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034 付与魔法の進捗と遊び

「うーん、なかなか上手くいかないな」


 魔導具を作り始めてからは、魔導具づくりとポーション作成を交互に行う日々で師匠が提示した初級の魔導具に関してはだいぶ作り慣れてきた。

 ただ、付与魔法と魔導具の合成はなかなか上手くいかない。包丁やまな板に付与魔法を使ったときと同じように、魔導具に防御力上昇を付与してみているが、すぐに魔法が抜けていってしまう。

 ま、だいぶ付与魔法を使ったおかげで、レベルが上がって新しい付与魔法を覚えたのが幸いだったかな。


 とはいえ、新しく覚えた付与魔法は敏捷上昇と器用上昇で、両方とも物に付与することはできず人にしか付与できない。

 しかも付与魔法の対象には自分を選べないから、今の僕にとっては何の意味もないものになってしまっているけれど。


「カズ、少し話したい事があるから休憩にしない?」


 おや、師匠。師匠が錬金中に錬金室に入ってくるなんて珍しいから、結構重大な話なのかな?


「ええ、煮詰まっていましたので休憩はありがたいですね」


 錬金室を出てキッチンのある部屋に行くと、師匠がお茶を淹れてくれる。

 料理はまったくできないけれど、師匠はお茶を淹れるのは上手いんだよな。


「お茶請けも出しますね。昨日、パウンドケーキをパン屋さんで買ってきたんですよ」


 本当にこの世界は稀人……異世界人の知識のおかげで発達しているらしく、パン屋にはフランスパンや食パンといった普通のパンから、パウンドケーキやあんぱん、ピザトーストまである。

 本当に食に関しては開発する必要がなく、生鮮食品以外は何でもあるといった感じだ。お米も見つけたから、師匠がいらないと言った日は和食も楽しんでいるしね。


「どう? 魔導具に付与魔法を使うっていうのは?」


「さっぱりですね。付与魔法の持続時間が短すぎて、自分で付与して使うならともかく商品として販売するのはムリです」


 付与魔法のレベルが上がったことで持続時間が三十分くらいに延びたけれど、それでも商品として販売したらクレームの嵐だろう。


「ま、初めてやることってのはそんなもんよ」


「ですね」


「で、こっちの話なんだけど。……カズが作ったリバーシと五目並べがあるじゃない?」


「はい。この前も雑貨店に並んでいるのを見かけましたよ。店番をしていた人に聞いたら、売れているそうで」


「そう、売れてるのが問題なの」


 はて? 普通は売れれば嬉しいはずだが……もしかして、原材料が品薄になっているとか、そういうことか?

 いやでも、リバーシも五目並べも木材と石くらいしか使わないし、そうそう品薄になることはないと思うけど。


「師匠?」


「じつはね、協会長から聞いたんだけど、周辺国がリバーシと五目並べを販売したいって言ってきてて」


 周辺国……僕はこの世界にやってきてから、外国に行ったことがないどころか、今いる街から出たこともないけど、他の国があることは知っている。

 雑貨屋や食料品店では他国から輸入した商品が並んでいるし、ギルド内でも紅茶やコーヒーなんかは他国産を使っていることもある。


「販売?」


「わかっているわ。カズは帝都の子供たちのためにリバーシと五目並べを作ったってことは」


「いやいや、販売すればいいじゃないですか?」


「いいの?」


「良いというか、遊びなんて誰かが考え付いて知らず知らずのうちにやっているものですよ?」


 師匠が何を言っているのか、わからない。前の世界でも国が離れているのに、似ている遊びなんていくらでもあった。


「でも、考えて作ったのはカズでしょう?」


「そりゃそうですけど、前の世界の遊びですからね。自分で考えたオリジナルじゃないので」


 いや、自分で作ったオリジナルだとしても、販売に規制なんて付けないけれど。


「はあ~、カズがそう言ってくれて良かったわ」


「そんなに大ごとになってたんですか?」


「だって、協会長に依頼したのが陛下よ? 稀人様であるカズがダメって言ったら、陛下でも無理強いはできないけど、陛下にダメでしたって言う協会長の胃に穴が開きそうじゃない」


 陛下? ……ああ、国王陛下か。……………………って、国王様!? かなりの大事になっていたんだな。

 周辺国がって言っていたから、てっきり外交担当の貴族が錬金術師協会に相談してきたもんだと思っていた。


「それは大事になっていますね。……まあでも、個人的には遊びなんて色んな人が触れてこそだと思っていますよ」


 色んな価値観の人が一緒に遊ぶからこそ、新しい遊びが生まれる余地ができるってのが僕の考えだ。

 前の世界でも普通に遊ぶ人、興味がなくてズルをする人、新しい遊びを考える人、色々な人がいた。

 ズルしてたはずなのに、それが新しい遊びになったり、昔の遊びにインスピレーションを受けて新しい遊びを考えたりとか。

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