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032 師匠への提案

「はあ、魔導具は作れる人が限られるのに、新作がこれだけ出るとなると……」


「でも、求める人はそう多くないんじゃないですか?」


「どういうこと?」


「だって、点火棒は便利ですけど筐体の材料が2倍かかるので値段が上がりますし、水差しは水瓶で十分な人はいらないでしょう?」


 僕が師匠にそう言うと、師匠は考え込んでしまった。

 点火棒は便利といえば便利だけれど、着火用の魔導具で十分という人は多いだろうし、水栓の魔導具のように固定の場所で使う人には水瓶の魔導具で十分だろう。

 どちらも回路が複雑になるから、その辺の料金も加算されるだろうし、そもそも着火用の魔導具や水瓶の魔導具を求める人はお金がない人が多い。


「確かに……貴族や王族が戯れで求めることはあっても、平民が求めるかはわからないわね」


「そもそも、これらは僕が出来るかな? って気持ちと便利かな? って気持ちで作った物なので、需要があるとは思ってないですよ」


 とはいえ、点火棒の方は火をつける回数が増えそうな、冒険者や騎士、それに屋台の店主なんかは求めそうではあるけど。


「……まあ、でもカズが作った物は報告の義務があるのよ」


「錬金術師協会にですか?」


「ええ。カズは稀人だからね。この国だけじゃなくて、この世界は稀人様の功績で便利になってきた過去があるから」


 うーん、面倒なものだな。こちらとしては、そんなつもりで作った物じゃないんだけどな。


「うーん、じゃあ他の奴は作らないほうが良いですかね?」


「まだ何か考えてるの?」


「いや、僕の天職って錬金術師と付与魔術師じゃないですか? 付与魔法を使って魔導具を便利にできないかなって?」


 魔導具は確かに便利なんだけど、魔石の属性がそのまま使えるものしかできない。

 ということは異世界転生で定番の、荷物がいくらでも入るバッグだとかは作れないということだ。


「…………」


「ま、そちらは付与魔法の勉強をしてからになりますけどね」


 錬金術ばかりを学んできているので、付与魔法は本で学んだきりでほとんど使ったことがない。

 現在使える付与魔法のスキルは攻撃力上昇と防御力上昇だけなので、包丁に攻撃力上昇、まな板に防御力上昇を付与してみたことはあるけどね。

 ちなみに結果は、包丁は骨ごとでもスイスイ切れるようになり、まな板は攻撃力上昇を付与した包丁でも傷1つなかった。


 ま、防御力上昇を付与する前に使ってた、まな板は真っ二つになったけどね。

 あと、付与魔法単体だと効果が切れるのが早い。どちらも5分くらいで切れてしまったから、錬金術と複合させることで効果を長持ちできないかと考えているのだ。


「付与魔法を使った魔導具が出来るなら、希少品になるわね」


「そうなんですか?」


「そもそも錬金術師と付与魔術師の両方の天職を持っている人は少ないし、全く別の職種だから協力して魔導具を作るなんて考えたことないと思うわ」


「……まあ確かに魔導を作れる錬金術師が少ないのに、付与魔術師と強力なんてしないですかね」


 魔導具がもっと一般的だったのならともかく、魔導具を作れる錬金術師が少ない現状では難しいのか。

 うーん、もっと簡単に魔導具が作れればいいんだけど……。


「何か考えてる?」


「大半の錬金術師が魔導具を作れない原因って、回路を理解できないからですよね?」


「ええ、そうね。魔石を組み込むだけなら出来るから、魔石の効果が切れた魔導具の魔石交換はレベルは高いけど魔導具が作れない錬金術師が担当しているわ」


 つまり錬金術師協会に所属しているような錬金術師たちか。


「回路を他の人に書いてもらうってのはどうです?」


「回路を書ける錬金術師ってこと? 魔力が無駄になるから嫌がると思うけど?」


「そうではなくて、例えばオリアーニ嬢のような書記の天職持ちとか」


 そもそも回路を書くという行為は錬金術ではない。魔力やスキルを使うわけではなく、魔力を含んだインクで筐体に書き込むだけだ。

 だったら、理解力の高い天職持ちの人に回路を書きこんでもらって、錬金術師は魔石を組み込むことに注力するってのもアリでは?


「錬金術師は魔石を組み込むだけ?」


「回路を書けない人はですね。報酬が分散するので、回路を書ける人は自分で書いた方が1日に稼げる金額は増えるから、やらないと思いますよ」


 魔石を組み込むだけでも、かなりの魔力を使うから1日に何十個という数は作れないし、回路を書きこむ手間を考えても1日で魔力を使い切るのは簡単だ。

 となると、書き込む人と報酬が分散するのは回路が書ける錬金術師としては避けたいところだろう。


「…………協会長と相談してみるわ」


「そんな大ごとになります?」


「カズの言ったことができるなら、手の余っている錬金術師にも魔導具を作成させられるわ」

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