044 付与魔法の未来
錬金術師協会に報告に行った師匠が帰ってきたからしてくれた話では、スキル付与や魔法付与を施した魔導具に関しては全て錬金術師協会で買い取るということになったらしい。
もちろん個人的に使用する分は除いていいらしいが、他の人にバレないようにとのことだ。
協会や帝城の方で色々と実験を繰り返して有用性を確かめてから、一般への情報公開に踏み切るらしい。
「というわけで、スキル付与や魔法付与に関する情報を協会と帝城に伝えたいのよ」
「発見したのが僕ということがバレないように配慮してもらえるのなら、良いですよ」
錬金術師協会に付与魔法を魔導具に加える方法を教えないでもらったのは、僕だけに負荷がかかることを懸念したためだ。
鑑定系の魔導具はともかく、空間収納が付与されているマジックバッグは誰でも欲しいものだから、作ってほしいとの依頼が殺到しそうだったしね。
やり方を公開すれば他の付与魔術師や錬金術師が協力して作ることも可能だろうけど、今まで協力したことのない2者が協力するまでには時間がかかるだろう。
協力できたとしても報酬の分配方法も考えないといけないし、そもそも空間魔術師も協力してくれないと空間収納の魔法付与はできない。
師匠に聞くと空間収納のスクロールは利便性が全くなく作られることがない……まあ、荷物の入れ替えの際にスクロールを消費していたんじゃ、バカにならないからな。
というわけで、付与魔術師と錬金術師が協力する体制になっても空間魔術師がスクロールを提供しないと魔導具は完成しない……ね、僕に負担がかかりそうでしょ?
「とりあえず帝城には付与魔術師も空間魔術師もいるから、カズに依頼しないという条件で伝えるのなら大丈夫?」
「そうはいっても比較したりするようで依頼されそうですが……まあ、こちらに負担がかからなければいいですよ」
「ま、その辺は交渉次第ね」
いくら付与ができる環境があったとしても、最初に作った人間が僕である以上はサンプル品だの、比較検証用の品などを要求されるだろう。
想像の中でしか知らないけれど、帝城には王族や貴族がいることだし、要求することには慣れきっていて、自身の望みが叶えられることが当たり前になっているだろうからね。
「ああ、そういえば新しい魔導具も作ってみましたよ」
スクロール自体は市場に売っているものなので、いくつか仕入れて魔導具化してみた。
「本当に?」
「とはいっても、空間収納に比べたら役に立つかどうか微妙なものばかりですけど」
そもそも師匠の持っていた空間収納が便利過ぎる。前の世界でよくあったような時間停止能力はないけれど、街から街へと移動する冒険者や商人は喉から手が出るほどに欲しいものになっている。
今回は水魔法や火魔法のスクロールを仕入れてきたけれど、師匠の空間魔法と比較できるような便利な魔導具は作れなかった。
「どんな魔導具を作ったの?」
「まずはレインメーカーという水魔法を付与した魔導具で、起動すると一定範囲内に雨のような水魔法を展開できます」
もともとは逃走用の魔法らしく、魔法で視界を悪くさせている間に逃げたり、自分たちのにおいを消すために使ったりするらしい。
「逃げる時に魔導具を使うの?」
「いえいえ、これは農業用の魔導具ですよ。畑の中心に設置することで水やりを簡略化するための魔導具です。……難点は設置場所に錬金術師が行かないとダメなところですね」
この魔導具は発動すると魔石から雲が出てきて、そこから雨のような水魔法が降り注ぐ。
ということは、畑の空中に設置する必要があり、スイッチを畑の外に設置することも考えると、畑を横断するような門のような形にしなければならない。
そこまで大掛かりになると、販売して運んでというよりは、錬金術師が現場で組み立てるほうが簡単だし、要望にも応えられる。
「確かにこれは農村に常駐している錬金術師じゃないと使い道がないわね」
「ええ。もう一つはファイヤーボールを放てる魔剣です」
全男子の夢……というと流石に盛り過ぎだろうけど、付与魔法ができるのならやってみたかったことの1つに、魔法をぶっ放せる魔剣作りだ。
まあ、この世界の付与魔法はそんなことはできないし、錬金術で魔導具を作っても火を纏う剣や水が滴る剣が精々だったからあきらめていた。
「剣からファイヤーボールが? すごいじゃない!」
「いえいえ、これが駄作も駄作。まず、ファイヤーボールは軒先の魔石から発動するので狙いが付けづらいんですよ。それに、他の魔法と違ってファイヤーボールは1回の発動分しかスクロールに転写されてないようなので、複数回の発動ができないんです」
「……それは運用が難しいわね」
まず剣先で狙いをつけるのが難しいし、1発限りの技ともなれば、おいそれと使うこともできない。
何よりも魔導具として作ったので、剣自体が弱く、普通の武器として使う場合には心もとない。
やっぱり戦闘系の魔導具を作るのは難しいってことだな。




