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罪を償えという名の異世界転生  作者: ゆら
第一章
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1 そして地獄は始まった

ちくしょう!こいつ本当に刺しやがった!散々尽くしてやったのに!ちょっと別れ話切り出した程度でなんだってんだよ!


 俺の腹に深々と突き刺さった包丁は刃を上に向け、本気で殺す気だったことをうかがわせていた。滴り落ちる血液と、えぐるような痛みに耐えれなくなり、俺は前のめりに倒れこんでいった。


「ゆう君がわるいんだよ、でもちゃんと私も一緒に逝くからね。先に待ってて」


 そんな言葉が聞こえるとともに、首の後に衝撃を受け俺は意識を手放した。












 虚ろな意識の中、遠くから聞こえる声。段々はっきりと聞こえ出したその声で俺の意識は段々と覚醒していく。薄っすらと開いた眼は少し眩しいくらいの光量で刺激され、そのまままぶたを持ち上げるに至った。


 仰向けに寝転んでいたようで、かなり高い位置に白い天井があるのが見えていた。そこで最後の記憶を思い出し、その姿勢のままそーっと腹をまさぐってみたが痛みも包丁も何もないことに気付く。

 夢だったのだろうか、そんな疑問が消えないまま体を起こし周囲を確認してみた。


 特に何もない広めの部屋だとなにげに認識した時、視界に入り込む豪華そうな椅子に座る人影に気付き、体がびくっとなった。そこにその人影から俺に向け声が放たれた。


「おお、ヒモ野郎よ、死んでしまうとは何事じゃ!」


 な、なんだこいつは、言葉の意味の処理が間に合わず、椅子に座る人物を怪訝な顔でただ眺めてしまった。


日向裕二ヒナタユウジ、28歳、職業ヒモ、死因は刃物による刺殺、おめでとう。君は俺に選ばれた」


 何言ってんだこいつ、最初の言葉よりダイレクトに俺に伝わった言葉で不機嫌になった。そしてこいつ誰だ?というか俺のことなんで知ってんだ?ってよりも俺が死んだ?選ばれた?

 確かに刺された記憶はある。しかし、現状俺の体には刺し傷や痛み、着ている服にもなんの痕跡もない。


「そりゃそうさ、死んだ肉体はそこにはない。お前は死んで俺の前に、魂として呼び出されたんだから」


 不思議と、その言葉は俺の心にしみわたり、なぜか信じてしまった。


「そうだろうな、お前らの世界で言う神の言葉だ。信じてあたりまえだ」


 神の顔は認識できない。ただ薄っすらと光る男性がいるとしか認識できない。神からの言葉は俺を強く惹きつけた。そして俺は声を一切出していないのに、会話が成立してる事に疑問さえわかない。


「お前には天罰をくだす、内容は俺が作った別の世界で生活してもらう」


 天罰?それを受けないといけないほど俺は罪を犯したのか?しかも別の世界?疑問を投げかける前に目の前の神は言葉を続ける。


「今理解する必要はない。別世界に行くにあたり一定の常識、罪状、言語関係、ちょっとしたサポートはわかるようにしてやる。ただし、お前は苦しまねばならない。新たな世界でお前はとてつもない苦痛を味わう」


 そうか、俺は死してなお罰を受けるために別世界で生き返り、そこで生きていかなきゃいけない訳か。神からの言葉以上に内容が理解出来る。無理に罪を償うことは必要なく、ただそこで生き抜けばいい。俺の生きていた日本に比べるとかなりの差がある別世界で。


「逃げ出すことは許さぬ。しかし、生き抜けば生き抜くほどお前にとって苦痛は軽減されていくだろう。さ、そろそろお前の記憶にたいする追加作業は完了する。最後に、罰の一部を追加すればお前を送ってやる。精神干渉はこれで終わる。罪人番号Z5800985、励めよ」


 その言葉と同時に俺は意識を切断される。














 目覚めた俺はまず最初に神と言う存在に不満を募らせる。ちくしょう、何が精神干渉だ。あいつに目の前で文句を言うことさえできなかった。

 やつが神なのは確かだろう。あの部屋では大した疑問も浮かぶこと無く、すべての言葉を受け入れてしまった。

 そして、この世界がどういった環境かも理解でき、どんな罪状でこの世界に落とされたか、どんな罰を受けているのかも理解した。


 最悪だ、本当に最悪だ。確かに俺は世間一般からすれば女を食い物にした下衆な男なのだろう。ヒモと言うと世間一般には誇れるものではない。しかしそれは、価値観の相違であり、間違いなく成り立っている者たちも数多くいる。

 金を毟るために女をクスリ漬けにしたり、風俗に沈める奴らもいるだろう。搾り取れなくなれば後は知らぬと捨てる奴らも多いだろう。

 しかし俺は自分なりにヒモとしてのプライドを持ってヒモをしていた。彼女らの余裕のある範囲で金をもらい、その分精神的な支えとして様々なフォローをしていたのだから。


 金イコール女、そんなふうに見たことなど一度もない。しかし、金をもらっている以上そう捉えられてもしかたなのかもしれない。

 確かに、彼女達に面と向かって【ビジネス】とは言えない。そんな事を言えば精神面の支えとして成り立たない。

 彼女達には毎日心地よく仕事に行ってもらい、炊事洗濯掃除等、毎日でなくともしっかりこなし、状況次第じゃ夜のお供もしっかりこなす。

 多少なりとも俺に依存してもらう。全て理解したうえで関係を持つこともある。様々なバリエーションでしっかりフォロー。これが俺の心情であった。複数人同時進行になる為、はっきり言って自分の時間などほぼない。とことん尽くす精神がなければこんな事成り立たない。


 女に貢がせて、あぐらをかいてる奴らを見ると正直反吐が出る。俺とは違うヒモの男に泣かされてる女の相談にのり、対策を考え、時には俺が出張ってでも女達を救ったりもしてきた。殴られて数も両手じゃ足りない。


 ただし、結婚を持ちだした彼女等は別だ。結婚をチラつかせて金をむしれば結婚詐欺である。そこは俺の矜持に反するので、別れのタイミングになる。

 依存度が強い子たちも改善が見受けられなければ、その対象となる。極力俺が悪人になり、次へ進みやすい状態を作り出し、そしてサヨナラとする。


 語ろうと思えばまだまだ語れるが、それだけプライドをもってやっていたんだ。例え理解が得難いとしてもだ!

 しかし、最後は読み誤った。俺を刺した女はあまりにも依存度が高く、束縛が強かった。そのため少し距離を置こうと提案した。俺はそこからの話し合いで彼女が納得できる妥協点を探そうとしたのだ。が、彼女の動きは機敏だった。

 じゃあお茶飲みながら話そうって、キッチンに消えた彼女は包丁を手にすぐさま引き返してきたのだ。ありゃ無理だわ。ちょっと手伝っての声に立ち上がった瞬間の一撃。


 今思えば、あれって神に操られてたんじゃね?って感じ。


 等と考え憤りつつも、俺は自身の体を確認し、あまりにものショックでその場に崩れ落ちた。この世界に落とされると言う罰以外、身体的な罰にである。神により脳内に入れ込まれた情報により、分かってはいた。分かってはいたが。


 ここはボロい木造の部屋である。安っぽい机と椅子、簡易的なベッド。飲水ようの瓶やボロい炊事場もある。そんな部屋に似つかわしくない姿見がおいてあり、その前でおれはショックを隠せなく崩れ落ちたのだ。




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