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1,能力発現


日も暮れ、薄暗い郊外の田舎を2,3人の乗客を乗せて走るバスが一台


「あ~疲れた。ここ最近毎日フル残業だよな~土曜日も休日出勤だろうし…」


工場勤務の25歳男性が自宅帰りのバスの中、日々の仕事量の多さにうなだれていた。


「ま、その分、給料は期待できるな!仕事終わりのビールも格別だし!」


名前は伏見(ふしみ) 気楽(きら)、うなだれてるような態度をとるも意外とポジティブだ。


名前も気楽に生きて欲しいと願って今は亡き両親が名付けてくれた名前だ。




キキィー!─ドン!


突如、バスの急ブレーキに俺の体は慣性の法則的なやつで前方の椅子の背もたれに頭をぶつけた。


「いてて…急になんだ?─運転手さーん、どうかしました?」


運転手さんに座席に座ったまま呼びかけるも運転手はパニックを起こしてあわあわしているだけで返事がない。

仕方ないので運転席まで寄って声をかけた。


「やってしまいました!どうしょう!?」


気弱そうな中年の運転手が俺にすがりついてくる。


「落ち着いて下さい。だからどうしたんです?」


「こっ、こどもが突然飛び出てきてはねてしまいました!!」


「本当ですか!!早くドアを開けて下さい!!」


「はっはい!」


運転手がバスのドアを開けた瞬間に飛び出てバスの周辺を見渡した。


「………いない…?」


スマホのライトで照らしながらバスの下、前方、後方、横の茂みを見てもそれらしき子どもはいなかった。


「運転手さん、子どもなんていませんけど…本当に跳ねたんですか?」


「一瞬でしたが緑の服を着て変な被り物をした小学生位の身長の子を跳ね飛ばしたような気がしたんです…感触もはっきりとありました!」


「確かに、バスが凹んでますが…」


俺はバスの凹みを触って悩んでいると、バスから高齢のおばあさんが降りて来た。


「多分、猪か猿とでも見間違えたんじゃろう。ここらはたまに猪が出るからの、しぶとい猪ならはねられても逃げて立ち去るくらいよくあることじゃ」


「…そうですね。運転手さんの見間違えですよ!」


「いや~、人影だったような……─いや、気のせい?」


そうこうしていると今度はバスから女子高生がイライラした様子で降りてきた。


「ねぇ?まだ終わらないの?あたし、早く家に帰りたいんだけどさぁ~!」


「大変申し訳ございません。今出発します。─どうやら私の勘違いのようで…お騒がせしました」


そうして運転手は頭を下げ、降りた乗客はバスに乗り込んだ。

俺も再度辺りを見渡した後、バスに乗り込んだ。


そうして、バスは何事もなかったかのように走り出し、俺は実家の真横にあるバス停で降りて帰宅した。


実家は田舎にあるだけあって周りを田畑に囲まれた古民家。

まあ、少し自慢をすることがあるとすれば武家屋敷にあるような立派な倉があるぐらいだ。



俺は夕食の弁当と風呂を済ました。スマホの充電が切れかかってたので寝室でスマホの充電をし、その後座敷でパソコンでYouTubeを見ながらビールとおつまみで至福の時を過ごした後、二階の寝室で10時に眠りについた。



◇◇◇◇◇


─翌朝


「ふぁ~あ、よく寝た。今日も仕事だ~めんどくさいが頑張ろう!」


朝の5時にベッドから起き上がる。するとスマホのラインの通知数がヤバいことになってるのに気がついた。


「なんだこの量?!友達に同僚…職場のグループやら色々来てる」


とりあえず、急な生産調整とかで臨時休日になった可能性があるので最初に職場のグループを開く。


──────────

佐藤:みんな無事か?!生きてるよな?


山田:無事です!ですが班長と連絡が取れません!


佐々木:これって明日休みになりますよねー


田中:佐々木!お前バカか!緊急事態宣言が急遽発令されたの知らないのか?仕事どころじゃないだろ!


伊藤:これってヤバくないですか?


鈴木:親が…


……………………


─────────────


昨晩のうちに色々と重大なことがあった様子が伺えた。

が、昨晩、俺は通知音をオフにしてスマホを寝室で充電していたので気がつかなかった。


「緊急事態宣言?またウイルスのクラスターでも出て第何波でもあったのか?………ま、とりあえず聞いてみるか」


────────

伏見:何かあったんですか?皆慌てるようですが……

─────────────


ピロン♪


「あっ、すぐ返事来た」


──────────

佐藤:伏見おまえ、知らないのか?今すぐ音を抑えてテレビ見ろ!それか窓の外をこっそり覗け!

─────────────


「テレビ?」


俺は言われた通りテレビをつけた。


『……─に本時刻昨夜21時頃から世界各地でモンスターが出現し始め、人々が襲われる事態が発生しています。それに伴、急遽緊急事態宣言が発令せれています!住民の皆さんは外出を控え、玄関や窓にバリケードを張るなどしてモンスターに対抗してください。また、モンスターを殺すと小石を残して消滅することや人口の密集する都心部程、大量かつ強力なモンスターが出現している等の情報が寄せられております。もし避難される方は田舎、もしくは山奥に逃げるようにし─バリィン!モンスターが入って来たぞ!うわぁ!きゃぁ!─………ザーザー───』


最後、窓を突き破って入って来た大きな蜘蛛にニュースキャスターや番組スタッフが襲われたところで終わった。


「おい………今の何だよ。何のドッキリだ?!どのチャンネルもモンスターが現れたってことばかりだ………」


改めてラインを見てみるがどれも俺の安否や現状を聞くような内容だ。


「そうだ!窓の外!」


俺は恐る恐るカーテンの隙間から外を眺めた。


「マジかよ…いる………畑に赤鬼のようなモンスターとあの大蜘蛛…庭にいるのは小鬼?緑色だしゴブリンか!………くそマジで現実なのかよ!」


実際にこの目で見たことによって現実感がわいたが、かなりショックだ。

あんな赤鬼が襲って来てみろ、俺が例え運動ができるからって勝てるわけがない!


「立て籠ろう!急いで玄関と窓にバリケードを………いや、倉だ!倉に立て籠ろう!」


今からこの家のすべての窓の雨戸を閉めてバリケードを立てようとしたら少なからず音が出るし時間もかかる!それならこんな古民家に立て籠るより頑丈な倉に逃げ込んだ方がいい!

庭にいるゴブリンならなんとかなるだろう!


俺は静かに一階へと移動し、リュックに必要最低限のものを詰め込んだ。


「水に缶詰め、乾パン、カップ麺…ランタンもいるな………あっ、モンスターと対峙した時のために包丁も持って行こう!あと足りない分はまた後で取りにくればいいとして………装備も必要だな」


食料等を詰め込んだ後、俺は工場でいつも着ている服装へと着替えた。

フェイスシールドがついたヘルメット、切創に強いケプラ素材の腕巻き、ケプラ手袋を付けその上に手に馴染んだ革手袋、ケプラ前掛けを装備した。


鉄板が入った安全靴は蹴り攻撃でかなり怯ませられそうだが、重く長時間はいていると足が痛くなりそうなので機動性を重視してスニーカーにした。


「よし!行くぞ!倉まで駆け抜ける!」


俺は意を決して包丁を片手に玄関のドアを開けた。


「くそ、庭にいたゴブリンが倉の前で座りこんでる……」


まだゴブリンには気づかれていないものの、見つかって騒がれでもしたら畑にいる赤鬼や大蜘蛛が寄ってきてしまう。


「殺ろう………どうせ、人を襲うモンスターを手にかけて非難する人はいない!一瞬で片付けてやる!」


俺は玄関から空き缶を放り投げすぐさまドアを閉めた。


ゴブリンはそれに反応し、玄関前の空き缶に警戒しつつも興味を持って寄ってきた。


俺はその瞬間、横の窓から静かに外に出て、ゴブリンの背後を取る。


そして、ゴブリンのうなじに包丁で力いっぱい一突き!


─ズシュッ!


嫌な感触が手を伝い、ゴブリンは奇声を上げるこももなく絶命し、紫色の小石を残して消滅した。


「よし!!」


ゲームのようにスムーズに仕留めることができてついガッツポーズをとっていた


─その瞬間


【魔物の討伐しました。伏見気楽に能力が発現します】

能力リスポーンが発現。以後「能力チェック」と唱えると詳細を確認できます】


突如、脳内に合成音声のようなアナウンスが響きわたった。


「なんだ今の?!………まぁ、それより早く倉に入らないと!」


俺はすぐさま倉に向かい錠を開けて入り、ゴツい鉄の扉を閉めた。


倉の中は骨董品やら書物などが埃を被ってあるイメージがあるだろうが、この倉は違う。


もともと父が倉にあった物を売っ払ったり処分していたため空だった。だから、俺は高校の頃にDIY気分で倉を改造していたのだ。だから今では倉の内装はフローリングの床、洗面器あり、リフトつき、おしゃれな間接照明つきの、小さな別荘みたいになっているのだ。



「まだ、電気は使えるみたいだな。おっ、水も出る!」


電気と水道が使えることが確認できた。だが、これもいつまで続くかわからない。


もしモンスターの脅威がずっと続くとしたら、いずれは電線がやられるかもしれない。いや、それ以前に発電所等の施設が機能しなくなるだろう。


「あっ!ネットも使えなくなるかも知れないし、今のうちに情報を集めておこう!非難場所とかの情報もあるかもしれない!」


すぐさま、スマホを開き色々と調べた。


モンスターに襲われ人が殺される動画が普通にアップされている

東京を映したと思われる動画の中にはゴジラのような怪物や大量のモンスターが映しだされていた。


人口に比例してモンスターも多いらしいとニュースにあったが、あの動画の場所が地獄だとするとここは天国みたいにモンスターが少ない地域ってことになるな。田舎だから。


「となると下手に市街地に向かうべきじゃないな………ん?」


スマホをスクロールしているととあるSNSに目が行った。


『魔物の初討伐で能力が一つ発現するらしい!』

『魔物を倒して《浮遊》能力が発現しちゃった!』

『俺は数秒間皮膚が硬くなる能力だった!』

『皆、モンスターを倒してモンスターに対抗する力を発現させろ!じゃないと死ぬぞ!』

『能力チェックって唱えれば詳細が見れるよ!』



そんな内容と共に物を浮かしている動画や手から火を出してる動画が投稿されていた。



「嘘だろ………まさかそんなファンタジーなことが………」


そう思いつつも俺自身にも覚えがある。

ゴブリンを倒した瞬間頭にアナウンスが流れたことを─


「の、能力チェック……」


─シュイン!


俺の目の前に空中に浮いたホログラムウィンドウが現れた。


「マジかよ………」


──────────

能力:【リスポーン】Lv1

詳細:地面に触れ『リスポーン設置』と念じることにより死亡してもその地点で復活できる。

リスポーン地点の変更、更新

は再度リスポーン地点に触れる必要がある。

死亡(リスポーン)回数が一定に達するごとに能力レベルが上昇する。


設置可能数:1


──────────────


目の前に現れた能力詳細は驚愕ものだった。


「俺の能力は【リスポーン】………つまり死んでも生き返ることができる能力ってことか?」


つまり不死身?これが本当ならチートすぎることに間違いないのだが、おいそれと試せるものでもないな。これは死ぬことが前提条件だが、こんな不確かな物を信じて死んでみようと思うほどバカじゃない。


「ま、とりあえず設置くらいはしてみようか─」


俺は倉の中のフローリングに手を触れて唱えた


「『リスポーン設置』………おぉ!」


その瞬間、床に青白い魔方陣のような模様が現れた。


「本当に……設置できた…のか?非現実的なことが今目の前で起きたことに変わりないのか…これはもしかして本当に………」


そんなことを考えつつも、とりあえず一息着こうと、背負いっぱなしだったリュックを下ろし、横になった。



………………………………………

………………………………………

………………………………静かだ。




「………ちょっと、外出てみるか!」


冷静になって考えようとしたものの、次々と起こるファンタジーな現象に対して沸き起こる衝動を抑えきれなかった。さすがに、生き返れるかもしれないからといって易々と死ぬつもりはないが、生き返れる可能性がある分、気が楽だ。

もし、本当に生き返ることなく死んだとしても別にそれはそれでしょうがないことだ。

どうせ、独り身、悲しむ家族も彼女ももういないし、悔いも残らないだろう。

これはポジティブ思考?いやネガティブ思考か?


「じゃあ、とりあえず隣のおじいちゃんとおばあちゃんの安否でも確認しにいこうかな。リュックは重いし置いて行こう」


そうして俺は包丁を片手に倉の扉を開けて外へ出た。


「モンス─魔物だったか。魔物の気配は庭にないな……だが、赤鬼と大蜘蛛は畑の方をうろついてるな」


庭と畑の様子を確認し、魔物に気づかれないよう物陰や茂みに隠れながら50m先にある隣の民家に向かった。


その道中、側溝にスライムを発見。

その後も、色々見回してみたが遠目にゴブリンやオーク見えた。


「本当にファンタジー世界が現実になったみたいだ………」


と思いながらも歩を進めていたその時


─ビュン──ズバ!


脚に鋭い痛みが走った。


「いっつ!!!なんだ!??」


痛みのした脚を見ると矢が深く刺さっていた。


「ギギィー!ギッギッギー!」


そして3m程横の茂みで弓を持って嬉しそうに小踊りしているゴブリンの姿があった。


「くそ!体色が緑だから気がつかなかったか!」


脚に刺さった矢を痛み覚悟で抜き取りゴブリンと対峙する。


まずい状況だ。まさか、魔物が弓を使ってくるとは思わなかった。

脚の痛みで動きが鈍くなった状態で、矢を放つゴブリンに俺は勝てるのか?逃げれるか?


そうこう悩んでいると、ゴブリンは矢筒から次矢を弓に掛けた。


「いや!勝つんだ!殺らなければ殺られる!」


シュン─ズバ!


俺はゴブリンが弓矢を引き絞る前にゴブリンに駆け寄りながら包丁を投げつけ、見事に右横腹に命中させた。

が、脚の痛みであまり力を入れて投げられなかったために傷が浅い。

ゴブリンは一瞬怯むも弓を引き直し俺目掛けて矢を放つ。

が、狙いがぶれたのか俺のヘルメットをかすめただけに終わった。


「この距離なら次を射る余裕はないはず!」


そんな距離まで脚を引き摺りながらも接近し、俺はゴブリンに殴り掛かった。


───ブスッ!


胸に鋭い痛みと生暖かいようなゾワっとするような感覚が全身を走った。


見るとゴブリンは俺が投げつけた包丁を俺の心臓に突き立ていた。



「がはっ………」


吐血をしながら俺は地面へと倒れこむ。


意識が遠退くなか胸から大量の血が出て暖かく感じとれた。


「これが………死………か………」


時の流れがスローに感じる。

これが噂の死ぬ瞬間はゆっくり感じるというやつか…


そんなことを思いつつ迫る死に安らぎなどない死の恐怖が襲ってきた。


─ズサッ


同時にゴブリンは俺へと再度包丁を突き立て俺は死んだ。




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