特殊実験室にて
彦一は、皆を引き連れて、氷の橋に向かって急いでいた。
ところが、突然天井から大きな音がしたかと思ったら、厚さ10センチはあるだろうガラスの板が四方から降りてきて捕虜たちは閉じ込められてしまったのだ。
彦一だけは、その部屋の外側にいた。
「彦一さん、これはいったいどういう事だ」
「ここから何とか出してくれ」
動揺している捕虜たちが、彦一に向かって懇願した。
彦一は、途方に暮れていた。
そこにゾーンの映像が現れた。
「彦一、よくやった」
「ゾーン、俺の家族は大丈夫だろうな。さあもう良いだろう。家族を解放するんだ」
「心配するな。だがこの混乱が収拾出来るまでもう少し待つんだ」
そう言うとゾーンは消えた。
このやり取りを聞いていた捕虜たちが驚いた。
「彦一さん、どういう事だ。俺達を騙したのか?」
彦一は、泣き出しそうな顔をして、その場に膝まづいた。
「す、すまん。俺の家族が捕らわれ、言うことを聞かなければ殺すと脅されたんだ」、彦一は涙を流しながら謝った。
捕虜たちは、彦一の行動に腹がたった。
「謝られても困る。とにかくここから出してくれ」
「俺達をどうするつもりなんだ!」
「彦一、お前と言う奴は何を考えているんだ」
彦一は、何も言えずに涙を流すばかりである。
すると、ユリカの母が皆を慰めるように語った。
「さあ皆さん、落ち着くんです。彦一さんの心の痛みが分かりませんか? 彦一さんの立場も考えて見て下さい」
「しかし、彦一は俺達の信頼を裏切ったんだ。怒りが収まらん」
「あなたの言う事も分からないではないわ。でも今は仲間割れが一番危険な事よ。お互いに智恵を出しあって協力しなければだめよ」