2,武器獲得
気がつくと俺は倉の中のリスポーン地点の陣の上に静かに立っていた。
「─…あれ?ここは………そうか…成功したのか………」
どうやら俺の能力は本当に本物の異能力なのだろう。
「死んだのに、生きてるって不思議な感じだ………脚と胸の傷も痛みもない………………ん?というかなんで俺リュック背負ってんだ?それに包丁も………」
背中にはなぜか置いて行ったはずのリュックが背負われ、ゴブリンに奪われた包丁も片手に持っていた。
「とりあえず下ろ………え?ここにもリュック………まさか?!」
リュックを下ろそうとすると、すでに全く同じリュックが床に置かれていた。
ここにリュックを置いたの間違いなく俺だ。だが、俺の背中には同じリュックがもう一つ………これから考えられることは─
「つまり、《リスポーン設置》をした時の俺の状態で………装備品もリスポーンされるのか?!いや、リュックに関してはリスポーン(復活)というより複製だろ!」
これは俺の思っていた以上に凄い能力なんじゃないだろうか?
健康な状態でリスポーン設置をしておけばどんなに大怪我や病気にかかっても一度死ねば健康状態の体になれ、実質的に不老不死が実現できる。
それどころか、その過程で食料や武器の複製までできるとなると………
そう言えば設置可能数とかも能力チェックの画面にあったよな?もし、能力レベルが上がることによって設置可能数が増えるとするならば、リスポーン地点さえ色んな場所に設置しておけば死ぬことによってその場所場所に瞬間移動できるに等しいのでは?
「不老不死、複製、瞬間移動…《リスポーン》最強能力過ぎだ………だが、あの死ぬ瞬間の痛みと恐怖は意外とメンタルがやられそうだ─」
人生の苦として最後に訪れる死という苦しみを味わうなんて相当なことだ。
だが、その代償によってもたらされるチート能力に衝動を抑えられなかった。
「─リベンジだ!俺を殺したゴブリンを確実に仕留めてやる!逆に死ぬ心配がない分、気楽に行動できる!」
俺はポジティブ思考なのだ。
そしてリュックを下ろし、包丁片手に倉を飛びだしていた。
「おっと!倉の扉だけはしっかり閉めとかないとな!」
思わず倉を開けっ放しで出て行くところだった。危ない。
何せ、この倉が俺の生命線。もしここが魔物に占領されでもしたら俺はリスポーンした瞬間殺られるというループが起きてしまうからな。戸締まり重要!
ま、倉の中で、リスポーンするから施錠はできないけど…
もし、間違って施錠したり閉じ込められた日には…考えたくもない。
そんなことを考えつつ扉をしっかりと閉め、俺は一度殺された現場へと物陰に隠れながら慎重に向かった。
現場には俺を殺したゴブリンが弓と俺の包丁を持ってうろついていた。
だが、そこに俺の死体はなく俺が装備していたヘルメットや服だけが残されていた。
魔物が俺の服を脱がして死体をどこかへ運んだ?…いやそうだとしても血の跡すら残ってないのはおかしい…
とすると…考えられるのは、俺は死んでリスポーンをすると、死体は装備品を残して消滅する…ということか?
「まぁ、いい!今はゴブリンを殺すことだけ考えろ!油断さえしなければ俺がゴブリン程度に遅れをとることはない!…はず!」
そう、意を決して隠れていた茂みからゴブリンを越えた先の溝を目掛けて小石を弧を描くように投げた。
ドポンッ──
「ギギィ?!」
溝の水に落ちた石にゴブリンが気づいて振り返り……俺に背を向けた─
その瞬間、俺は足音を極力抑えながらゴブリンに駆け寄る─
間近までくるとゴブリンが俺に気づき振り返って弓を構えようとするも、もう遅い!
すでに急接近していた俺はゴブリンの腕を全力で蹴り飛ばし、ゴブリンの持っていた弓と包丁は勢いで横に投げ出された。
─ズシュッ!
そして、怯むゴブリンに隙を与えない包丁の一突きがゴブリンの心臓を深く貫いた。
「お返しだ─」
そう俺が言い放った後、ゴブリンは小石を落として消滅し、
同時にフェイスシールドや前掛けに浴びた返り血も蒸発するように消えていった。
「おっけ。やっぱり、不意討ちさえなければ俺がゴブリン程度に遅れをとることはないな!」
ゴブリンを改めて倒したことにより自信がついたのはいいことだ。
元々、俺はそれなりのスペックはあったのだ。
学生時代は短距離走、ハードル、幅飛び、高跳び分野で好成績を納めてたし、パルクールも得意だった。
工場勤務になってからも素早い移動や部品の取り付け等の作業を行ってきたので体力や瞬発力が衰えるこもなかったし、小手先の器用さ、瞬時の判断力、筋力も鍛えられていたのだ。
だが、今回、脚を射ぬかれていたとはいえ一度ゴブリンに殺された。これによって「魔物は怖い」「勝てない」と自信を失ったりPTSDに陥る可能性が充分にあったため、今回のリベンジにはとても重要な意味があった。
「それじゃ、他の魔物が寄ってくる前に隣の家に向かうか。─あっ、一応、ゴブリンが落とした小石も拾っておこう」
もしかしたら使い道があるかもしれないゴブリンの小石をポケットに入れ、隣の老夫婦の家へと向かった。
俺は家から畑を挟んで50mの所にある塀に囲まれたお隣の大きな家に到着した。
「嘘だろ……」
門は開いていた。
そして庭にはこの家のおばあちゃんがよく着ていた服がまるで体が消滅してしまったかのような状態で落ちていた。
もし、魔物、人、リスポーンとか関係なく死んだら皆等しく、服や装備品を残して肉体だけが消滅するのだとしたら……この残された服の意味することは─
「おばあちゃんが殺された……くそ!俺がもっと早く来ていれば……」
小さいころからお菓子をくれたり何かと面倒を見てくれた隣のおばあちゃんの死に一筋の涙が頬を流れた。
「…おじいちゃんは!」
おばあちゃんは残念だったがおじいちゃんだけでも生きていて欲しいと思いつつ家を見た。
家は縁側の窓が破られた形跡がある。
恐らく魔物が侵入したのだろう。
俺は恐る恐る、警戒を強めながら割れた縁側の窓から家に入る。この際土足とか気にしてられない。
家の中に入ると俺の家と同じ日本家屋のような畳と木造の室内が広がっており、魔物の姿はなかった。
ここのおじいちゃんは多趣味で色んな物が置いてある。
高そうな壺や掛け軸などの骨董品もあれば日本刀や弓、薙刀なんかも飾られている。
そして、俺は飾られていた刀を手に取った。
「少しの間かりるよ。おじいちゃん」
包丁なんかより刀のほうが強いからな。薙刀や弓は室内で使うのは難しいので刀にした。
そして、その刀を手に隣の部屋への襖を覗き込んだ。
「おじいちゃん!!」
そこには大量のデカイ蜘蛛の糸に張り巡らされた部屋と蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされたおじいちゃんの姿があった。
「お、おぉ…キラちゃんか…見ない間に随分と大きくなったな…」
おじいちゃんは意識が朦朧とした感じの目で俺を見た。
「こんな時に何言ってんだよ!魔物に捕まったのか?!今この糸ほどくから逃げるぞ!」
「わしゃ、もう無理じゃ…。囮になってくれたポチには悪いが…体の感覚がもうない……もうじき死ぬじゃろう…」
そう言えばこの家の愛犬ポチの姿を見てない。
おじいちゃんを守るために魔物を惹き付けて離れたのか…
「何言ってんだよ!…こんな糸ぐらい────え?!」
包丁を取り出しておじいちゃんに巻き付いた糸を切りはがすも、そこには皮膚がドロドロに溶けたおじいちゃんの体があった。
「言ったじゃろ……どのみち助からん…それよりキラちゃんだけでも逃げるんじゃ……わしの狩猟用の銃が二階の部屋に保管されとる……使うといい…」
そう言えばじいちゃん猟師の資格ももってたっけ。
昔、なんどせがんでも銃を触らせてくれなかったのに…
「わかった!取ってくる!それでおじいちゃんを魔物から守るから待っててくれ!」
そう言って俺は二階へと魔物に警戒しながら上がった。
「─最後にお前の顔が見れてよかった……」
おじいちゃんが小さく呟くもその声は届いていなかった。
正直、あんな体になったおじいちゃんが生き延びる可能性は低いと思う。
だが、この世界には不可能を可能にする"能力"というのが発現するようになったんだ。きっと、怪我やボロボロになった体を治す能力を持った人もいるはずだ!
じいちゃんが衰弱死する前にその能力者を見つけて連れてくればおじいちゃんも助かるはず!
そんな希望を抱きながらおじいちゃんの部屋にたどり着いた。
「あった!これだな!」
部屋にあったガラスケースの中にポンプアクション式の散弾銃とその弾薬ケースを見つけた。
「くそっ!鍵がかかってあかない!…しかたない!」
─ガシャーン!
俺は鞘を着けたままの刀でガラスケースを叩き割り散弾銃と弾薬ケースを手に取った。
初めて触ったが、じいちゃんが使っているのを見たことがあるのでだいたいの使い方はわかる。
「弾薬装填数は6発……うん、すでに入ってるみたいだな。刀は腰に下げて弾薬ケースはポケットに入れとこう」
そうして俺は散弾銃を構えながらおじいちゃんのいる部屋へと向かった。
「おじいちゃん!とってき──」
部屋に入ると、そこにはおじいちゃんはいなかった。
そこにあったのはおじいちゃんが先ほどまで着ていた服の残骸と、その横にいる柴犬ほどあろうかというぐらいデカイ蜘蛛だけだった。
「嘘だろ……おじいちゃんまで……よくも…!!くそ野郎!!!」
すぐさま蜘蛛に向けて散弾銃を発砲する。
─パァァーン!!
耳に響く音と銃の反動による肩の痛みが伝わった。
「─くそ!外したか!」
こんな至近距離だとは言え、おじいちゃんを亡くした悲しみや目の前の未知の魔物に対する恐怖で手元が震えていたのだ。
だが、すでに俺の中に一瞬あった恐怖は消え去り、怒りの感情へと変化していた。
大蜘蛛は発砲に一瞬警戒して距離をおくも、すぐに俺に向かって走り出し、鋭い牙と8本の足を向けて飛び込んできた
が、俺はすぐさま散弾銃のポンプをガシャンと引き、空の薬莢が飛ぶ中、銃をグッと構える
「しねっ!!」
─パァァン!!
俺へと飛び込んできていた大蜘蛛は俺が引き金を引くと同時に弾けとんだ。
…………………
「ごめん…じいちゃん…守れなかった。でも、敵はうった……俺行くよ。銃と刀使わせもらうな」
そうして俺はおじいちゃんの服に向かって別れを告げて家を出た。
外に出ると案の定、さっきの銃声に引き寄せられた数体の魔物が近くに寄ってきていた。
ゴブリン2体に黒い狼、鬼にオークそれと…大蜘蛛
「6匹か…いいぜ!相手になってやる!俺は今怒ってるんだ!」
おじいちゃんを殺された怒りを顕にして俺は魔物て対峙する。
真っ先に俺へと向かってくる黒狼─
が、直前まで引き付けて銃を発砲─絶命。
粘着性の糸を吹きかけてくる大蜘蛛─
が、とっさに銃のポンプを引きながら横に飛び前転で回避し発砲。大蜘蛛の頭を吹き飛ばす。が、頭を吹き飛ばされてなお動く大蜘蛛だが、動きが鈍くなってるのに変わりなく、すぐに胴体に駆け寄って勢いよく踏み潰す─絶命。
短剣を片手に両サイドから襲ってくる二体のゴブリン──
が、片方を左手で構えた銃が、もう片方を鞘から抜き出し右手で突き出した刀身が、ほぼ同時にヘッドショットと脳天突きを見舞い─絶命。
「やっぱり散弾銃は威力が高い!残るは2体だ!」
残されたのは筋肉質で角の生えた赤鬼と、ナタを持ち豚面で腹の出たオーク。どちらも2m近い巨漢だ。
「移動は遅いが明らかにパワータイプだ。接近は避けた方がいいな」
そう結論づけ、一旦距離を離しオークに銃を構える。
─パアァァァン!
「よし!命中!」
散弾した銃弾は見事にオークの腹に命中した。
だが、オークは腹から血を出して怯むも、皮下脂肪が厚いのか絶命には至らなかった。
「しぶとい!いや?やっぱり散弾銃は近距離じゃないと威力がないのか?……よし!」
俺は意を決して怯んでるオークを後回しにし、ドスドスと近づいてくる赤鬼にターゲットを変えて接近する。
赤鬼は接近する俺に大振りの拳で迎えうとうとするも、俺はすでに2~3m前で立ち止まり銃の照準を赤鬼の頭に定めていた。
はずすことはない!
「チェックメイトだ──」
そう確信して引き金に指をかけたのだが─
─カチ………
弾がでない!
「あっ!!リロードしてなかっ──がはっ!!」
とっさに後退しながらポケットに入れた弾薬ケースに手を伸ばすも、時既に遅し。そこまで迫っていた赤鬼の拳が俺を吹き飛ばしそのままコンクリートに激突して───俺は絶命した。
【能力レベルが上がりました】