プロローグ
ガキの頃、年をとったら大人になれると思っていた。
幼少時代、夢は一生懸命努力すると絶対に叶うと思っていた。
結論から言うとそんなことはなかった。
二十歳を過ぎたって、自分が思い描いていた立派な大人にはなれなかったし。
一生懸命に努力したって、叶わないことがあることを知った。
どっかの立派な芸能人様は言った言葉がある。
『一生懸命に努力したら絶対に夢は叶うから』
俺は心の底からその言葉が大嫌いだ。
別にその人の事を否定したい訳じゃない。
そんな成功論に難癖つけたいわけでもない。
一生懸命に努力しても、全てを捨てでも、何かも犠牲にしても夢が叶わなかったものがいるだろ。じゃあ、なんだ、その人達は一生懸命に努力しなかったから、夢が叶わなかったってのか。そんなわけねえだろ。ふざけんな。
一生懸命に努力したって、叶わない夢はある。いや、叶わない夢しかない。だから、夢なんだろ。
夢の持つ魔法に魅入られ、夢に破れ、理想の大人になれなかった俺は、県外での夢を追いながらの会社員生活を止めて、めそめそ泣きながら実家に帰ることにした。
何者にもなれなかった俺は、一体何だったのか。
なあ。誰か教えてくれよ。
お願いだから。
頼むよ。
そんな腐った俺に魔法のような世界に誘ってくれるのは、他でもないお前だったな。
冗談じゃねえよ。全く。