美しい婚約者
このお話は、私が創作を始める時に一番初めに思いついた話です。
なかなか書き上げられずにいたものです。
どうしても完成させたくてちまちま書いていて、ようやく「何とかまとまった」ので、投稿させていただきます。
注意書き。
・作者が書きたいものを書いたので、「受け付けない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
・自傷描写・いじめ・性被害未遂の描写があります。
・登場人物たちの行動について、納得できないと思うことがあるかもです。
・執筆期間が長すぎて、おかしいところがあるかもしれません。
読後の誹謗中傷は受け付けませんので、難しいと感じたらお戻りください。
私の婚約者は、美しい。
麗かな午後。学園の裏庭に人だかりができている。その全てが女子生徒。そして中心にいるのは、取り巻く女生徒たちよりも圧倒的に美しい青年だった。金色の髪、白い肌。青い目はその手の中の本の活字を追うばかり。
「ルートヴィッヒ様、よければ帰りにお茶でも致しませんか?」
「まぁずるい!私も是非」
「私もご一緒してよろしいですか?」
「人を待っているので結構」
御令嬢たちの誘いをにべもなく断る彼は彫像のように美しい。そして動かない。もしかしたら美しさを象った彫像かもしれない。
エアリアナがそう思ったところで、彼――ルートヴィッヒが顔を上げてこちらを向いた。一つきりの青い眼が、エアを見つける。やはり彫像ではなかった。
「エア」
ルートヴィッヒは本を閉じると、輪になっていた令嬢たちを上手にすり抜けて、エアに手を差し出す。
「帰ろう」
ニコリともしないし、声も優しいわけではない。
「……ええ」
それでもエアは彼のエスコートを受けて、一緒に下校する。
「なあに、あの地味な子」
「ルートヴィッヒ様の婚約者? とか」
「まぁ、あんな平凡を絵に描いたような姿であの方の隣を歩いて、恥ずかしくないのかしら」
言われたい放題である。本人の耳にもしっかり届いているが、エアはいちいち反応したりしない。全て事実だから。
エアが地味なのも、彼の隣を歩くのが恥ずかしいほど平凡な顔なのも。――誰よりも美しい彼の、婚約者であることも。
「エア」
上の空だったことに気付いて、振り向く。碧い隻眼が、エアを見つめてる。
彼の右眼は眼帯に覆われていて、顔の大半が隠れてしまっている。
それでも彼は、誰より美しい。
数年かけてぽちぽち書き、ようやくできたので投稿させていただきます。
自己満足の部分が大きいですが、お付き合いいただけたら幸いです。