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「だから!婦女子があられもない姿で床に寝るな!」
そう言って、半ば無理やり私の体を起こしたのは、端麗な顔付きをした銀髪の麗人。王国第三騎士団・団長のロイ・オールドフィードだった。
どうも。
聖女の召喚に不運にも巻き込まれた女・Aです。
私が今いる国のザビンツ王国は周辺諸国も含めて存続の危機にあります。
大陸の各地で魔法のもとになるエナジーの残りカスが濃くなりすぎ、瘴気となって手のつけられない魔物を生み出しているらしく、人への被害も日に日に酷くなっているみたいです。
これまでは、水、光魔法で瘴気を払っていたようですが、もうどうにもできない状態になり、人々は伝説に縋り、【聖】魔法が使える聖女を呼び出したそうです。
今から500年前の伝説にすがる人々も人々なら、うっかり呼び出されてしまう聖女様も聖女様だと思います。
それに巻き込まれた私は何なのか、誰か教えてください。
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その日、中島 絆は非常に疲れていた。
普段からサービス残業ばっかりの職場が繁忙期を迎え、終電で家に帰り、朝は6時には会社に出勤するような毎日を過ごしていた。
その日もやっとの思いで家に帰りついた絆は、玄関先で行き倒れるように通勤カバンを投げ捨て、倒れ込んでいた。
(ーーもう働きたくないなぁ)
そんなことを考えてウトウトしていたら、眩しい光が絆を包み込んだ。
何が起こったか分からないが、咄嗟に固くつぶった目を開けると、そこは自宅ではなかった。
月明かりに照らされた薄暗い部屋の肌触りのいいシーツが張られたベッドに半裸で眠る男性の上に覆いかぶさる状況で落ちていた。
眉間にシワを寄せているが、サラッと流れる髪にスっと通った鼻筋、顎から首、鎖骨にかけてはまるで彫刻のようだった。
(綺麗な人だなぁ〜……)
絆は、何故か悠長にそんな事を考えていると、男性がカッとを覚まし、目線が合った。
次の瞬間、絆と男性のポジションは入れ替わり、初めて死を覚悟するほどの殺気と絆の喉元に本物の鉄剣が突きつけられていた。
「誰だ!貴様は。
一体誰に手引きされた?」
前髪の間から射殺さんとするほどの鋭い眼光が向けられ、絆は全身から冷汗が吹き出し、喉がゴキュッと唾を飲み込んだ。
「わ…わ、私は…」
なんと答えるのが正解なのか分からない。
名前?名前を答えればいいの?と、でも目の前の彼がそんな答えを求めてないことだけはわかる。
絆の頭の中と目の前がぐるぐる回る。
見つからない答えを生死の狭間で考えなきゃいけないこの状況に明らかにパニックになっていた。
「大人しくしていろ」
答えが導き出せないままの、絆を男性はいとも容易くひっくり返し、うつ伏せにすると通勤用の上着を剥ぎ取り、上着を使って、後ろ手に拘束してしまう。
「来い!」
そう言って、絆を無理矢理ベッドから引きずり下ろすと腕を乱暴に引っ張る。
「ちょっと!痛っ」
腕の痛みを抗議してみたが、もちろんそんな物、無視される。
部屋のドアに向けて、男は淀みなく進む。
(なんで!?私が何をした?)
絆のありえない状況にただただ流されるのだった。