再び通信設備エリアでの攻防
ここは、通信設備エリアである。突然バチバチという放電音がすると、桃太郎、マイソン、ユリカそして、サイモンが現れた。
そこにいた、数人のネビロン人の兵士が不意の出来事に驚愕した。
その兵士に、桃太郎が飛び掛かり正拳突きや、回し蹴りで、一瞬の内に気絶させてしまった。
一方、司令室のゾーンの元に、桃太郎達が通信設備エリアへ浸入したことが伝えられた。
「どうやって地下牢から脱出したんだ。脱出不可能な筈だが」
「閣下、どうやらサイモンが手助けしたようです」
「サイモンだと、あいつ何か隠していたな! とにかく、ペルシカへの通信をさせてはならんぞ」
「分かってます。兵士を差し向けました」
通信設備エリアでは、必死にマイソンが操作している。
そこへ、周囲からおびただしい数のネビロン兵がレーザー銃を持って迫ってきた。
「まあ大変。もう指輪が無いからバリアを張る事が出来ないわ!」と、ユリカ。
包囲を完了したネビロン兵が、一斉にレーザーを放射した。
「ああ、もうおしまいだわ!」
ところが、レーザーが途中で跳ね返され、更に兵士達も吹き飛ばされていく。
ユリカが、横を見ると桃太郎が、間一髪のところで、気功を放っていたのだ。
「桃太郎さん、ありがとう」
しかし、ネビロン兵は次々に新手がやってくる。
「これでは、キリがないぞ」、汗を噴き出しながら桃太郎が叫ぶ。
「お父さん、まだなの!」
「もう少しだ。何とか持ちこたえてくれ!」
「ようし、何回でもやってやるぞ」と、必死の形相の桃太郎。
それを見て、サイモンが冷静に言った。
「桃太郎さん、ここは私に任せて下さい」
「サイモン、何をするんだ?」
「まあ、見ていて下さいよ」
サイモンは、例の小さな転送装置を取り出して何やら操作している。
すると、彼らの周りにバチバチという、円形の放電線ができた。
同時に、周囲からレーザーが発射された。
桃太郎達の周囲で閃光がほとばしる。
その、光の渦が収まった時、桃太郎達はかすり傷一つ負わず、平然としている姿が確認された。
兵士達は、何が起きたのか分からず何度もレーザーを発射する。
しかし、結果は同じである。
次に、今度はファルコンが、猛スピードで突っ込んで行った。
しかし、そのファルコンも途中で何処かへ消え去った。
サイモンは、ニヤニヤしている。
「サイモンさん、どうなっているの?」と、ユリカが聞いた。
「別の場所へ転送させたのさ。今ごろファルコンは、海の上にいるよ」
「まあ、凄いわ!」
「やるじゃあないか、サイモン!」と、桃太郎も笑う。
その時、マイソンが汗を拭きながら叫んだ。
「良し何とか繋がったぞ!」
「お父さん、やったわね。ペルシカ星から平和維持軍が来てくれるのね」、ユリカの声も弾んでいる。
「ワープ航法を使って来るから、準備の時間を入れても三十分もあればこちらに到着するはずだ」
その時、ゾーン司令官の声が基地内に響いた。
「ネビロン人諸君。我々はこの地球にネビロン人のための理想郷を作るはずであった。しかし、残念ながら、その目論見は失敗に終わった。今から、この地球を脱出する。十五分以内に宇宙船に乗り込むように」
ゾーン司令官は、ついに敗北を認めた。そして、ペルシカ星から平和維持軍が来たら脱出不可能になることも良く承知していたのである。
すると、周りにいた兵士達もぞろぞろと、立ち去って行った。
「桃太郎、私はゾーンの元へ行くよ」サイモンが、決意を込めて言った。
「どうしてだ。ゾーンの所へ行って何になる!」と、桃太郎は心配しながら言った。
「ゾーンは、私を大切にしてくれた。ゾーンの暴走を止めるのは私にしか出来ないよ」
「本当に行くのか?」
「そうだ、止めても無駄だよ」
「分かった。だが十分注意してくれ」
「桃太郎、お前とはまた宇宙の何処かで会いたいもんだな。さあ、皆さんも元気で!」
サイモンは、爽やかな笑顔を残して走り去って行った。
そこへ、何処に隠れていたのか、サスケを先頭にサルや、犬達が出てきた。
「おう、サスケ、無事だったのか」
「当たり前だ、簡単にはくたばらんよ」