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謁見


 女神様との再会をしてから数日が経過したある日のこと。

 再度入手した魔力系のスキルをカンストさせるべく魔法の練習をしまくっていた俺は、呼び出しを受け――王城へとやってきていた。


「マルト・フォン・リッカー、表を上げよ」


「――はっ!」


 ごちゃまぜになっている内心をなんとか制しながら、やけっぱちに顔を上げる。

 するとそこには玉座に座っている、アトキン王国国王エドガー三世の姿がある。


「ほう、彼が……」


「……」


 その脇を固めるようにこの国の重鎮達もずらっと並んでいる。

 王の脇にはディスパイルと戦った時はいなかった王国最強の騎士と名高い男、『剣神』レオニスさんも控えていた。

 レオニスさんはなぜかこちらを、恨みがましい目で見つめている。

 一体俺が何をしたというのか。


(なんで――なんで王様から呼び出されてるんだよ!?)


 この世界に神はいないのか!

 いや居たわ、とびきり綺麗な女神様が。


 俺は完全に、パニック状態に陥っていた。

 たしかにエレオノーラ様は治してみせたし、力を振り絞りディスパイルを倒してみせたのは事実だ。

 けどいきなり王様との謁見は……流石に想定していないって……。


 ビビりながら顔を上げていると、玉座の間に太陽の光が差し込んでいるのがわかった。


 ……そう、俺がぶち破った天井は未だ補修されていないのだ。

 なんでも王城で使えるような上等な石は切り出すのに時間がかかるらしく、しばらくはこのまま使うしかないらしい。


 これもまた、俺がビビっている原因の一つである。

 果たして直すのに、一体いくらかかるのか……小市民な俺にはまったく想像ができない。


 今も王城を破壊した分の金銭を弁償しろと言われるんじゃないかと、戦々恐々としている。 なんとか功績と相殺でチャラにしてくれると助かるんだけど……。


「エレオノーラを快方へと向かわせたその回復魔法の腕、比類なし。此度の件は報酬を用意しておいた。後で財務卿より目録を受け取るように」


「ありがたき幸せ」


「また、此度の魔族討伐、大儀であった。マルトのような人材が埋もれるのは世界の損失である。よってマルト・フォン・リッカーには双鷲勲章を授与し、騎士爵位を授けるものとする」


「――陛下! それは」


 納得がいっていない様子の家臣が苦言を呈そうとするが、国王陛下がぎろりと人睨みして黙らせた。

 おっかねぇ……人を殺せる眼光だよ、あれは。


 俺としてはむしろ家臣側だ。

 勲章なんていらないし、騎士爵位なんてもっと要らない。


 王国では公爵・侯爵・伯爵(辺境伯も立ち位置的には伯爵だ)・子爵・男爵の貴族がいる。


 騎士爵というのは彼らの下の立ち位置にあたる、いわゆる準貴族という存在だ。

 子供に爵位を継がせることができない、一代貴族というのがわかりやすいかもしれない。


 普通であれば戦争なんかで功績を残した兵士なんかにあてがうためのものだったはずだけど……そんな目立つものがあっても、厄介ごとが増えるだけだよな、絶対。

 けれど俺に王様の言葉を遮るような胆力があるわけもなく、


「……謹んでお受け致します」


 と、ただ頭を下げることしかできないのだった――。







「にしてもいきなり騎士爵とはね……大出世じゃない、マルト」


「あんまりからかわないでくれ。正直気が重いよ……せっかく自由な冒険者になったはずなのに……」


 俺はミラの好意で、彼女の父が所有している屋敷のうちの一室に泊まることになった。


 どうやら魔族を倒した新たな英雄としてパレードに参加しなくてはならないらしく、しばらくの間王都に滞在しなくてはならなくなってしまったのだ。

 名ばかり貴族とはいえ、なんやかんやでやることは多そうな気配がひしひしと感じられる。

「まぁ、面白そうな話をしていますね」


「はぁ、そうです――って、エレオノーラ様!?」


 ゆっくりとお茶を楽しんでいると、なぜかエレオノーラ様が部屋の中にやってきていた。

 よく見ると窓ガラスは開け放たれている。

 あそこから侵入したのか……王女様にしては動きが大胆すぎる。


「マルトさん、今回はありがとうございます。うちのパパがご迷惑をおかけしますが、マルト様の使命は邪魔しないように私が最大限気を遣いますので……」


「使命って、なんのこと?」


「あ、あはは……」


 あんまり詳しい話をするとまた新たな面倒ごとが舞い込んできそうなので、ミラの質問には笑って誤魔化しておくことにする。

 この世界には教会もあるし、使徒認定されると色々とマズそうだしね。


 にしてもなんでエレオノーラ様が俺の邪神の使徒討伐のことを知ってるんだろう?

 ……もしかすると女神様が何か手を回してくれたのかもしれない。


 だとしたらとりあえず騎士爵になったから王都に釘付け、なんてことにはならなそう。

 とりあえずは一安心……かな?


「それと私のことは、ミラと同じくエレオノーラと呼び捨てで……」


「いやいや、そんな恐れ多いこと……」


「私、ほしかったんです……対等に話をすることのできるお友達が」


 エレオノーラ様はどうやらミラと普通に話をしている俺が羨ましいらしく。

 俺は人の目のないところ限定で、彼女と気安い口調で話すことになってしまった。


 どんどんと肩が重くなってきた気がする。大丈夫かな、俺のストマック……。


 エレオノーラ……と、ミラと話をしていると、どたどたという大きな足音と、がっしょんがっしょんという甲冑の擦れ合う音が聞こえてくる。


 控えめなノックの後に現れたのは……謁見の間で俺のことを睨んでいた『剣神』ことレオニスさんだった。


「姫様、ようやく見つけ――貴殿は、マルト卿!!」


 レオニスさんは親の敵を見るような目でこちらを睨んでくる。


 どうしてそんなに敵対的なんだろうか……って、多分王城を壊したからだよな。

 それに関しては本当にごめんなさいとしか言い様がない。

 頭くらいならいくらでも下げますので、何卒……


「――マルト卿、もしよければ手合わせを願いたい。貴殿が姫様についた悪い虫か否か……この剣で確かめさせてもらおう」


 断れそうにない雰囲気でそう告げてくるレオニスさん。

 ミラは面白そうなものを見る目で観戦する気満々で、エレオノーラは期待する眼差しでこちらを見つめていた。


「……お手柔らかに、お願いします」


 一難去ってまた一難。

 どうやら俺に平穏が訪れるのは、まだまだ先のことらしい――。


読んでくださりありがとうございます。

これにて第一部は終了となります。


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