私、東京へ行く
これから先、どうしたらいいのか。毎日悩んでいた。
ある日、ガラケーでネットサーフィンをしていた。
ふと、あることを思い出した。私が中学生の時に、テレビ番組でメイド喫茶が紹介されていた。メイド喫茶のひろみ店長(仮名)が可愛かった。天使、いや女神だ。ひろみ店長に会いたかった。メイド喫茶のオムライスを食べて、お喋りして、一緒に写真を撮って……。修学旅行で東京に行ったけれど、メイド喫茶に行けなかった。あれから数年が経つ。少しだけど貯金はある。メイド喫茶のホームページを見た。10月11日はひろみ店長の誕生日イベントが開催される。部屋のカレンダーを見た。10月は予定なし。土日は仕事が休み。東京に遊びに行こうと決めた。元祖会いに行けるアイドルに会える。
オカンに何て言えばいいか。勝手に出かけるとオカンに怒られる。一か八か、オカンに「高校時代の友達と旅行に行きたい」と話した。私は友達が少ない。小、中学時代の同級生と連絡を取っていない。出かけたくてもオカンの許可が必要なのだ。例えば、「映画観に行ってもいい?」と訊ねると、オカンは「どこで?」「何時から?」「誰と行くの?」「映画始まる前にメールして」などと言う。お前は束縛彼女か。
ダメ元でオカンに言うしかない。私は緊張しつつ、オカンに話しかけた。
「今度、高校の友達と旅行に行ってもいい?」と私は言った。
「高校の友達?誰?」とオカン。おいおいそこまで聞くか?これはフツーなのか?それともうちが異常なのか?
「部活が一緒だった子。2人いるんだよね」と恐る恐る答えた。
「どこに行くの?」
「と、東京に」
オカンは「ふーん」と言って、少し考えた。「旅行に行っていいよ」とオカンは言った。え?マジ?思わずオカンを二度見する私。今までこんなことがあっただろうか。何をするにも「ダメ」と言っていたオカンは、「行ってもいいよ」と言ったのだ。ありえない。天と地がひっくり返るんじゃないかと思った。
「オカン、ありがとう」と私は言った。
東京に行く準備をした。胸が高鳴った。憧れのひろみ店長に会える。
昼の新幹線に乗って、東京へ行った。土日の東京駅は人が多い。地元のお祭り以上に人が多いのだ。中学の修学旅行はこんな感じだったっけ?と思った。人ごみに酔いそうだった。早く秋葉原に行かねば。私は山手線で秋葉原へ向かった。
にぎやかな街。私みたいなアニメやゲームのオタクがいる。これは失礼な言い方かな。同じ匂い、いや特性を持つ人たちが多いからホッとする。ガラケーでメイド喫茶のホームぺージに地図が載っていた。地図を見てひとみ店長のメイド喫茶へ向かった。胸の鼓動が高鳴る。