8話 アブセンント
短め
全然想定通りの展開に進んでないので路線を戻したいです。
つけ髭にシルクハットを被ったリリアの隣で落ち着きなく自分達の出番を待つカイセは、しかし緊張に耐えきれず一度外に出たところであった。
「うぅ、緊張する…吐きそう…」
青い顔でふらふらと歩く。外には出番の終わった参加者たちがいた。滑った者もややウケであった者もいた。自分達がその明暗どちらに転ぶのか想像すると怖い。
しかし、大会が始まって分かったことがある。それはこの大会の聴講人は1人だけ、ということだ。護衛を引き連れてはいるが、この大会はつまりその一人、聞くところによると聖女と呼ばれている女、ただ一人の為に開かれたものらしい。
「しかも聖女クスリともしねぇ、護衛の人たちが気を使って笑ってくれるかどうかって感じだ」
笑わない聖女のために滑稽にボケ続ける地獄のような様相を呈しているこの大会、果たして優勝する参加者など出るのだろうか?
ちなみにこの街に来て初めて絡まれたあのチンピラ達も参加していたが、噛みまくり、滑りまくり、時間オーバーし、散々な仕上がりで今では真っ白になってしまっている。というのも聖女の視線に緊張したからであろうか?
外の風に当たって少し落ち着いてきたカイセはネタの流れを誦んじつつリリアの元へと戻っていく。ネタの中身としては軽快な掛け合いを中心とした、魔術を使った派手なツッコミで観客の心を掴む、というものである。
さぁ戦いを始めようか…!!