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野良猫の集会は路地裏で  作者: 名字 鈴
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青い稲妻

 夜も賑わう都会の中心から少し離れた場所にある東海市カモメ町、そこには近所の住民も寄り付かない不気味な廃校があった。元々は中学校だった様だが今や壁には長く伸びて枯れ果てたツタが生い茂り、校庭や遊具があったであろう場所にはよく分からない植物や雑草が根を張っていて見る影もない。


 床や屋根も長い時間の経過から崩れやすくなっているようで、今では立ち入り禁止の立て札と共に重たいチェーンがびっしりと入り口に張り巡らされ、たとえ昔の生徒であっても立ち入りは許されていない。


 そんな危険な廃校の立ち入り禁止看板を無視して、塀を乗り越えようとしている影が二人分あった。


「…うわ…、やっぱり夜の学校って不気味ですよね…ましてや廃校なんて…ホントにここに入るんですか?」


 正直こんなところには入りたくはない、そう言いたげなひきつった表情で、短めの金髪をハーフアップにまとめ、全身黒いセーラー服を身に付けた影の一人である少女…黒野(くろの)カエデは薄暗い校舎を見上げた。そんな彼女の顔を見てか、もう一人の少年らしき影———あけみは被っていた黒いキャップを深めに被りなおすと楽し気に上がっていた口角を更に吊り上げた。


「嗚呼、勿論。入らないと謎は解けないからね。…まさかとは思うけれどヤマダ君。私の助手とあろうものがビビッてるんじゃあ、ないだろうね?」

「……ビビビ、ビビッてなんかないですよ!あ~!すっごく楽しみだなあ!!!」

「……ふふ、それでこそ私の助手さ」


今まさに不気味な廃校に入ろうとしている者達の会話とは思えない会話である。カエデは高い塀をよじ登るのに使ったロープ梯子をテキパキと背中に背負っていたリュックにしまうと、朱の背中を追いかける。


「……あと朱さん、さっきここに来る時から思ってたんですけど、その、謎を解く…とか、探偵みたいな喋り方何なんですか?今度は何に影響されたんです?」

「ん?嗚呼、先日()()()()本を拾うての。暇潰しに読んでみたら探偵ものだったのじゃ。内容はつまらんものだったが、こうしたら雰囲気が出てカエデも楽しかろうとおもってのう。」


キラリと光る沢山の両耳のピアス、黒いキャップの下でニヨニヨと笑みを浮かべながらくるりとこちらを振り向く姿を見てか、カエデはこれでもかという深い溜息を付く。


「姿といい、やってる事といい…正直どっちかっていうと朱さん、犯人側ですけどね…あと私の名前ヤマダじゃないですし…誰なんですかソレ…」

「まあそう硬いことを気にするでないぞカエデ。ハゲるぞ?」

「まだ若いんでハゲたくは無いですけど毎日こうだと心配になりますね。……って!そんな事より早く済まして下さいよ。」

「やれやれ…まったく、せっかちな奴じゃのう。どれ、可愛い可愛い助手の頼みじゃ。……早速中に」


朱が暗い校舎を見上げた刹那。


―――ウオオオオオオオオォオォン…


 心臓の奥底まで響いてくるような重低音の遠吠えが廃校の敷地内全体に響き渡るのと同時に、朱とカエデの真横を青い稲妻の様な何かが通り過ぎる。朱が稲妻が走り去った方向にゆっくりと目を向けると、そこには首の無いカエデが鮮血を吹き出しながら立っていた。

2022/09/28 黒野カエデの口調変更しました。


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