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神様の悩み

「神様、私をお助け下さい」

「神様、どうか」

 神は、手を振りかざす。

「ありがとうございます。ああ、神様のおかげだ」

 振りかざし続ける。

「ああ、ありがとう。あなたのおかげで、私は、助かりました」

 その部屋は、天井も、床も、壁も、全て、ガラスで囲まれていた。

 たくさんの、星が見える。

 たくさんの。

 神は、机に置いてあるココアを一口、飲んだ。

「ああ、神は私を見捨てたん」

 手を、すぐに振りかざした。

「おお、神よ。ありがたき幸せ」

「神様は、いつでも私たちを見ているのよ。」

「神様から、天罰が下るぞ。」

「神様、どうか」

 手を、振る。

 振り続ける。

「神様」

「神様」

 ううう。


 神は、耳を塞ぐ。

 声は、消えない。


「神に見捨てられたんだ。この子は、もう」

「ああ、神様、私を、見捨てないで」


 やめて。

 私は。

 私は。

 人助けをするためだけに。

 人に天罰を下すためだけに。

 生まれたわけじゃないの。


「神を信じる者は、救われる」

「神様は、きっと、私たちのことを見ている」


 ううう。

 心が。

 胸が苦しい。

 みんなが。

 死んでいく。

 生まれてく。

 私一人では。

 うううううう。


 バンドのついたその手を、ぐっと、握りしめた。

 助けて。

 ミカ。


 天井が、光った。

 神は、天井へと浮遊し、それを、開けた。

 金色に輝く無数の星屑が、目の前に広がった。

「ああ、これはカミン様、お久しぶり」

「ありがとう。ごめん、ミカ、いない?うう」

「はい。すぐに、わたしのテレパシーで、お呼びしますね」


 すると。


 ミカが、魔法のじゅうたんに乗って、神の前に現れた。


「カミンちゃーん! 大丈夫?」

 ポチと、ヴァンローも、乗っている。あと。うっ。人間。

「お願い、私を、助けて」

「わかった。」

 ミカが、杖を振る。

「あれ?魔力が」

 ミカはそういうと、すぐに、ポケットから、錠剤を何粒か渡した。

「これは?」

「精神安定剤。一回一錠ね。アランが、持ってきてくれたんだよ」

「人間のあなた、アランさん? 飲んでいいの?」

 アランは、コクっと、頷いた。

「もし、あなたが辛いのなら。胸が苦しいのなら。僕にもその気持ち、わかるから」


 ヴァンローが、水を渡してくれた。

 そして、それを、こくっと、飲んだ。


「すごい!なんか、落ち着くよ。」

 ミカが、フフフ、と笑う。

「人間は、すごいんだから。魔法がなくても、こんなの、作っちゃうんだから。」

「人間」

「紹介するね、新しくここに来た、人間の、アラン。」

「よろしく。おれは、アラン。」

「アラン。よろしく。私は、神。でもここでは、カミン、って、呼んでほしいな。」

「カミン。おれも、何回か、お願いしたことがある。死にたくなくて」


 カミンは胸が苦しくなった。

「でも、ここでこんな景色が見れるなんて。カミンがいなかったら、出来なかったのかもしれない。」

 私は。

「私は、助けるために、生まれたわけじゃない。」

「そっか。じゃあ、ありがとうじゃない。でもおれは、君と、ここで出会えて、よかった。」


 私は。

 いま。

 人間に。

 いつも、私が手を振りかざしていた人間に。


 救われた。

 

 ヴァンローは、カミンに、ココアを渡した。

「ほら、飲め」

 カミンは、それを、コクって、飲んだ。

「うまいだろ」

「うん」


 カミンたちは、下の屋台へと降りた。


 りんご飴を、ロボットのメメが売っている。

「わあ、カミンちゃん! 今日もかわいい!」

「メメちゃんこそ! りんご飴、もらっていい?」

「うん。あ、アレンも一緒じゃん」

「あ、ああ」


 上は、満開の星空で満ちている。

 いつも、カミンは、全てが見えている。

 ほかの種族や生物には、想像できないと思う。

 でも。

 確かに、全てが、ずっと見えて、ずっと聞こえているのだ。


 だから、喜び、悲しみ。


 たくさんの感情が、ずっと、渦巻く。


 でも、ここに来たら。


 なぜか。


 目の前の景色だけの、視界になる。


 本当に、楽しい!


 星空が綺麗。


 上を見上げたら、星空しか見えない。


 いつも見ているはずなのに。


 星空しか見えないって。


 なんて、素敵なんだろうか。


 流れ星が流れた。


「私は」


「大丈夫。おれも、みんなも、辛いから」

 ヴァンローが、励ました。


「ありがとう。」


 メメが、呟いた。


「時間だ」


 空には、満開の、花火が上がった。


「神様、私にご加護を!」

「おお、神よ」


 カミンは、また、錠剤を一粒、飲み。


 手を、振りかざした。


 笑顔で。


 

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