013 ポーション作成講習
それからの一週間は師匠に言われた通り、鉄鉱石の再構成をする毎日。
とはいえ、一日に錬金術を行使できる回数は決まっていて、丸一日働き通しというわけでもなかった。
なんでも錬金術……というか、天職にあるスキルを行使する際には魔力やら精神力を消費するとのことらしい。
まあ、前の世界で読んだ小説のように、使い切ったら疲れて動けなくなるとか、ぶっ倒れるとかはなく、ただただスキルが使えなくなるだけなのは助かった。
錬金術が使えなくなったら、買い物やら料理やらもできるし、やっぱり天職は実生活に基づくように神様から贈られてるんだなと思う。
「師匠、今日の朝食はチーズトーストにハムエッグですよ」
前の世界で料理をしていたとは言っても、雑な男飯なので、夕飯は基本的に外に食べに行くか買ってきたお惣菜。
代わりに朝飯と昼飯は適当に作っている。あ、気づいたこともあって、この世界では前の世界とは違って食パンはメジャーじゃないらしい。
なんでも金型に使える金属が剣や鎧なんかに消費されることが多いから、金型を使わない丸パンやフランスパンなんかがメジャーなんだって。
だから、今日のチーズトーストも丸パンを切り分けたものに、溶かしたチーズソースをかけたものになっている。
「うーん、コーヒー……」
「はいはい、コーヒーも準備してありますよ」
錬金術に関しては面倒を見てくれる師匠だが、実生活に関してはこちらがお世話するようになってしまったな。
ま、元貴族で18歳のお嬢さんだから仕方がないかなとは思ってるけど、逆にこれまで一人暮らしできていたのが不思議なくらいではある。
「おいひい」
「はいはい、食べながら話さなくていいですからね」
師匠の言うように、自分で作ったにしては今日の朝食は美味い。パンが美味しいというのもあるけれど、チーズの濃厚さが前の世界とは段違いだ。
ま、ハムエッグの方はハムは美味しいけど、卵は微妙。なにしろ、今のところ生食可能な卵を見かけていないから、黄身までしっかり火を通すしかないんだよな。
個人的には黄身がトロッと出てくるくらいの半熟が好きだから、今回みたいな黄身までパサパサになる焼き加減は失敗だったな。
「あ、カズ。今日からポーションの作り方を教えるから」
「はいはい……はい?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 毎日、再構成をすれば一週間でポーションを作れるって?」
「いやいや、言ってましたけど、昨日も何も言ってなかったじゃないですか」
「そうだっけ? ま、たぶん出来るようになってるよ」
軽っ! 一週間と少しの間、師匠と過ごしてきたけど、こういうところがあるんだよな~。
「じゃあ、早速ポーションづくりの説明だね」
朝飯も食べ終えたので、錬金室でさっそく師匠からポーションの作り方を教わることにした。
「意外に材料少ないですね」
師匠が用意してくれたのは草と水、それに瓶だけだった。
前の世界には存在していなかったポーションだが、効能の割には材料が少ないように感じる。
これだけの素材で打ち身や切り傷はもちろん、熱や咳なんかの軽い病気にも対応しているというから驚きだ。
「重要なのは回復草、それと錬金術師が作成すること」
「錬金術師しか作成できないんですか?」
「薬師の天職持ちも作れるけど、そっちは材料や工程がかなり違うからね。回復草だけで作れるのは錬金術師だけ」
「なるほど」
「工程は簡単。回復草に抽出のスキルをかけて、回復に必要な成分を抽出。その後に、合成で水と成分を合成させたら瓶に詰める」
師匠は軽く言いながら、簡単にポーションを作っているけれど、これは難しくないか?
鉄鉱石には鉄が入っていることがわかるけれど、回復に必要な成分……ってなんぞや? って感じじゃないか。
前の世界でも殺菌効果やら、止血効果やらのある野草というのはあったけれど、そういったものとは違うんだよな?
「回復に必要な成分」
「そう! カズは暇なときに図鑑とかを読んでたから、回復薬には回復に必要な成分があるって知ってるでしょ?」
「まあ、知識としては」
師匠の言うように、これまでの一週間、錬金術を使えなくなった後は買い出しや料理だけでなく、錬金術ギルドにある本を片っ端から読んでいた。
知識を増やすためというのもあるけれど、この世界の字が普通に読めるのが面白くて読み進めていたというのもある。
会話もスムーズにできることから、前の世界の言葉と同じなのかと思っていたけど、実は言葉は違うのに通じているということが分かったんだ。
文字ベースだとそれが顕著で、確かに書かれている文字は知らないものなのに、日本語として返還されて理解ができる。
原理はまったくわからないけれど、これも神様が何とかしてくれていることなのかな?
「だから、回復薬に素材鑑定を行って、回復に必要な成分を抽出すればいいだけだよ」
師匠は軽く言ってくれるけれど、そんな簡単なことか? ……いや、錬金術を教えてくれている師匠が言うことなんだ。やってみれば、そんな簡単なことなのかも。




