042 協会長への報告(エレオノーラ視点)
「なにっ!? 新しい魔導具だとっ!」
カズがいろいろと作ってしまったから、私ことエレオノーラは師匠の務めとして錬金術師協会へと報告にやってきているわ。
カズは稀人だからいろいろと作るのは仕方がないし、可愛い弟子だから苦労も請け負うけれど、もう少し手加減してくれると嬉しいわ。
「ええ、カズが作り出したの。ここでは詳しい話はできないから、協会長のお部屋に行っても?」
「ああ、もちろんだ……キミ、誰も近寄らないようにしておいてくれ。急用だと言われても決して通さないように!」
今日も今日とてカウンター横の執務室で仕事をしていた協会長だけど、こんなカウンターに声が届くような環境でカズの魔導具を紹介することなんてできない。
協会長もそれはわかっているから、さっさと警備の人に話を通して私を上階の応接室に案内してくれたわ。
「で、今度は何を作ったんだ!? 俺がまた帝城に報告に行かなきゃならんものか!?」
「もともと何を作っても稀人様の知識は帝城への報告義務があるじゃない」
「それはそうだが、単なる遊びに関するものと、世界を揺るがすものでは精神疲労が違うんだ!」
「わかってるわよ……ま、今回は悪いけど、精神的に披露してもらうことになるわ」
「ううっ……」
カズから報告されて、こうして協会に来ている私でも大変だなと思うのだから、帝城で王族や貴族に報告しなきゃならない協会長はなおさらよね。
でも今回の魔導具は世界の根幹を揺るがすようなものだから、それだけ心労になったとしても協会へも帝城へも報告しないわけにはいかないわ。
「今回の魔導具は、魔法やスキルを付与した魔導具よ」
「付与?」
「協会長もカズのギルドカードを作ったのだから知っているでしょう? カズは錬金術師でもあるけれど、付与魔術師でもあるのよ」
「付与魔法の使い道が見つかったのかっ!?」
カズはどんな天職でも使い道があると思っているようだけど、実際は当たり天職と外れ天職があるというのが常識。
錬金術師はそこそこ。戦闘系だったりスキルのない自分の能力が上がるような天職は当たり天職ね。
反面、付与魔術師なんかの使い道が限定されているのに、使える回数も少ないような天職は外れ天職と言われ、バカにされがちね。
「カズは稀人よ? 稀人様がどんなものでも大切にして、有用性を見つけ出すのは知っているでしょう?」
そう、稀人様はこの世界で不要だと思われていたものに価値を見出すのが得意で、これまでにも様々なものの価値が激変してきているわ。
そもそも、最初の稀人様が食事の価値を変えてくれなかったら、この世界は存続できなかったともいわれているもの。
「そうだったな……で、どんな魔導具なんだ?」
「まずはコレ。片方には素材鑑定、片方には魔石鑑定が付与されているわ。時間による付与の抜けはなくて、60回の回数制限で付与が抜けるわ」
あの後もカズと一緒に検証を続けて、鑑定がかかっている魔導具は60回で付与が抜けることが確認できた。
まあ、正確には回数制限ではないのだけれど。
「60回? 使用回数で付与が抜けるのか?」
「正確には時間制限だけどね。カズが言うには魔石なんかの魔力の通りがいい素材に付与魔法を使うと、1時間で効果がなくなるらしいの」
「ほう……なら、なぜ60回と?」
「鑑定の結果は読むのに1分くらいかかるでしょう? だから60回。カズと一緒に改良して魔石に付与されたスキルが発動する時間を1分間に限定したのよ」
「別にそんな面倒なことせんでも、時間制限で作ればよかろう」
「カズがね、使い方ではなくて人の能力差で魔導具に差が出るのは良くないって」
今でも冷蔵庫やコンロなんかは人によって魔石の交換の頻度が違う……でも、それは使い方の差によるもの。
開け閉めの回数が多かったり、長時間煮込んだりすれば魔石の消耗は早くなり、逆にめったに開けない冷蔵庫や、軽くあぶるくらいにしか使わないコンロは魔石の交換はめったになくなる。
「能力差?」
「速読が得意な天職持ちなら、鑑定内容くらいの文章は一瞬で読めるわ。でも、他の人はそうじゃない」
「天職によって差が出るわけか……今でも料理人の天職持ちはコンロを使うのが得意じゃないか?」
「そもそも料理人以外ってコンロはお湯を沸かすくらいにしか使わないじゃない」
料理人じゃなくても家でお茶やコーヒーを飲むときにお湯を沸かすけれど、料理人じゃない人は基本的に料理はしない。
家にコンロがあっても料理は外で買ってくる人が圧倒的に多いのよ……まあ、カズはなぜか料理人じゃないのに料理を作っているけれど。
「なるほど、この魔導具は天職に関係なく誰でも使う可能性があるから、天職で差が出るのは良くないということか」
簡単に考えただけでも戦闘系の天職持ちなら誰もなる可能性がある冒険者は持つし、錬金術師だって鑑定に魔力を使わなくていいなら使う可能性は高い。
駆け出しの錬金術師が素材鑑定を魔導具で代用できれば、その分の魔力を素材分解や再構成に使えるわけだからね。




