帰還そして再会
ユリカはずっと海を見つめていた。桃太郎は無事なのか。『氷の道は壊れてしまったわ。あの疲れた体で、ここまで泳いで来れるのかしら。それとも爆発でやられてしまったのでわ?』ユリカは海の向こうに見える黒煙を上げている鬼ヶ島を見ながら不安げに思った。
ユリカの後方では、ペルシカ星からやってきた宇宙船が浮かび、負傷者の治療に当たっている。また、捕らわれていたペルシカ人や地球人の代表とともに、今後の対応を話し合っている者もいた。
「地球人に、この星を任せても良いと思うか?」と平和維持軍総司令官が尋ねていた。
「大丈夫でしょう。地球人は良心と邪心という相反する心を持っている哀れな存在だ。しばしば邪心によって悲惨な事件や戦争、それに環境破壊なども引き起こしてしまいます。しかし、地球人の心の奥底では良心に従いたいと思っています。それをどうやって引き出し、邪心を克服できるかが彼らの課題です。我々はそれをサポートしたいんです。後は人間の責任分担だ。地球を生かすも殺すも彼ら次第だ。我々は彼らの良心を信じようと思っています。それに良心基準の高い地球人は、我々も見習いたくなるほどに立派なんです」とサイモン博士は熱弁をふるった。
「博士がそう言うなら、その言葉を信じましょう」
そんな会話が交わされていたが、今のユリカは桃太郎の事で頭が一杯であった。
「桃太郎さん、私を裏切らないでね。無事に戻るのよ」、と囁いた。そしてその声は祈りのようでもあった。
ユリカの目からひとしずく涙が流れたとき、海の向こうの方で、何者かが動いたように思った。じっと目を懲らして見ていると、やがてそれは二つの人影となった。そしてその影は、こちらに向かって手を振っているのである。それは間違いなく桃太郎とカーマンの姿であった。
その姿を見ながら『なぜ、ネビロン人のカーマンと一緒なの?』とユリカは疑問に思った。
しかし、二人がお互いに助け合うようにして、こちらに歩いてくるのを見て、カーマンは味方になったのだと思った。『これも、桃太郎の不思議な魅力のせいね』と思い微笑んだ。
ユリカは両手を上げて、「桃太郎!無事だったのね、桃太郎!」と大声で叫んだ。そして、満面の笑みを浮かべながら桃太郎の方へ向かって走り出していた。
「桃太郎、本当に無事で良かったわ」
「ああユリカ、俺は嘘はつかないだろう」
「もう、本当に心配かけるんだから。生きた心地がしなかったんだからね」、そう言ってにっこりと笑った。
「ユリカの作ったクッキーをもう一度食べるまでは死んでも死にきれない」と悪戯っぽく言ったら、二人は目を合わせて大笑いした。
「すまないが、私にもクッキーをくれないかな」と二人の様子を見ていたカーマンが言うと、更に大爆笑となった。
「もう、クッキーなんて食べたくないと思うぐらい沢山作ってあげるからね。覚悟しなさい」
朝の爽やかな光の中で、三人の姿はとても平和で美しいものだった。
地球の平和を祈りつつ!
長い間、ありがとうございました。
無事終了する事が出来ました。
今度は『パラレルワールドの謎』が始まります。
そちらの方も読んで頂ければありがたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。