タバコ
駅の近くの喫煙スペースでタバコを吸っていたら、ドロドロとしたものがフィルターから噴き出して、口の周りをふさいでしまった。
驚き手でとりはらおうとするが、できない。粘り気を帯びていたものが、どんどんと固くなっていく。マスクのように顔の下半分を覆ってしまった。幸い鼻は覆われていないようだ。
周囲の人々も驚き、悲鳴をあげ、自分から遠ざかっていく。
どうしよう、なんだか苦しい気がする。
このまま鼻も塞がれたら、死んでしまう。
“死”が頭をよぎる。
怖い…怖い…
その時、
チャラララーン♪
どこからともなく陽気な音楽が流れ、マスク状に口を覆っていた異物が急速に乾燥すると、あっという間にポロポロと剥がれ落ちた。
そして、音楽を背景に、音声が響き渡る。
「ドッキリ禁煙マスク、いかがでしたか?この恐怖をまた味わう可能性があると思ったら、やめたくなりませんか?
厚生労働省では、国民の完全禁煙に向けた具体策として、このドッキリ禁煙マスクを導入しています!
タバコ一箱に一本!
どれが禁煙マスクかは、外見からは分かりません!」
その場にいた喫煙者達は、このおぞましいものを一刻も早く身体からはなしてしまいたい。といったように一斉にタバコを捨てた。