025 遊びの需要がすごい
「あれもカズの世界の遊び?」
「ええ、簡単なものなので低年齢じゃないと楽しめないですけどね」
マルバツゲームはある程度慣れてくると、攻略方法というか引き分けにする方法がわかってしまうので、そう長くは続けられない。
「アズマさん! 稀人様の世界は識字率が高いのに、なぜ文字を使わない遊びがあるんですのっ!?」
師匠と話していると、オリアーニ嬢が勢い込んで質問してきた。
「た、確かに僕たちのいた国は識字率が高いですが、そうではない国もあるので」
「え!?」
「それに僕たちの国も識字率が上がったのは最近のことなので、昔からあるような遊びは文字が読めなくても出来るものが多いですよ」
勢い込んで近づいてきたオリアーニ嬢から距離を取って、質問に答える。
まあ、マルバツゲーム……というか三目並べは他の国に起源があるんだろうけど、だるまさんがころんだ、あやとり、なんかも文字は使わないし合っているだろう。
「ふーん、カズのいた世界でも色々あるのねぇ」
「というか、これまでにやってきた異世界人は、ゲームは広めなかったんですか?」
「広めてないわね。必要なかったからじゃない? 稀人様は環境を良くしたり、無駄をなくしたりはすることが多いわね」
ふーん、僕が来た頃よりも前の時代になるから、暮らすので精一杯だったから余裕がなかったのかな?
「まあでも、僕も師匠やオリアーニ嬢と話してなかったら、わざわざ遊びを教えようとは思わなかったですね」
「そうなの? なんで?」
「だって、僕にとって見たら、この世界は何もかもが目新しいんですよ。元の世界の遊びを再現しなくても、ただ暮らしているだけで楽しいんですから」
建築物だけでも観光地に来たと思うほど元の世界とは違うし、錬金術や魔法みたいに元の世界にはないものも多くて、元の世界の遊びを再現しようとは思わなかった。
もちろんスマホやパソコンなんかが再現できれば違うだろうけど、この年になってまで体を使った遊びをしようとは思わない。
「そんなもんか。……まあ私もカズの世界にもしも行けるのなら、この世界の遊戯盤を再現しようとは思わないかも。見るものいっぱいありそうだし」
「ですよ」
「ま、待ってください。それは困ります」
師匠とまったり話していると、オリアーニ嬢が慌てたように声をかけてきた。
何事かと思って、そちらを振り向いてみるとマルバツゲームで遊んでいたはずの女の子たちもオリアーニ嬢の足元からこちらを見ている。
「ええと、困るとは?」
「だって、わたくしたちは稀人様の世界の遊びを知ってしまったんですのよ? もっと知りたいですわ」
「お兄ちゃん、他の遊びも教えて?」
オリアーニ嬢と女の子たちはうるんだ瞳で、こちらを見上げてくる。すでに女の戦い方を習得しているとは将来有望だな。
「ええと、体を使う遊びで良いかな?」
道具を使わないような遊びなら、鬼ごっこ、かくれんぼ、なんかを簡単に教えることはできる。
「ううん、男の子たちに勝てないから、さっきみたいなのがいいな」
だよね。集まっているのはマルバツゲームを教え他グループの女の子たち。つまりドッジボールというか、ボールの当てっこを嫌がって離れた子たちだ。
そりゃ、体を使うような遊びで喜ぶなら、ボールの当てっこから逃げるわけはない。
「なーなー、兄ちゃん。これも、もっと欲しいんだけど」
そんな風に考えていると、ボールの当てっこをやっていたグループの子たちもやってきて、ボールがもっと欲しいと言い出した。
よく見ると、僕たちがここに集めた倍以上の人数が、そこにはいて、明らかに子供の遊び声に釣られて人が増えているのが確認できる。
「ええと、師匠?」
「はあ、仕方ないわね。…………いい、あんたら? ここはオリアーニ公爵家が管理する土地よ。今日は私が監督しているからいいけど、本来は入っちゃいけない場所なの」
「「「「……」」」」
「だけどね、オリアーニ公爵も子供たちが遊ぶ場所は大切だと考えているわ。だから、ここを子供たちの遊び場として開放してもらえるように交渉してあげる」
「「「「……」」」」
師匠の言葉は子供達には難しいのか、半分以上は不思議そうな顔をしているけれど、逆に言うと半分くらいは理解しているようだ。
異世界の子供たちの理解力はすごいな。
「あと、ボールに関しては試作品だから、これ以上はないわ。錬金術師協会と話し合って製品化するのかを決めるから少し待ちなさい」
「ええと……」
リーダー格なのだろう。一番体格のいい男の子が進み出て、師匠の言葉に返事する。
「要するに、今日はここで遊んでいいけど、明日からは公爵の許可が出るまではここに来ちゃダメ。遊びに関しても、いろんな人がイイよって言うまではこのままよ」
「……はい、わかりました。みんなにも言い聞かせます」
「こっちも、なるべく早くみんなが遊べるように動くから、勝手に入り込まないようにしてね」




