〜始まり〜
店主「そっちに逃げたぞ!」
店員「待ちやがれ食い逃げ女!」
???「はぁ、はぁ.....」
迷路のように入り組んだ路地を走り抜け、少女は「隠れ家」にたどり着いた。
???「た、ただいま!」
???「ナツ、大丈夫だった!?」
ナツ「見つかったけどここまでは来ないと思う....」
小柄で黄色い髪の女の子。彼女はグラリアで名の知れた食い逃げの常習犯だった。普段はスラム街の小さな家に仲間とともに暮らしている。
ナツ「はい、いずみの分のパンだよ」
いずみ「ありがと。」
こうして食い逃げでもしなければ、彼女達は生きても行けないのだ。この世界は、貧困層と富裕層の差が激しい。故に、争いも絶えないのだ。
???「ただいま。」
ナツ「あ、麗子さんおかえり!」
麗子「ナツ、また食い逃げしたのね。町中の人間が血相変えてあなたのこと探してたわよ。」
ナツ「えへへ....」
頭を掻きながらナツは俯いた。麗子とはもう食い逃げはしないと約束していたのだ。
麗子「....................まぁ、仕方ないわよね。」
ナツ「ゴメンなさい....」
頭を下げるナツを抱きしめ、麗子は台所に向かった。
麗子「まどかは、まだ帰って無いのね?」
いずみ「後ろ...」
麗子「えっ?」
振り向くと、そこには腰まで伸びるロングヘアが特徴の少女が立っていた。
まどか「おかえり麗子さん!」
麗子「し、心臓に悪いわね....」
まどか「みんな帰ってきたよね!」
ナツ「ばんごはんにしよー!」
まどか「じゃあ早速作ろっか!」
こうして、いつも通りの時間が過ぎていく。しかし、これは同時にすべての始まりを意味していた........
―プロミネンス本部―
イアリ「森岡様。またしても食い逃げが発生しました。」
森岡「............このままでは、貧困層と富裕層の均衡を崩しかねないな....」
龍座「アニキ、どうする?」
森岡は立ち上がり、外を見渡した。その目は、どこか悲しそうに見える。
森岡「那由多と佳那を送り込め。貧困層のはびこるスラム街に、徹底的に制裁を下すのだ。」
イアリ「御意。」
イアリは消え、すぐに行動に移った。外を見続ける森岡に、龍座が歩み寄る。
龍座「アニキ...アンタは本当はスラム街を.....」
森岡「龍座。」
龍座「........................っ、分かった....」
龍座は辛辣な面持ちで立ち去った。森岡はそれを悲しそうな表情でそれを見送った。そして、また外を見る....
森岡「先代の成しえなかった悲願...俺が成就させる!」
―戦いの火蓋が、切って落とされる―