014 ポーション作成実習
「素材鑑定」
回復草に素材鑑定を使うと、空中に現れたディスプレイに回復草の詳細が現れる。
これまで同様に素材鑑定をかけた物品の上に名前を指し示すディスプレイもあるが、錬金術師としてのレベルが上がったことで、詳細な鑑定結果が目の前のディスプレイに出てくるみたいだ。
『名称:回復草 種別:薬草 用途:ポーション用素材』
『葉には多くの回復成分があり、ポーション用の素材として重宝される。根にも回復成分があるが、苦みやえぐみとなる成分もあるため、うまく抽出しないとポーションの効能が落ちる』
回復草の素材鑑定で出てきた情報はこんな感じ。
師匠は葉からだけ抽出を行っていたけど、どうやら根にも回復成分が入っているようだ。
……ま、とりあえず師匠と同じように葉からポーションを作ってみるか。
「抽出」
回復草から回復成分だけを抽出することに成功……したけど、結構難しいな。
きちんと意識していないと、回復成分以外のものまで余計に抽出してしまうぞ。
「合成」
師匠が用意してくれていた水と、取り出した回復成分を合成し、ポーションへと入れる。
感覚的には鉄鉱石から鉄を再構成するよりは難しいけれど、魔力の減りとしてはそんなに変わらないような。
「師匠、どうですか?」
「うん、上手くいってるね。回復成分も余さず合成できてるし、初めてでこれなら上出来だよ」
「そうですか? でも鉄の作成と魔力的に変わらないですよね? それなら、みんな簡単にできるものじゃないですか?」
「あはは。これが初めてのポーション作成だから、そう思うよね? カズ、鉄の再構成をやってみな?」
「……? はい」
師匠に言われるがままに鉄鉱石から鉄を再構成する……ん? やけに簡単にできるな。
「ふふ、いつもよりも簡単にできるでしょ?」
「はい。素材分解や再構成が楽になっているというのもありますけど、魔力が全然必要なかったんですけど?」
「そう! カズの錬金術師のレベルが上がったからね! これまで使えていたスキルの必要魔力が減ったんだよ」
なるほど。天職のレベルアップの恩恵は、スキルが増えたり効果が増えたりするだけではなく、元々所持していたスキルの最適化もあるということか。
まあ、そうでなくては、鉄を作る錬金術師がいなくなってしまうし、これからレベルが上がればポーションを作る錬金術師もいなくなってしまうもんな。
「ふむ。……でも、これならポーションを作るよりも鉄を作ったほうが、お金が稼げるのでは?」
両方を作ってみた感じでは、ポーションを一個作る魔力で、鉄は三個は作ることができる。
ポーションの単価が高くても鉄の三倍ということはないだろうし、単純にこれまでの稼ぎが三倍になると考えたら、鉄の作成の方がコスパはよさそうだ。
「ふふ、そう思うわよね。でも、錬金術師のレベルを上げるためにはポーションを作成しないとダメなの。鉄の作成では経験値が得られなくなっているからね」
「ああ、なるほど」
前の世界でよくやっていたゲームではレベルが上がると、弱い敵からは経験値がもらえなくなることがあった。
どうもこの世界でもソレが適用されているようで、レベルが上がると低いレベルで覚えたスキルでは経験値が得られないということだろう。
ま、経験値……文字通り経験を得た数値だから、同じことをやっていてもレベルが上がらないというのは理にかなっているのかもしれないな。
「というわけで、これからはポーションを中心に作っていってね」
「わかりました。鉄の方は大丈夫なんですか?」
「そっちは無理を言って鍛冶師ギルドから請け負ってた仕事だから大丈夫。……は~、これで魔導具作りに専念できるわ~」
なるほど。確かポーション作りは錬金術協会からの依頼だって言っていたから、師匠は自分の経験値を捨てて、ポーションを作っていたということか。
いろいろと教えてもらっていて、師匠の邪魔になっているんじゃないかと思っていたけど、これからは師匠のために活躍できそうだ。
「師匠! ポーション作りは任せてください!」
「ふふ、頼もしいわ。でも、ほどほどにね。ポーション作りは鉄とは違って、精神的に疲れるから、きちんと休憩するのよ」
そう言うと、師匠は錬金室から出て行った。自分の錬金室で、魔導具作りをするんだろうな。
一人きりになって、改めて回復草に向き合うと、回復草自体に質の良いものと悪いものがあることに気づく。
見た目は変わらないのに、回復成分が多いものと少ないものが混在している……なるほど、これが師匠が言っていた精神的に疲れると言っていた理由か。
回復成分が多いものはそのまま、回復成分が少ないものは複数枚を使ってポーションを作成していくが、確かに鉄よりも疲れる。
鉄は何も考えずに鉄鉱石に素材分解をかけて、集まった鉄を合成するだけだったからな。




