鬼退治
数日後、ユーキャンの教材が届いた。オカンがいない日を狙って荷物を発送してもらった。看護助手のテキストが3冊、DVDが1枚。毎日勉強した。簡単そうに見えたが、覚えるのが大変だった。
そして3か月後、見事に看護助手の資格を取った。本当に3か月で簡単に取られると思わなかった。部屋で1人喜ぶ私であった。浮かれていた私は、看護助手の認定書を机の上に出しっぱなしにして会社に行った。迂闊だった。これはオカンにバレる。が、もう遅い。
ある日、仕事が終わって家に帰ってきた私はいつものように「ただいま」と家に入った。私の部屋に入ると、オカンがいた。びっくりした。
「イッチ、これは何?」
看護助手の認定書を手に取るオカン。私は覚悟を決め、慎重に話した。
「あ、それ、か、看護助手の認定書だよ。ゆ、ユーキャンで取ったんだよ。これさえあれば、どこの病院や施設でも働ける」
「ふーん」
オカンは興味がなさそうだ。オカンは認定書を机に置いた。「私なら看護師になるけどね!」とオカンは捨て台詞のように吐いて、部屋を出ていった。
ものすごく傷ついた。動けない。胸がずきっと刃物で刺されたように。私だって分かっていた。本当は看護師が良い。食いっぱぐれがないし、働きやすい。本来なら大学や専門学校に行けばいい。でも、お金がない。私の貯金はそんなに持っていない。オカンは出してくれないだろう。
深夜、オカンは自分の部屋で寝ていた。私はそっと部屋に入った。




