028 なわとびも作る
結局スライムボールは錬金術師協会の錬金術師が作ることになり、リバーシと五目並べのボードは木工師、五目並べの駒は石細工師が作ることで協会同士の交渉が済んだらしい。
とりあえず師匠は自分の仕事が増えなかったことで、ご機嫌だ。
「そういえば、師匠。あの空地は結局どうなったんですか?」
「ああ、お父様に相談したら、子供が自由に遊べる広場に改装するって。昔に没落した貴族から買い取った土地らしいけど、公爵家には他にタウンハウスがあるから持て余してたらしいわ」
は~、お金ってのはあるところにはあるんだなぁ。まさか土地を持て余すとは。
「子供達には伝えたんですか?」
「ええ、公爵家からの寄付ってことで、スライムボールもいくつか設置してあるから好きに遊んでいるんじゃない?」
「設置?」
「ええ、棚を設置して使い終わったら、そこに戻すように子供たちに伝えてあるわ」
「それって盗まれたりしません?」
スライムボールは、そこまで高い商品にはならないと聞いているけれど、それでも遊びというか、一時の快楽を得るために盗もうと考える人は出てくるだろう。
「公爵家の家紋を入れてあるから、盗んだ人は公爵家の所有物を盗んだことになるのよ? 普通の盗人なら、そんなリスクの高いものは盗まないし、それでも盗む人は何をやっても盗むわ」
師匠の生家である公爵家は、第一王子の婚約者を出せるほどの有力な家……そこの家紋が入っていれば、簡単には盗まれないか。
「じゃあ、みんなスライムボールで遊んでいるわけですね」
「まあね。ボールで遊ぶのが苦手な子は、カズの教えたマルバツゲームで遊んでるみたいよ」
ははぁ、やっぱりボールで遊ぶのが苦手って子は、どうしても出てしまうんだなぁ。
前の世界でも運動自体は好きだけど、球技は苦手って子は結構いたからな。
「うーん、それなら他の遊びも用意したほうが良いですかね?」
「また何か作る気?」
ジロっと、師匠がこちらを睨みつけてくる。
「いやいや、何も特殊なものじゃないですよ。適当にナワでも置いておこうかなと」
「ナワ? ナワってあの紐をより合わせた?」
「そうですそうです。前の世界じゃ、なわとびって言って、自分の身長の二倍くらいのナワをもって跳んだり、もっと長いナワを使ってみんなで遊んだりしていたんですよ」
大なわとびに使えるような長いものなら、簡単な綱引きとかにも使えるし、子供たちに与えれば適当に遊ぶだろう。
「ごめん、想像できない」
「あー、そうですよね」
スライムボールもそうだが、概念のないものを教えるには実践が一番だ。
幸いにもギルド内には作成した小型の魔導具を縛るための紐があるから、これで実践してみるか。
「この紐を少しもらいますね。……このくらいかな?」
なわとびをする時みたいに、中心を足で押さえながら僕の身長に合うように紐を調整して切る。
流石にギルド内でなわとびをやるのは危険なので、師匠と一緒に外の一目が少ない場所に移動する。
「さ、やってみて」
「はいはい。こんな感じで普通に跳んだり……一回跳ぶ間に二回、腕を回したり……腕を交差させて跳んだり」
適当になわとびの技を披露しながら、師匠に説明をする。
とはいえ、なわとびなんて小学生? 中学生か? 以来なのでまともに跳べるわけでもないし、技もそこまで知らないけれど。
「ふーん? 楽しい?」
「一人でやる分には運動って感じで楽しくないですけど、何人かでこれができる、これができないってワイワイやれば楽しいんじゃないですか?」
前の世界でも授業でやらされている時は楽しめなかったが、休み時間に友達と一緒にやっていた時には楽しかったものだ。
「材料はナワだけ?」
「今は紐なんで簡単に持てますけど、ナワだと持ちづらいので木とかで持ち手を作ったほうが良いですね」
「まあ、まずはナワを買ってきて、試作品ね。カズ、買い物に行くわよ」
「はい、師匠。完成したら、広場にいる子供たちに遊んでもらって、感触が良かったら大量生産のために協会へ相談ですね」
「はあ、また協会から文句言われそう」
そのまま、師匠と一緒に雑貨屋にてナワを購入、ギルドに戻って子供たちの身長に合うように何種類かの長さに切って、錬金術で作った木の持ち手と、これまた錬金術で合成。
いや~、前の世界だったら絶対に作れないもので、錬金術を利用すると簡単に作れるってのは気分が良いな。
「長いやつには持ち手を付けなくていいの?」
「こっちは一緒に遊ぶ人数によって持つところが変わるので、このままでいいと思います」
もしかしたら綱引きに使うかもしれないし、大なわとび用の方は下手に持ち手を付けないほうが良いだろう。




