020 回復草茶改め協会のお茶をふるまう
「で、ソフィア。何をしに来たの?」
「決まっているではないですか。最近、帝城でも噂なんですのよ。錬金術師協会から発売されたお茶は」
オリアーニ嬢がギルドまでやってきた理由は、どうやら回復草茶を確認しに来た、ということなのだろう。
「ふーん、錬金術師協会から発売されているから、私が運営するギルドなら何か知ってるかもって思ったわけ?」
「だって、お姉さまは情報収集を怠らないでしょう? その証拠に、そちらの棚に見慣れないお茶がありますし」
師匠への信頼感が半端ないな。それに、目ざとい。他のお茶と一緒に棚に置いてあった回復草茶の瓶にいち早く気付いたぞ。
ポーションは毎日作っているから、生葉から回復草茶を作ればいいやと思っていたら、回復草の出がらしは全て錬金術師協会が持って行ってしまうので、回復草茶は協会から乾燥させたものを購入している。
師匠が言うには錬金術師協会からポーションの作成を依頼されているから、原料の回復草の権利も協会にあるらしい。
「はあ、カズ。ソフィアにお茶を淹れてあげて」
「はい、師匠」
「お、お姉さま! そんな稀人様を小間使いみたいに!」
「いえいえ、師匠のお世話は弟子の役目ですから、気にしないでください。あ、お茶請けのクッキーも出しますね。錬金術師協会のお茶は癖がありますから」
オリアーニ嬢は僕の扱いに慣れないみたいだけど、師匠のお世話になって既に半月以上が経っているので、僕と師匠にとってはこれが日常だ。
「で、帝城の様子は?」
「西の小競り合いに騎士団が派遣されたくらいで、他はいつも通りですわ」
「じゃあ、第二王子が第一王子に突っかかってるんだ」
「ええ、ストレスからか外をぼんやり眺めることが増えましたわ」
オリアーニ嬢の言葉から想像するに、異世界でも権力闘争は大変なようだ。
とはいえ、王子だの騎士団だの聞きなれない言葉を聞くと、びっくりしてしまうな。
「はい、こちらが協会のお茶です。お茶請けはクッキーですよ」
ちなみに回復草茶と呼ぶと原料がまるわかりで、回復草が乱獲されてポーションの供給に支障が出るという協会判断で、協会のお茶、新作のお茶などと呼ぶように言われている。
回復草の採取は冒険者、栽培は錬金術師お抱えの農家でしかできないように法律が制定されているらしいが、どこにでも法の目をかいくぐる人はいるからね。
「あら、たしかに今までのお茶とは違って独特ですね」
「私はそこまで好きじゃないわ。今までのお茶でいいじゃない」
「あら、嗜好はそれぞれでしょう? お姉さまが好きでなくても、好きな人がいるかもしれないから、商品にするのは良いことでは?」
「まあね」
「それより、お姉さま。これの原料は?」
「協会から口止めされてるわよ。それに帝城なら情報を仕入れているんでしょ?」
「それが、陛下のところで情報が止められているのですわ」
へー、権力者側も回復草の乱獲はヤバいと思っているのかもしれないのかな。
「原料は教えられないけど、作成者なら教えられるわよ。このお茶の作り方を考えたのは、そこにいるカズ」
「ちょ、ちょっと師匠!」
「大丈夫よ。ソフィア、このお茶は稀人様であるカズが考えたの」
「……はあ、稀人様の知識ということですか。それなら仕方がないですわね」
ん? そんな簡単に済む話なのか? 普通だったら作成者がわかったら、作り方や原料を聞き出すんじゃないのか?
「カズ、稀人様の知識っていうのはこの世界にとって貴重なの。世界の常識を幾度となく変えてきたからね」
「そんなもんですか? ただのお茶ですよ?」
「いやいや、これまでになかったものを生み出したというのが功績なのよ。だから、これからも考え付いたものはどんどん作っていいからね」
「はあ」
そう言われても、ただの社会人だった僕がそんな簡単に新しい何かを作り出すなんて無理な話だろう。
「アズマさん! 何か思いついているのですかっ!?」
「いやいや、何も思いついていないですよ。前の世界では庶民だったんですから、そんな簡単にポンポン思いつきはしませんって」
「庶民……学生、というやつですか?」
「学生だった時期もありますけど、普通の勤め人でしたね」
「わたくし、稀人様の世界の学校、というものに興味があるのですわ!」
学校……確かに異世界転生ものの物語だと、異世界に学校を作るというのが定番ではあるな。
とはいえ、この世界に学校って必要かな?




