1話 気分を例えるならそれは日曜日の夜(働きたくないでござる)
はじめまして、普段はピクシブで非常に拙い絵を描いてますが最近4コマに挑戦しているので話作りも勉強したいと思い、投稿することにしました。
設定と大筋とラストの展開は決まっています。そこに至るまでを繋ぐのに時間がかかりそうです。
「たすけてくださぁーいぃぃぃ!」
そんな大声も虫の鳴き声や怪鳥の羽ばたき、木々の揺れる音に吸い込まれていく。
黒髪に少しだけ茶色がかった気だるげな眼をした疲れた雰囲気の青年は小さく嘆息する。
まる3日歩き続けてまだ目的の街に着かない、どう考えても遭難しているのだがその渦中にいる傍の少女は青年の溜息を全く聞いていない。
それどころか先の大声も聞こえていない様子で普段なら青年も食ってかかるところだが許容値を大幅に超えた疲労がその口を閉じさせる。
ふと、少女が顔を上げる。
青年がその視線の先を追うと一本のなんの変哲もない木の棒が落ちていた。
トテトテと擬音がつきそうな軽やかな足取りで木の棒を拾ってきた少女は棒をまっすぐに立たせてから手を離し、倒れた方向に歩きだした。
さすがに口を出さずにいられない。
「おい、リリア。自信満々に進んでいくが本当にそっちに街があるんだろうな?」
鬼気迫る表情で青年、カイセが問い詰めると先を行く白銀の髪を肩の付近で揺らす人形のように無表情な美しい少女、リリアが自信満々に言い返す。
「大丈夫、私の勘がこちらだと言っている。」
無表情なのに器用にも自信に満ち溢れた雰囲気を纏い、サムズアップなどもしてみせてくる。
それを見てカイセが頬を引きつらせ尋ねる。
「え?もしかして今までも勘で進んできたの?」
するとほぼノータイムで即答してくる。
「覚えてない。」
「てめぇ、ふざけんなぁぁぁ!」
カイセは両拳をリリアの側頭部に押し当てひねる。
「いたい」
「痛くしてんだよ!なに⁉︎この3日間お前どこに向かってたんだぁぁ⁉︎」
痛みで少し涙が滲んだ透き通った海のような碧眼でこちらを見上げながらリリアは抗議した。
「歩いていればいずれ街に着く。とりあえず手を離して…」
「どんな小さな世界を想定しての話してんだぁぁ!この世界はそこそこ広いってラインの奴も言ってただろ!」
ますますヒートアップしたカイセはまだまだお仕置きを辞める気はなかった。
疲れるだけだが一度爆発すると暴れずにはいられない。
「大体、なんでそんな軽々動けるんだ?こんなに小さい体で3日間も強行軍してるのに。」訝しげにリリアをみるとサッと視線を逸らされた。
「おい。」
「なに」
「お前、俺は汗水垂らして自分の足で歩いてるのに一人だけ魔術使って楽してない?」
「なんだかありきたりな歌詞のフレーズみたいね、あとそんなことはしていない。」
あくまでも認めないリリア。
カイセはリリアの足元を指差し、「虫が上っていってるぞ」と言った。
反応は劇的。
リリアは一瞬のうちに5メートルは飛び上がりその勢いで虫を振り落とした。
音もなく着地したリリアに尋ねる。
「で、誰が魔法使ってないって?」
またしても視線を逸らし一言。
「違う、これは気合いによるジャンプ力」
カイセは頭をはたくために手を広げて大きく振りかぶった。