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オカンは嘘吐き

 私14歳、中2の時。テレビで美輪さんが歌を歌っていた。美輪さんがアニメ映画の声優をやっているのは知ってた。でも、歌手なのは知らなかった。テレビを見て初めて知った。

 美輪さんかっこいいし、何といっても美しい。この日から美輪さんの虜になった。生で観たいと思った。テレビを見ていた私にオカンは「私、美輪さんと知り合いだよ」と言う。私は小さい頃から冗談や嘘を真に受ける。このオカンの嘘を真に受けた。簡単に信じた。

「ほんとに? どこで知り合ったの?」

「中学生の時に美輪さんにファンレターを送った。それで返事が届いた」

「今のその手紙持ってるの?」

「多分ある。おばあちゃんが捨ててなければね。あんたが2歳くらいの時に、ホールでコンサートがあってさ」

「うん。それで?」

「あんたを美輪さんに会わせたことがある」

 マジで?と思った。小さい頃の記憶はない。記憶があったら、みんなに自慢してるわ。私はオカンが美輪さんと知り合いだと信じてしまった。


 私高1の春。地元の市民ホールで美輪さんの公演があった。これは何かの運命だと思った。公演が始まる数か月前のこと。駅前で美輪さんに差し入れをあげようと考えていた。お菓子が良いか、花が良いか。かなり悩んだ。美輪さんはオカンの知り合いで、私のことを知ってる。私のものを身に付けてほしいと思った。駅前のお土産屋でご当地キティのストラップを買った。

 ご当地キティをオカンに渡した。私は「これを美輪さんに渡して」と言った。オカンはストラップを受け取った。

 公演当日。開演前のロビーでお客さんが数人待っていた。私、イチコ、オカンも待っていた。ロビーにたくさんの花輪が並んでいた。私は花輪を見ていた。芸能人の○○から花輪が届いてる!と興奮していた。

 ホールの入り口から声が聞こえる。誰かと会話している。とても穏やかな声だ。私は声の主の顔を見た。美輪さんだった。神々しいオーラ。美輪さんの周りにスタッフが4、5人。スタッフがじゃがいもに見えた。そのじゃがいもの中心に一輪の美しい花。それが美輪さんだ。

 私の心臓が飛び出そうだった。興奮した。うわあああああ!美輪さんだ!話しかけたい。せめて挨拶したい。

 美輪さんとマネージャーらしき人が楽屋に戻った。居なくなった瞬間、オカンが急いでホールのスタッフに駆け寄った。「あの、すみません」と話しかけるオカン。振り向くスタッフ。

 オカンのバッグからご当地キティのストラップが出てきた。オカンは「これを美輪さんに渡して下さい」と言い、スタッフに渡した。スタッフは「分かりました」と受け取った。見たくなかった。言葉を失った。オカンは嘘吐きだ。知り合いなんかじゃない。自分を大きく見せたいだけなんだ。

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