043 付与の有用性と危険性(エレオノーラ視点)
「……そういえば、スキルや魔法を付与と言っていたな?」
「あら、目ざといわね……冗談よ。カズが作ったのは錬金術のスキルを付与した魔導具だけじゃないわ」
「付与魔法を付与したのか?」
「……いいえ、私の空間魔法を付与してもらったわ」
「…………は?」
まあ、この反応になるわよね。自分が使えない魔法を付与したなんて話を聞かされたら。
「カズはスキル付与と魔法付与の穴を見つけたのよ。それによって、自分が使えない魔法でも付与できることを発見したの」
「それは稀人様だからできる方法か?」
「いいえ、おそらくは誰でもできるわ。スキル付与と魔法付与を使える付与魔術師ならね」
「なら、それを!」
「開示するかどうかはカズが決めること。この世界で生きている人もそうするし、カズが稀人様だからって特別扱いすることじゃないでしょ」
「ぐぅっ……」
まあ、協会長の言いたいこともわかるわ。付与魔術師は外れ天職で、まともに活動する術がない。
だったら、カズが発見した方法を世界中に広めれば、それだけ活動の幅が広がるものね。
「それに、カズの発見した方法を広めたところで、錬金術師や他の天職持ちが協力しない限りは上手くいかないわ」
「……どういうことだ?」
「まずはコレ。これが空間収納を付与した鞄よ。カズはマジックバッグなんて呼んでいたわね」
「ほう……ん? これも魔導具か?」
「そう、まずはコレが問題。カズが発見したスキル付与と魔法付与の使い道には魔導具が必要……それも、既存のモノじゃなくて無属性の魔石のみで作られたものよ」
カズに試してもらったけど、既に魔導具として完成されているものにスキル付与や魔法付与はできなかった。
まだまだ使える魔導具はもちろん、例えば使えなくなった着火用の魔導具に素材鑑定のスキルは付与できなかったのよね。
それで私とカズは、あくまでも付与ができるのは無属性の魔石だけで、属性が入っている魔石には付与ができないと結論付けた。
「……つまり、錬金術師が付与が可能な魔導具を新しく作り出さなければ、いくら付与魔術師がそろっても付与された魔導具は作れないということか」
「ええ。そして、私がカズに協力したように、自分が使えない魔法に関しては、使える人……天職持ちが協力しないと付与できないわ」
スクロールからの付与は、今のところ黙っておくわ。協会長は買占めには走らないだろうけど、情報が拡散されたら市場からスクロールが消えるわ。
そうしたらスクロールを頼りに冒険している新人冒険者が困るし、本当に情報を公開することになったら、その辺りの対策も練ってからじゃないと難しいわね。
「ちなみに、この魔導具の容量や使用回数は?」
「最大容量は確かめていないけれど、私の空間収納の最大容量が協会が借りてるのと同じ倉庫1つ分だから、最大でそこまでじゃない? 使用回数は120回よ」
「ほう。鑑定の魔導具よりも回数が多いのか」
「だって、魔法を展開して取り出すか入れるだけだもの。文字を読むこともないのだから、展開時間は短くて済むでしょう?」
カズが使ってみた感じでは入れる時はともかく、取り出すときには何を取り出すかを明確に思い出さなければならないので、1回で30秒くらいかかるらしいわ。
ちなみに、空間収納に慣れきっている私はもっと早く取り出せるけれど、それも天職で使用回数が変わるのは良くないってことで、1回の発動時間を30秒に固定しているわ。
「……魔法付与の効力が切れた場合に、中身はどうなる?」
ま、これも気になることよね。
「同じ魔石に付与魔法をかけ直せば、問題なく中身にアクセスできるわ。ただ、違う魔石に交換したら中身は消えたわね」
これもカズと検証済み。同じ魔導具、同じ魔石に付与魔法をかけ直せば同じ空間収納が発動したけれど、違う魔導具に魔石を付けなおしたり、違う魔石を付けてみたら、違う空間収納にアクセスされたわ。
これに関しては、私もカズも推論すら立てられない。事実として、同じ魔導具を使い続けて、魔法が切れたら魔石に付与を施すしかないということ。
「ということは、魔石が壊れるとまずいのか」
「ええ、それは試作品だからむき出しだけど、何か処置が必要でしょうね」
魔導具が使えなくなる一番の原因は効果切れだけれど、魔石が壊れて使えなくなったという報告も年に何回も聞くことだからね。
「……あと、カズしか付与を知らないから当然だけれど、違う付与魔術師が付与をした場合にどうなるかはわからないわ」
「……わかった。そう簡単に流通はできないということだな」
違う付与魔術師でも効果があるのならいいのだけれど、もしも効果がなくなるのなら独占事業になるからね。
貴族や豪商なんかに伝手のある人間は多大な謝礼金を受け取ることができるけれど、そうでない付与魔術師は小金しか稼げないなんてことにもなるかもね。




