち主だから、対比がすごいな。
「はじめまして、冒険者のエリーザです」
「こちらこそ、はじめまして。師匠の弟子で錬金術師の吾妻和央です。アズマでもカズヒサでも、師匠のようにカズでも呼びやすい呼び方で呼んでください」
「ええと、ではカズさんで」
「はい、エリーザさん。よろしくお願いします」
冒険者と名乗ったエリーザさんだが、僕がこの世界にやってきて初めて会った冒険者とは違って、かなり礼儀正しい。
ちなみに師匠は弟子の成長を喜ぶかのようにニヤニヤしているが、放っておこう。
「本日は素材の買取ですか? それとも魔導具が欲しいのですか?」
「はい、冒険に必要な魔導具とポーションを購入するために来ました」
「エリーザはカズの作った魔導具のお得意様よ」
お互いに礼儀正しく挨拶をしていると、師匠がそう口をはさむ。
「僕の作った魔導具?」
「えっ!? じゃあ、着火用の魔導具を改良してくださったのはカズさんだったのですか?」
ああ、僕の作った魔導具とは空間収納の魔導具じゃなくて、着火用の魔導具を改良したライターみたいな魔導具のことか。
さっきまで空間収納の魔導具に関することを考えていたから、てっきり空間収納の魔導具を渡された冒険者なのかと思ってしまった。
「そう、うちのカズは便利な魔導具をいっぱい作ってるからね」
「少し形を変えただけですよ。いずれ誰かが作っていただろうし、ここじゃないどこかでは既に作られているかもしれませんよ」
空間収納の魔導具のように天職がかみ合わないと生まれないものならともかく、着火用の魔導具や水瓶の魔導具なんかは誰かが改良していてもおかしくはない。
自分のやったことを卑下するわけじゃないけれど、だからといって功績として誇るほどのことではない。
「でも、それでわたしは助かっていますから」
「そうなんですか? 冒険者は着火用の魔導具なんて使わないと思っていましたよ」
あれはそもそもは火魔法が使えない商人が野営をする際、あるいは屋台の店主が炭なんかに火をつける時を想定して作ってある。
師匠に聞いた話では冒険者はある程度の人数でパーティーを組むことが当たり前で、火魔法や水魔法など冒険に必要な属性をそろえるのが必須条件になっているのだとか。
「全員が火魔法を使えるわけでもありませんし、魔力は戦闘のために取っておくのが冒険者の基本ですから」
聞いてみると、移動途中の休憩中はもちろん、野営の際にも交代で見張りを立てるから、基本的に冒険者は着火用の魔導具や水瓶の魔導具を持ち歩くことが多いとか。
「だから、カズの魔導具を欲しがってる冒険者は多いのよ。着火用の魔導具もそうだけど、水差しで作られた魔導具は人気商品ね」
「へ~。確かに依頼が多いなとは思ってましたけど、そんなことになってたんですね」
まだまだ暖かいと言っていい陽気なので小型送風機を改良した魔導具は売れていないが、着火用の魔導具を改良した点火棒、それに水瓶の魔導具を改良した水差しの魔導具は依頼が来る。
てっきり、流行に敏感な商人だったり貴族だったりが依頼してるのかと思ってたけど、冒険者にも人気だったとは。
「カズは帝都に来たばかりのころに冒険者に嫌な目に遭ったから伝えてなかったけど、結構な人気商品ね」
ああ、この世界に来たばかりのころは冒険者に悪感情というか、嫌な気持ちがあったから師匠は伝えてこなかったのか。
まあ、今日エリーザさんと会って大丈夫そうと思ったのかな? 確かに暴力を振るってきた冒険者には僕の魔導具は使ってほしくないけど、冒険者全員がそうなればいいとは思ってないんだけどな。




