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010 買い物とお金の把握

 協会への報告も済んだということで、師匠と二人で日用品を買うことになった。

 ギルドに住むこともできるから住居を探す必要はないんだけど、住むところが決まったなら色々と買うものを買っておかないと不便で仕方がない。

 特にひげ剃りと歯ブラシ。別にひげが濃いってわけじゃないから2~3日でボーボーになるってわけでもないけど、それでも身だしなみは重要だからね。


「来客用のコップはあるけど、ついでにカズ用のも買っておこうね。あ、あとはお金の払い方も教えないと」


「お金……種類が結構あるんですよね」


「銅貨と銀貨、それに金貨だけど、お店で使うのは銀貨までかなぁ」


「銅貨と銀貨も大きさの違うのがあるのですが」


 財布の中には神様が換金してくれたお金が入っているけど、同じ色のモノでも丸いものと半円のものがあって、その違いがよくわかっていない。


「うん、お金には大銅貨と小銅貨みたいに、円状のものと半円状のものがあるの。小銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で小銀貨1枚」


「ほー。……ん? 小銅貨は大銅貨の半分の大きさなのに、価値は10分の1なんですか?」


「混ぜ物がしてあるからね。お城にいる錬金術師が再構成や合成を使って作ってるのよ」


 は~、錬金術師はポーションや魔導具だけでなく、貨幣の作成も担っているのか。

 しかし、あの冒険者ギルドはそんな錬金術師をバカにしていたのか? 自分たちの生活に密接しているものなのに、すごい度胸だな。

 まあ、あの手の人たちは自分の価値観が一番だろうから、戦えない人間は全員バカにしていたのかもしれないけど。


「錬金術師が貨幣を……密造とかないんですか?」


「お金の? やっても儲からないから、やってる人はいないんじゃない? 銅や銀を買い付けて、お金を作るよりもポーション作ったり、魔導具作ったりした方が儲かるし」


 それもそうか。前の世界なら貨幣の偽造なんかは割とメジャーな犯罪だったけど、紙幣と違って素材自体に価値のある金属製の硬貨ならメリットは少ないか。


「ちなみに、お金の価値は?」


「大銅貨1枚でこのくらいの丸パンが1個買えるくらいかな。ご飯屋さんで1食分を頼んだら、小銀貨1枚くらい」


 師匠が手で表したのはスーパーなんかで買えるサイズの食パンくらい……ということは、大銅貨1枚で100円くらい、小銀貨は1枚で1,000円くらいか。

 となると、大銀貨で1万円、金貨は小で10万円、大で100万円になるから、確かにお店で使うなら大銀貨までだろう。


 ……? そういえば、財布の中には金貨も入っていたけど、もしかして神様、銀行に預けていた貯金まで換金してくれたのか?

 この世界で生きていかなきゃいけないから助かるっちゃ助かるけど、そんな大金を持ち歩いていると思うと怖くなってくるな。


「……師匠。これが僕の全財産なんですが」


「ん? 見せてくれるの? ……って、カズ!」


「ええ、そうなんです」


 師匠に財布の中身を見せると、金貨がいくつも入っていることに驚かれる。

 そりゃそうだよね。僕だって、知り合いが財布の中に数百万円を無造作に入れていれば、驚く。


「は~、知らなかったとはいえ、こんな大金を無防備に持ち歩いてたんだ」


「はい、お金の価値を知らなかったので、気にしていませんでしたけど、知った後だと流石に怖いですね」


「ま、金貨は私が預かるよ。次に協会に行った時にカズの口座も作るから、その時に入れておこう」


 師匠はそう言うと、僕の財布から金貨を抜き出す。それでも、財布の中には数枚の大銀貨が残るし、日用品の買い物なら、それで十分だろう。

 てっきり、師匠も自分の財布に金貨をしまうのかと思っていたら、おもむろに空中で指を振ると、師匠の手の中にあった金貨がいつの間にか消えていた。


「……師匠、今のは?」


「ああ、言ってなかったっけ? 私のサブ天職は空間魔術師。今のは空間魔法で、私だけがアクセスできる空間に金貨を仕舞ったのよ」


 空間魔法! 錬金術を初めて使ったときにも思ったけど、こういうのを目の当たりにすると前の世界とは全く違うんだなぁ、と感じる。

 しかし、天職は空間魔術師なのに、空間魔法なのか。ということは、僕のサブ天職である付与魔術師も使えるのは、付与魔法なのかな?

 錬金術とは違って、付与魔術師の方はまったく使っていないから、どういったことができるのかもよくわかっていないんだよな。


「空間魔法……便利そうですね」


「便利よ~。ま、空間魔術師が少ないから、便利使いされることも多いけどね~」


 そんな風に他愛のない会話をしつつ、師匠と買い物を済ませた。

 お目当てのひげ剃りも歯ブラシも手に入ったし、ついでにコップや着替えなど、さまざな日用品を手に入れた。

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