バッドエンド勇者
ジャスティンは確かに「殺した」と言った。
「どういうことなのですか? ジャスティンはそんなこと――」
「どうして、そう言い切れる?」
「だって、ジャスティンは勇者だから……ひっ」
ジャスティンはグッとロゼッタの胸ぐらを掴み引き寄せた。
何考えているんだ、ジャスティンは。そんなこと、あいつがするはずない。
「やめろ、ジャスティン!」
オレはジャスティンからロゼッタを引きはがした。ロゼッタは何が起こったか信じられないと言った様子で、掴まれた所を握りしめながらジャスティンを見つめていた。
「なあ、ブレイブ。お前は何で勇者なんだ?」
「……は? 何言って」
「答えろよ」
なんだこの感じ。どうして、魔王と対峙したときの感じを思い出すんだ。
「オレはこの世界が好きだから、大好きなこの世界を失いたくない自分のわがままで勇者になったんだ。だから、世界を救う勇者になったんだよ。……何で今さら」
「ハハハハハハハハハハ」
不気味に笑っている。本当にこれがジャスティンなのか。
「僕は勇者だったんだ。勇者は人を助けてこそなんだ。でも、僕は殺したんだ」
「おい、ジャスティン」
誰よりも勇者であることを誇りに思っていたのはジャスティンだ。“勇者だった”ってどういうことだ。そう言えば、チョコはどこに行ったんだ。
「あーあ。そっちに傾いたんですか」
「……傾いたってどういうことだよ」
いつの間にか横にプリンがいた。
「妖精たちの大ボスはアストライアー様と言って、世界のバランスを保っているお方です。そして、そのバランスを保つために妖精たちは勇者に付き従い、サポートしているんですよ。さて、ここで問題です。バランスとは何のバランスでしょうか?」
「は?」
「はい、時間切れ」
プリンはふわふわとジャスティンのまわりを飛んでいる。
「善悪のバランスです。善と悪を天秤にかけ、善に、より傾いた者を勇者と呼びます。しかし、勇者は人よりも善の比重が大きいため、悪に傾く時はこのように一瞬」
プリンはちらりとジャスティンを見る。
「分かりましたか? つまり、ジャスティンの善悪の天秤は善が重すぎてぷちっと切れちゃった様なものです。そして、片方が無くなれば、一気に傾く」
プリンが話す内容は聞き取れている。でも、分からない。
そうこうしているうちに、ジャスティンはケタケタと笑ったまま、どこかに行ってしまう。
「妖精の役目は勇者の天秤をみること。そして、それが傾いた時や世界の善悪のバランスが悪い時、ちょっとした働きかけをします。意外と仕事しているんですよ?」
遠くなるジャスティンの背中とプリンを交互に見る。
「じゃあ、ジャスティンは……」
「さっき言ったじゃないですか? やっぱりバカですね、勇者さんは」
プリンはまたふわふわと飛んで今度はオレの目の前でとまった。
「悪の方に傾いたんです。……ちょうど魔王も封印されましたしね。これで、バランスがとれそうですよぉ。アストライアー様の指示が来る前に何とかしたようですね、チョコは。……そう言えば、チョコは前回の主さんも“ああなって”しまったんですよ。なんか不吉なものでも持っていると思いますね、あれは。……って、聞いていますかー? おーい。勇者さーん?」
――この世界のどこかで、また、勇者が生まれる。
End.
此処まで読んでいただきありがとうございました。
作者の彼方と申します。
「バッドエンド勇者」ということで、終わりからの始まりを書きたかったのでこのようなお話になりました。
現在、別の長編を書いていますので、その雰囲気とは違う、全編ギャグ&コメディを目指したのですが、読んでいただいた通り、あんな感じに……。
書きたいことは書いたつもりですが、力不足な面もございます。
何か気になる事があれば、伝えていただきたいと思います。
ありがとうございました。
2017/10 かなたわたあめ




