表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

作者: まと

目を覚ました。

見慣れた部屋、豪勢な自室だ。


ベッドから起き上がって、窓の外を見た。

そこには、美しい庭園と豪華な屋敷が広がっていた。


この世界に住んで、もう随分経つ。

でも、今でも時々不思議な感覚に襲われる。


それも当然だ。

私は元々、別の世界の人間だったからだ。



私は生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。

名前はレイナ・ベルモント。富豪の一人娘。

しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。


そんな運命を回避するために、王子達と遭遇しないように工夫していた。

イベントをスキップして、自分の家に引きこもっていた。

せっかくの金髪も青い目も白い肌も、深紅のドレスも、メイドにしか見られない。


そんな私にも、一つだけ希望があった。

向かいに住むモブだった。



彼は私と同じくらいの年齢だった。

ゲームではほとんど登場しなかったが、前世でも彼のことが気になっていた。


濡れたような黒髪、大きな漆黒の瞳。彼はとてもかっこいい。

周りの人と話している様子から、優しくて、面白くて、魅力的なことが分かる。


私は時々、窓から覗いてみることがあった。

彼が気づいてくれるかもしれないと思って。


「おはようございます、お嬢様」


突然、声が聞こえた。

振り返ってみると、メイドのアンナが笑顔で立っていた。


「おはようございます、アンナ」

「今日もお元気そうで何よりです」

「今日は何か予定がありますか?」

「ええと……」


私は考え込んだ。特に予定はなかった。


「それなら、お散歩でもいかがですか?向かいのお屋敷に住む若様がお庭でお花を摘んでいますよ」


アンナは言って、窓を指さした。

窓から見てみると、本当にモブが庭で花を摘んでいた。


彼は白いシャツに黒いズボンというシンプルな服装だったが、

それが彼の色白な肌と黒髪を引き立てていた。


彼は花を一つ一つ丁寧に摘んで、バスケットに入れていた。

彼は時々顔を上げて、周りを見回していた。


その時、彼の目が私の方に向いた。


「あ……」


私は思わず声を漏らした。

彼も私に気づいて、目を見開いた。そして、彼は微笑んで手を振った。


「こんにちは」と彼は口パクで言った。

「こんにちは」と私も口パクで返した。


私達はしばらく窓越しに見つめ合った。

アンナが心配そうに言った。


「お嬢様、どうされましたか?お顔が赤いですよ」

「あ、いえ、何でもありません」


私は慌てて言った。


「それならよかったです。では、お散歩に行きましょうか」


アンナが私にコートを持ってきた。

全身を覆うコート。私だと王子達にバレないように。


「あー、外に出るの面倒だなー」

「だめです。せっかくの美しさも、日光に浴びなくては維持できませんよ」


私はアンナに押されて、玄関に向かった。

扉を開けようとすると、「号外だよ!」と外から声が聞こえた。



「王子達が婚約した!しかも5人、全員だ!」


私は驚きと同時に、安堵した。

そしてコートを脱ぎ捨てた。


「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」


私は家を出て、全速力でモブに会いに行った。


モブの名前はローランという。

彼と仲良くなるのに、時間は必要なかった。



数ヵ月が経過した。

私たちは互いの家を行き来しつつ、新たな人生を歩み始めていた。


ローランは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。

前世でもなかったほど、愛情に包まれた温かさと幸福感で満ち溢れていた。


ある日、私はアンナの部屋に入った。

野良猫が迷い込んでしまったのだ。


「え、日誌?しかもベッドの下?」


ベッドの下から、猫が日誌を加えて出て来た。


「ちょっと読んでみようかな……何々、え、アンナも転生してきたの!?」


彼女とは前世で親友だった、クラスメイト。

しかも、私を越える乙女ゲーム好きだった。


「あの子、ゲームの攻略本を書いてたけど、私には見せてくれなかったよねー」


出来心で、ベッドを覗く。

彼女によって書かれた、ゲームの攻略本があった。


「え、まじで?」


そこには、驚くべきことが書かれていた。


『当て馬の悪役令嬢レイナの向かいに住むモブは、最強の魔術師だった。ローランは王国の危機を救うべく、裏で暗躍していた。王子達の婚約者となったヒロインも、実は魔族のスパイだった。ヒロインは王子達を騙して魔族の手先にしようとしている。ローランは魔族と戦うべく、正体を隠して王国で過ごしている』


私は信じられなかった。

ローランが魔術師だなんて。モブだと思っていたのに。


「てか、裏ルートなんてあったの?」


じわじわと不安が襲う。

玄関のドアが開く音がして、私は慌てて部屋を出た。



玄関で出迎えた私を、アンナは心配そうに見た。


「お嬢様、どうされましたか?お顔が青いですよ」

「な、何でもないわ」

「それならよかったです。では、お昼ご飯を用意しますね」


アンナは部屋へ入って行った。私は猫を撫でた。

ごろごろと喉を鳴らす音だけが、玄関に残された。



何を食べたかも覚えていないまま、ローランの家へ向かった。

午後にお茶を飲む約束をしていたのだ。


「こんにちは。今日も綺麗だね」


テーブルに座ると、彼はネックレスを見せてくれた。

そして、嬉しそうに笑った。


「君のために作ったんだ。白い肌を引き立てるのに、似合うと思ってね」

「ありがとう。何てお礼を言えば良いのかしら」

「レイナの笑顔が見たくて、勝手にしたことだからね」


ローランは私の手を握った。

彼はいつも、私のことを愛してくれる。


「その割には、さみしそうな顔をしてるね?」

「……何か私に隠していることはない?」


完全な沈黙が、場を支配した。

彼は私の手を握って、優しく微笑んだ。


「ごめん、隠してるつもりはなかった。俺は魔術師なんだ」


彼はそう言って、私にキスをした。


「でも君のことを愛してる。これは嘘じゃない」」


私は彼に抱きついた。

彼は優しく受け止めて、頭を優しく撫でてくれた。



あの日から、ローランは魔法を使うようになった。

最強の魔法使いと呼ばれるだけあって、彼に不可能はない。


何でも願いを叶えてくれた。

もちろん私の溺愛に変わりはない。


しかし、平穏な日々は長く続かなかった。

王子達が押し寄せてきたのだ。



「レイナは俺の婚約者だ!」

「いえ、貴女は僕の初恋です!」

「ははは。彼女は私の運命ですよ?」


王子達は私に執着して、もう何時間も食堂で口論している。

騒ぎを聞きつけたローランが、家にやってきた。


「何だい、これは?」

「どうやら彼らは私に惚れていたらしいわ」


困惑する私と反対に、ローランは冷静だった。


「レイナは俺のものだ」


ローランは私を強く抱きしめた。

王子達が凍り付く。剣を抜こうとしている者もいる。


見せつけるように、ローランは私を抱きかかえた。

いわゆる、お姫様抱っこだ。


私たちは宙へ舞い上がり、

窓から、大空へと逃げ出した。



しばらくローランに抱きかかえられて空を飛んだあと、

森で休むことになった。


「どうしてこんなことになってるの?」

「ごめん。俺が悪いんだ」

「どういうこと?」

「実は……」


ローランは深呼吸して、話し始めた。


「王子達の婚約者達は、実は魔族のスパイなんだ。彼女たちは王子達を騙して、魔族の手先にしようとしている」

「うん、知ってる」

「知ってる!?」

「あ、いや。でも、どうしてローランのせいなの?」

「俺が魔法で王子達にレイナへの興味を失わせたんだ。俺はレイナのことが、ずっと好きだった」


それは知らなかった。

婚約破棄ルートを脱出する鍵は、ローランとの接触だったらしい。


しかし私には、まだ分からないことがあった。


「どうして王子達が、また私に執着してるの?」

「魔法が解けたからだろうね。その反動で、彼らは君に熱を上げているんだ」


彼は続けた。


「ごめん。でも、俺は君のことを本当に愛している。君を手放したくない。だから、どうか、俺を許してくれ」


ローランは私の目を見た。

吸い込まれそうな青い瞳からは、彼の気持ちが伝わって来た。


彼は心から私を溺愛している。


結果として、魔族の女たちが婚約者になったけど、

王子達の目をそらしてくれたおかげで、私は生きている。


「分かったわ。私もローランが好き。許すも何も無いしね」

「本当かい?ありがとう。君は優しいな」


彼は微笑んだ。

あたたかく、深い笑みだった。


「でも、これからどうする?王子達は私達を追ってくるわよね」

「大丈夫だよ。俺が君を守るから。俺と一緒に着いてきてくれるかい?」


ローランが言って、私の手を引いた。


「あなたと一緒なら、どこでも」


その直後、私たちは光に包まれた。



あの日から、私の日常は一変した。

ローランと共に向かったのは、なんと魔界だった。


「まるで裏ルート探求の旅ね」

「何か言ったかい?」

「いや、何でもないわ」


私たちは魔界の隅々まで探索した。

ローランが魔術師としての腕前を存分に発揮したからだ。


忌まわしき過去の謎や、魔界に秘められた真実を解き明かすため、

私たちは危険と向き合いながらも前に進んでいった。



そして、辿り着いた場所で私たちを待ち受けていたものは―――

伝説の秘宝、「世界地図」だった。


全てを思いのままにできる、魔法の地図。

その力は世界を変えてしまうことになる。


かつて魔族と人間の間で、

これを巡って争いが起きたともいわれている。


「君が好きにして良いよ」

「じゃあ、最も平和になる道を選ぶわ」

「良いのかい?」

「ええ。ローランがいれば幸せ。あなたに何でももらえるしね」


レイナ・ベルモントが一番欲しいもの。

前提として、ありのままで生きていけること。


そして愛する人からの、溺愛だった。



その後、私たちは人間界に平和をもたらした。

王子達との関係は修復され、互いに尊重し合うようになった。


王国の皆に祝福されながら、私はローランとの結婚を果たした。

二人の愛は永遠に続いた。


……これがクソゲーの真の結末である。


私たちの物語は、乙女ゲームの枠を超え、

永遠のロマンスファンタジーとして刻まれることとなったのだ。


次のページには、愛と勇気に満ちた新たな物語が待っている。

私たちの冒険はまだ終わらない。


私たちの愛も、彼からの溺愛も、永遠に続くのだろう。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


・面白かった

・応援してる

・長編も読みたい


と感じていただいた方は、広告下の☆☆☆☆☆より評価をお願い致します。


作者の励みになります。評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ