第1話 転生したら“真相ルート”の地雷源にいた件について
「……ここって、まさか……」
目が覚めた私は、ふわふわの天蓋付きベッドの上で青ざめた。
金髪碧眼の美少女──それが鏡に映る自分の姿。
そしてドレッサーには、“エリシア・グランツェル”の名が刻まれていた。
「やっぱり、乙女ゲーム『聖なる恋と罪の薔薇』の悪役令嬢じゃない!?」
私の記憶が正しければ、エリシアは“ヒロインを虐げた報い”として、王子に婚約破棄され、最後は国外追放……運が悪ければ暗殺まである破滅ルート直行キャラ。
でも、私は知っている。
このゲーム、やり込み勢しか知らない“裏設定”が山ほどあるのだ。
たとえば──
王子は実は“失われた王朝の末裔”で、ヒロインの血筋を狙っている
騎士団長は裏で暗殺ギルドと繋がっている
そしてヒロインは……最終的に全ての黒幕に“覚醒して乗っ取られる”存在だった
(こんな地雷原、正規ルートなんて通ってられない!)
私は決意した。
表の攻略対象を避けて裏ルートへ逃げ、なんとか生き延びる道を選ぶ!
幸い、このエリシア様。表向きは傲慢令嬢だが、裏では学力トップ、政治センス抜群。
本気を出せば、生き残るどころか国を動かすことだってできる!
その第一歩として、私は“あの男”に接触した。
「ラファエル・ノクス様、少しお話を」
「……悪役令嬢様が、私に?」
彼は“裏設定”では、闇組織の密偵でありながら、真実の歴史を探る者。
ヒロインルートでは一切登場しない、文字通りの隠しキャラ。
「あなた、王国の腐敗と“異端の魔術”について調べているはずです」
「……なぜそれを」
「詳しくは話せません。でも、私は“未来を知っている”のです。
このままでは、この国は崩壊します。だから──私に協力してもらえませんか?」
ラファエルはしばらく黙ったあと、低く笑った。
「面白い。悪役令嬢が、未来を知る預言者とはね。いいでしょう、エリシア嬢。
貴女の“物語”、見せてもらいますよ」
──こうして私は、
「裏設定を全部知ってる」最強の地雷悪役令嬢として、世界の秘密に挑むことになった。
でもこのあと、もっと驚く事実を知ることになる。
ヒロインが、私のことを“目の敵”にしている理由。
それは──
「貴女、知ってるんでしょ?この世界の“真実”を」
「……な、なんのことかしら?」
「なら、全部暴いてあげるわ。“裏設定の悪役”さん?」
そう、彼女もまた──“プレイヤー”だったのだ。