自分らしさと個性がないのかもしれない
「ねえ、ヴァンロー」
おれは、パレードでポップコーンを売ってる吸血鬼のヴァンローに尋ねた。
「なに、アラン」
「自分らしさって、なんだと思う」
他人を思いやる気持ち。道徳心、真面目さ。
これが超自我。
自分の欲求。
これが、イド。
それを、自我が仲立ちする。
そう、天才心理学者、ジークムント・フロイトは、説いた。
じゃあ。
みんな一緒じゃん。
なのに。
おれは。
なんで。
みんなとこんなに。
違うの。
こんなに。
悲しくて。
苦しくて。
「お前のその内面の弱さってのも、超自我の強さってのも、お前の個性なんじゃねーの。お前らしさって。そういうとこから生まれんじゃねーの」
そう言って、ヴァンローはポップコーンをおれに渡した。
無理してたかもしれない。
なんでおれだけこんな目にって。
思ってたけど。
これも。
自分の弱さで。
その弱さも。
おれの個性で。
おれだし。
おれはおれで。
「おれ、吸血鬼だからさ、人間の血が吸いたくなるんだけど。
でも。
自分のことが、嫌いだって、思いたくない。
自分がどんな個性であろうと、自分を愛したい。
その気持ちがあれば、それで十分じゃないかな」
ポップコーンは、キャラメル味がついていて、少し甘い。
「確かに、そうかも」
空には、大きな花火が打ち上がった。




