ゾンビの悩み
読んでください!お願いします!
「明日も、会えるの?健」
「うん。明日も、一緒に。帰ろう。菜月」
「そしたら、学校に行くのも楽しみになってくるかも!」
「おれも」
別れ際。
空は橙色に満ちている。
昨日、告白できてよかった。
こんな会話ができるのなんて、夢のよう。
おれは、遠くなる菜月の背中を見つめていた。
いつまでも、一緒にいたい。付き合ってまだ1日だけど、そう、思ってしまう。
その時だった。
横から、大きなトラックが突っ込んでいた。
ここは、どこだろうか。
うっ。土臭い。
あれ。
菜月の、声がする。
「なんで、明日も会えるって、言ったじゃん」
『明日も、会えるの?健』
あれ。
もしかして。
おれ。
死んだ?
それにしても。
土の中。
息は、ちゃんとしている。
おれは、どうにかして、上に向かって、土を掘り進めた。
「え、なに?」
菜月の声がする!
どうしたんだ!?
何があった!?
おれは、すぐに土を掘り、地上へと出た。
瞬間。
「キャーーーーー!」
菜月は、叫び声をあげ、逃げていった。
そこは、一面、墓場だった。
おれは、両手を見た。
ただれている。
服も、ぼろぼろに破れている。
歩きにくい。
足を引きずりながら、おれは、墓場を出た。
夕暮れ。
他人に、ひかれた。
その夜。
自宅を見つけた。
おれは、ドアを開け、リビングに入った。
「わ、キャー――!」
母親が、悲鳴を上げている。
弟は、足がすくんで、動けなくなっている。
なんだ。
これ。
おれじゃ、ないみたい。
すごく、悲しい。
でも、何だろう、この感情。
すごく、2人に。
噛みつきたい。
いやだ。
止まってくれ、おれ。
「うわあああああああああ」
そう叫び、リビングから急いで出た。
玄関が、光っていた。
そこを、開けると。
見たこともない景色が、広がっていた。
「ようこそおいで下さいました、ファンタジー・パレードへ」
ゾンビがそういうと、星屑がずーっと、奥まで広がった。
おれも。
今。
ゾンビだ。
今、気づいた。
「あ、あなたも」
「はい。ゾンビです」
ガイコツや、ロボット、天使も、悪魔も、神様。みんな、容姿は様々で、踊っている!
「ここなら、怖がられずに、話せますよ。だって、ここは」
にっこりと、笑った。
「異世界ですから」
電灯には魔法陣があり火がついていて、真ん中には大きな木と光り輝くエレベーターがある。
空飛ぶ絨毯やホウキ、流れ星。
綺麗。
「よかったら、私と一緒に、交代で、受付やりませんか?たくさんの人と、話せますよ」
「やあ、元気だった?」
「今日も楽しみだなぁ」
「ケン。ありがとう」
「いつ来ても、綺麗なパレードだなあ」
「星屑が、ずーっと、続いてる」
たくさんの人と、話す。
今日は、顔見知りの吸血鬼と、初めて会う人間が来た。おれは、ゾンビ。みんな、分かり合える。
「ヴァンさんと、アランさん。お2人でご入場とは、珍しいですね」
「ケンさん、ですか。」
「ああ、いかにも。わたくしは、ケンと、申します。ゾンビの、ケンです」
「僕は、人間のアランです」
ここでは、おれの見た目を不思議がる人は誰もいない。
確かに菜月はいないけど。
おれには。
たくさんの仲間がいる。
一度死んでいるのに。
まだ、たくさんの仲間に、囲まれている。
それだけで。
この上ない、幸せだ。
今日も、最後に。
花火は、夜空を包み込んだ。
読んでくださってありがとうございます!悲しみは消えなくても、喜ぶことはできるんですよね。