エピローグ……戯れは続く
「きゃはははははははははははははははははははははははははははははははは!」
無邪気な少女のような、けれども媚態を含ませたような甲高い笑い声が闇に響く。
「きゃはははははははは! ああ、楽しいなあ……楽しいなあ! 愉快痛快奇奇怪怪! 最高! 本当に最高に最高すぎるよ君たちは! 私という始まりも終わりもない存在にここまでの楽しみを与えてくれる! 素っ晴らしい! ありがとう、愛してる! 愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛、アイッラブッユウウウウウウウウウウウウウウ」
目を爛々と輝かせ、口からは哄笑と賛辞の言葉を永遠に紡いでいく。
歓喜の感情の爆発とでも表現すべきその姿は、普通の感性を持った人間が見れば恐怖を覚えるようなものだっただろう。
理解不能、意味不明、支離滅裂、混沌の中心。
まったくもって、この世界やあの世界、どの世界のルールにも属していないような存在であるところの、神様的な存在は狂喜していた。
「たったの五十という単位の人間がいるだけで、私のつくった世界はてんやわんやの大騒ぎでもう無茶苦茶だ! 本来なら生きている人間が死に、死ぬはずの奴が生き延びる! 希望と絶望がお手てをつないでワルツを踊る! 地上も地底も死への恐怖と生への渇望に足掻いて、もがいて、のたうち回る! レディイイイイス、アーンド、ジェントルメエエエエエエエエエン! ニートも社畜もガキも老人も、人間も亜人も人外も! 皆皆踊れ踊れ! 生きて生きて死ね死ね死ね! きゃはははははははははははははははははははは」
再び、楽しくて楽しくてたまらないといった風な甲高い笑い声を上げる。
その笑い声はずっと続く。
一分。
……十分。
…………三十分。
………………一時間ほどを過ぎたころからは、喉がつぶれたのか、どこかの筋肉がつったのか、笑い声が止まって、体躯中が緊張し、ビクビクと常に痙攣しながら、声にもならず、笑い続けていた。
痙攣が収まりだし、乱れた呼吸のペースが久しく戻るのにさらにもう一時間を要した。
「~~~~――……か……カヒュ……カヒュ……ひひひケホっ……けひひひひ! ああ、もう苦しい……楽しい……えくすたしぃ……くふふ、ほっぺとお腹の筋肉が痛すぎる……、ああ、涙と鼻水と涎が気持ち悪い……うぇ、粗相もしてる……あ、呼吸が出来なかったからか……」
未だ壊れたように笑いながらも、大分落ち着いたようで、顔にべったりとついた己の分泌液を拭うこともなく、ただただ満足感に浸っている。
神様的な存在は、淫靡で蕩けた、妖しげな表情で闇を見つめる。
「ああ、やっぱり、この世界を作ってよかった。あの五十人を呼んできて良かった……何人か根性無しもいるし、早々にゲームオーバーした奴もいるけど、まあ、そういうこともあるだろう……逆に面白いから良いや、くふふ……ああ可笑しい」
神様的な存在は飛ばした五十人の人間のことを思い返す。
それぞれの、今までの人生背景などには全く興味がない。存在が興味を示すのは、彼らが一体これから何を成すのか、また何を成せずに死にゆくか、だ。
そして、それら全ての現象の影響によって、自分のつくった世界をどの様に引っ掻き回してくれるのか。
前の世界での全てをはく奪され。この世界で彼らに与えられた僅かなものを使って、彼らはどうやって足掻いてくれるのか。存在が知る予定調和を、どれだけ狂わしてくれるだろうか。
「ああ、素晴らしき哉、面白き哉この世界……私が『神ごとき万能の力を捨てて』まで手に入れただけのことはあるなあ……きゃはは! ……期待してるよ五十の人間もどきと、世界に群がる私の子達よ――全力で、全力で、全力で遊んで、私をもっと……楽しませてね」
甘ったれた声は、闇の中へと溶けていった。
これにて第一章は終了です。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。
次話より第二章『復讐猛炎ゲームスタート』が始まります。




