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剣の頂き


 この場にいるのはマズいとわかった俺は即座に足に力を入れた。


「ぬぅぅんっ!」


 野太い音が耳に届くのと同時、大きく後ろに下がる。

 ものすごい速度でこちらに迫ってくるのは、レオニスさんが放った飛ぶ斬撃だった。


 技自体は飛斬に近いけど……威力と込められてる魔力が桁違いだ!


 最初は遠く離れたところから発生したはずの斬撃は、既に目前にまで迫っている。

 真っ白な光を発しながら、こちらに迫ってくる一筋の光線。


 少しでも威力を減衰させようと、咄嗟に風魔術を放ってみるが結果は芳しくなかった。

 俺が大量に放った魔術は全て真っ二つに切り裂かれ、飛ぶ斬撃が勢いの衰えることのないまま、速度を維持してこちらに飛んでくる。


 うーん、これを迎え撃つのは……無理ッ!


 瞬時に判断し、タイミングを見計らった上で軽く飛び上がった。

 横一文字のまま飛んできた斬撃は、足下をひやっとする速度で通り過ぎていく。

 タイミングを間違えたら足がスパッと切れていたかもしれない。


「うおっと!?」


 俺が飛び上がったのを確認したのだろう。

 強化している視界が再び動くレオニスさんを捉えた。


 レオニスさんは一度腰に提げている剣を鞘に戻している。

 彼が持っているのは、『レオニス・サーガ』でも歌われることのあった、愛剣である混沌剣ケイオス。

 聖剣コスモスで邪竜を討伐した際、邪竜の魂によって変質したといういわくつきの逸品だ。

 若干腰を下げたあれは、間違いなく居合いの構え。

 鞘の中を走らせることで剣速を加速させ放たれる必殺の一撃。

 神速の居合い斬りが、来るっ!


「――シッ!」


 俺目がけて放たれるのは、光の斬撃だった。

 先ほどの飛ぶ斬撃とは違い、刀身が光によって伸びている形だ。

 刀身の延長線上にある光があり得ないほどの速度でこちらに迫ってくる。


 風魔術を使い、強引に動きを制動。

 俺にはフェリスのように風を身に纏わせて細かく動きを調整することはできないけど、大雑把に風で加速することくらいならできる。


 大きく身体を動かし、再び魔術を使う。

 すると先ほどまでと違い、わずかながらにレオニスさんの生体反応に変化があった。

 どうやら攻撃に移っている間だと、多少はダメージが入るみたいだ。


 それならまだやりようはある。

 完全にダメージが通らないわけじゃないんだ、削りきるのは無理でもぎゃふんと言わせてやる!


「おおおおおおおっっ!!」


 レオニスさんが距離を詰めながら、こちらへと攻撃を繰り返してくる。

 彼が持っている飛び道具は飛ぶ斬撃と刀身伸ばしの二つ。

 前者は連射が効くけど速度はそれほどじゃない。


 そして超高速で動く刀身伸ばしにもしっかりと弱点がある。

 あの攻撃はあくまでも光の刀身を本来の刀身に延長させる形で光の刃を伸ばすというもの。

 故に相手の手の動きをしっかり見ていれば、相手の攻撃の軌道を大雑把に推測することができるのだ。


 ただ風魔法を使うと砂煙が舞ってしまうので、視認性が著しく下がってしまう。

 そこで他の属性を色々と試してみることにした。


「ライトニング!」


 俺が積極的に使うようになったのは、雷魔術だ。

 雷属性の良いところは、その攻撃に雷の性質がついているところ。

 出も早いし、攻撃が相手の下に届くまでも早い。

 更に言うと相手の身体をしびれさせることもできる。

 ……まあレオニスさんには、まったく効いてないみたいだけど。


 俺はこちらに近づいてこようとするレオニスさんに対して牽制の魔術を放ちまくり、ある程度近づかれた感じた時点で、風の魔術を使って無理矢理自分の身体を吹っ飛ばすという戦法を使うことになった。


 レオニスさんの移動速度は、こちらが絶えず使いまくっている魔術を食らっているとは思えないほどに早い。

 なのでこちらも逃げるための風魔術を全力で放たなければならず、結果として自分の風を食らって結構なダメージを受けたりしてしまった。

 光魔術がなければかなり危なかった……。


「むぅ……とんでもない魔力量だな。おまけにこれだけ魔法を使ってガス欠にならんとは……純粋な魔力量だけなら、邪竜アダルナーヴァクラスだぞ」


 どちらからともなく、一旦小休止に入る。

 おかげでレオニスさんの声がこちらによく通る。


 俺達が使っている練兵場は、俺がぶっ放しまくった魔術のせいで、ものすごい惨状になっていた。


 俺の放った魔術で地面はめくれ上がり、いくつもクレーターが生じている。

 更に言うとレオニスさんの光の斬撃でいくつもの地割れができている。


 俺もまったく気にしている余裕がなかったけど……すごいことになってるな。

 完全に地形が変わってしまっている。

 後で賠償しろとか言われないよね……。


「なんだこれ……俺達は何を見せられてるんだ?」


「すげぇ……これが『魔族殺しの騎士』と『剣神』の戦いか……」


 外野からの声もしっかり聞こえてくる。

 ちなみに戦いが激しくなった時点で既に皆待避しているため、怪我人等は出ていない。


 ただ攻撃の余波を食らった人間が何人かいたみたいで、気絶している様子の衛兵さんが何人か担架に乗せられて運ばれてる。

 あれ、もしかして俺……やりすぎちゃった?


 そして『魔族殺しの騎士』って……もしかしなくても俺のことだよね?

 なんか変な二つ名みたいのがついてるんですけど!?


新作を書きました!

↓のリンクから読めますので、そちらもぜひ応援よろしくお願いします!

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