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憧れのひろみ店長

 いざ、ひろみ店長のメイド喫茶へ!「おかえりなさいませ、お嬢様!」と可愛らしいメイドたちの声が響く。「ど、どうも」と私。ずんずんとお店に入る。周りの客に道場破りをするんじゃなかって思われたかもしれない。

 店内はテレビ番組やドラマと同じようだった。圧倒的に男性客が多い。女性客は私と他2名。圧倒的に浮いてるな、私。

 1人のメイドさんが私に近づく。「〇〇カフェにおかえりなさいませ」と可愛い声で言うメイドさん。ネームプレートに「ねね」と書かれていた。名前は仮名だよ。ねねさんめっちゃ可愛い。ねねさんは、メニュー表を持ってきて、メイド喫茶のシステムやメニューを丁寧に説明してくれる。

 ひろみ店長の姿が見えない。キッチンにいるのかなと思った。私は「あの、チェキって撮れますか?」とねねさんに訊いた。ねねさんは「はい!撮れますよ!」と答えた。「どなたと一緒に撮りますか?」とねねさんは訊いた。私は「ひろみ店長とチェキを撮りたいです」と答えた。「あと、あなたと一緒に撮りたい」と付け足した。ねねさんは「わーい!ありがとうございます!」と喜んでいた。

 メイド喫茶初心者セットを注文した。セットはオムライス、ドリンク、チェキである。ドリンクはコーラにした。チェキはひろみ店長とねねさんと撮るんだ。ねねさんがオムライスとコーラを運んできた。ケチャップでオムライスに落書きをした。サービスなんだろう。落書きは顔文字みたいな猫だった。めちゃくちゃ可愛かった。

 オムライスの味は普通だった。正直私が作ったオムライスが美味しいと思った。ケチャップの猫が消えてしまった。コーラを飲んでオムライスを流し込む。オムライスを食べ終え、コーラを飲み干した。いよいよチェキ撮影だ。

 チェキは中央ステージで撮影する。撮影している様子を周りに見られる。恥ずかしいなと思った。中央ステージに上がって撮影している男性客とメイドを見た。2人だけの空間。男性客は幸せそうな顔をしていた。

 順番を待っていた。あと2人。2人がチェキを撮ったら、私の番が来る。突然不安が襲い掛かった。オカンから電話が来たらどうしよう。しょっちゅう仕事中や職場の人と食事中にオカンから電話がかかってきた。電話に出なかったら「何で電話に出ないの?」とオカンから延々と言われるのだ。楽しい空気がぶち壊される。それが嫌だった。そうなるのが不安で怖かった。

 「3番目の方、どうぞー!」とメイドさんの声で我に返った。ステージにひろみ店長が立っていた。ハーフツインテールにメイド服。可愛いですよひろみ店長!店長の隣に立つ私。ひろみ店長は、私より5cm背が高かった。

 「はじめましてー!」とひろみ店長が挨拶をした。ひろみ店長の声を聞くと、思わず笑みを浮かぶような可愛い声だ。「あ、はじめまして」と会釈をする私。私の声はだみ声だ。

 「どんなポーズにしますか?」と訊ねたので、「ハートでお願いします」と答えた。2人で1つのハートを作ってポーズをとった。新人メイドさんがインスタントカメラで撮影した。インスタントカメラから名刺サイズのチェキが出てきた。

 ひろみ店長は「来てくれてありがとー!」とお礼を言った。私は声が出なくて顔を横にぶんぶんと振る。「〇〇(私の地元)から来て良かったです」と私は言う。「え! めっちゃ遠いじゃないですか!」とひろみ店長は驚いていた。私の地元はかなり田舎なんだよ。1時間にバスが1本あるかないかだからね。

「お名前を聞いてもいいですか?」とひろみ店長。

「あ、イッチです」

「イッチちゃんね。今日は来てくれてありがとうね!」

「ひろみ店長に会いたくてここに来たんです」

「私に?」

「……次いつ会えるか分からなくて」

「何かあったの?」

「私、家に居て外を出歩くことができないんです。親が厳しくて。だから、親に嘘ついて、ひろみさんに会いに来たんです」

「そうだったの……」

 サインペンやマッキーでチェキに落書きを描いているひろみ店長。彼女は、顔を上げて私を見た。

「やりたいことを1つでもいいから見つけた方が良いわよ。親が嫌になったら、家出しちゃえ」

「そんなことできるかな?」

「できるよ。私もできたんだから」とひろみ店長はふふふっと笑った。そうこうしているうちに、ひろみ店長はチェキに落書きを描き終えていた。最後に彼女はサインを書き、チェキを私に渡した。ひろみ店長は「頑張れ」と言って手を振ってくれた。「行ってらっしゃいませ! お嬢様!」

 店を出た私。放心状態だった。夢の時間はあっという間だった。チェキに映っているひろみ店長はとびきり可愛い笑顔だ。恐る恐る私の顔を見る。ちゃんと笑っていた。おじいちゃんが死んで落ち込んでいたけれど、今は大丈夫だと思った。チェキを手帳に大事に挟めた。


ちょっと休憩。トイレに行ってくる。

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