鬼ヶ島奇襲攻撃
桃太郎の混成部隊は静かに鬼ヶ島に上陸した。
ディアボロスによる邪心増幅電波はこの辺りでは最高の強度になっている。
だが彼等には何の影響も無かった。
侵入口は空気孔Aと空気孔B、そして潜水艇の出入り口とした。
空気孔Aからは犬のムサシが率いる部隊、空気孔Bからは猿のサスケが率いる部隊とユリカたちである。また熊のダイモンもそこから入る予定だ。この部隊は捕虜の解放と通信設備を目指す。桃太郎は単身、潜水艇の出入り口から侵入しディアボロスの破壊を目指した。
さて、皆が侵入する前に、まず飛雄が基地内に入りセキュリティシステムに細工を施してある。空気孔A部分の防犯装置は生かしておき、その他の部分は作動しないようにしておいた。
そして、空気孔Aから犬の部隊が侵入した時の防犯ベルを合図に、猿の部隊、そして桃太郎が侵入を開始するという手はずである。
「ユリカ、油断するんじゃないぞ」
「桃太郎さんこそ、一人で大丈夫なの」
「俺の事は心配しなくて良い。作戦が成功したら、またクッキーでも焼いてくれ」
「そうね、楽しみにしてるわ」
「それじゃ、ユリカ、サスケ、ムサシ、ダイモン頼んだぞ。飛雄はユリカを絶対に守ってくれ」
こうして、犬の部隊、猿の部隊がそれぞれの侵入口へ向かったのを見届けた後、桃太郎は例のマスクをつけて海に潜っていった。
こうして暫く海の中を移動していると、「桃太郎、何処へ行く!」と誰かが声を掛けてきた。声のする方に顔を向けると、サメのシーザーがいた。
「おお、シーザーじゃないか。ちょうど良かった。背中に乗せてくれ」
「おいおい、タクシーじゃ無いんだぜ。いったい何処へ行くんだ?」
「ちょうど島の裏側にある潜水艇の出入り口の所だ」
「そういう事か。いよいよやる気だな。しかし、あいつらを甘く見るんじゃないぞ」
「分かっている。でも手遅れにならん内にやらなきゃならない」
「そうだな、今やらなきゃ地球はネビロン人に支配されちまう。奴らどうも気に食わん存在だ!」
そうやって、しゃべっている内に目的地までやってきた。
「シーザー、あそこの物陰に隠れてくれ。もうじき犬の部隊が突入する。すると侵入者を検知して非常ベルが鳴る。そうなれば近くにいる潜水艇にも連絡が入る。俺はその戻ってきた潜水艇と一緒に侵入するという分けさ」
「なるほど、考えたな」
一方、空気孔Aに向かった犬の部隊は準備を整えて今や遅しと、その時を待っていた。
そこへユリカの命令を受けた飛雄二号が飛んできた。
「ムサシ、時間が来た。この空気孔の特殊フィルターを焼き切るぞ」、そう言うなり飛雄は目からレーザー光線を照射し、あっという間に焼ききった。次の瞬間、基地全体に非常ベルが鳴り響いた。
「さあ、突入だ!」、ムサシの号令と同時に数十匹の犬がワンワンと吠えながらダクトから基地内の通路になだれ込んだ。
そして、その非常ベルに驚いて、ネビロン人の兵士たちも、続々とそこへ集まってきた。
「なんだ、どうなっているんだ。この数十匹もいる犬の大群は」
暴れまわる犬と、それを捕まえようとする兵士たちで、その場は大混乱に陥った。犬たちは噛み付けるものなら何でも噛み付いた。
兵士たちは電子銃を打つが、すばしっこい犬に当てるのは至難の技であった。
さて、けたたましい非常ベルの鳴り響く中、ユリカと猿の部隊は空気孔Bからの侵入を開始した。計画通り、こちらから侵入しても、防犯システムは作動しなかった。更に犬の部隊のかく乱により、この付近には兵士たちの姿をほとんど見ることが無かった。静かにダクトから通路へ降り、まずは捕虜の居場所を目指した。途中何人かの兵士と遭遇したが、猿たちの連係プレーによる引っ掻き攻撃と、ダイモンの一撃で気絶させた。
一方サメのシーザーとともに潜水艇の出入り口付近で隠れていた桃太郎もまた非常ベルの音を聞いていた。あとは戻ってくる潜水艇を待つだけである。
「桃太郎、潜水艇の近づいてくる気配がするぞ」
「そうか、いよいよ来るか!」
そうこうしていると、小型潜水艇の姿が目で確認できる所まで近づいて来ていた。
「気をつけろ」
「ああ分かってる。シーザーまた会おう」
「用があったら、いつでも呼んでくれ」
桃太郎は感謝しつつ、不敵な笑顔を浮かべ、Vサインをした。
そして、潜水艇のクルーに見つからないように、その側面に特殊吸盤を使って貼りついた。
この潜水艇は速度をゆるめながら、左から三つ目の入り口に向かっていた。
そして、潜水艇が近づくと、入り口が開き、そこへ吸い込まれるように入った。潜水艇が入りきると入り口が閉じられ、続いて海水が排出され始めた。
少し経って、海水が排出されたのを確認すると、潜水艇のハッチが開いて多くの兵士たちが急いで出て行った。
「急げ、何者かが空気孔Aから侵入したらしい」
「くそ、今まで何度も地球人が攻撃してきたが、基地内に入り込まれるような事はなかったが」
「ディアボロスが効かなかったのか?」
などとしゃべりながら、その現場へ向かっていった。
桃太郎は彼らの会話を聞きながら、ほくそ笑んだ。『ふふふ、大分慌てているようだな』。
その後、周囲に人がいなくなったのを確認しつつ次の行動へ移った。
潜水艇のドッグから出て通路に出た。その瞬間、後ろから「動くな、お前は誰だ」と叫ぶ男がいた。それはレーザー銃を構えたネビロン人であった。
桃太郎は振り向きざま、相手の腹部に一撃を与え、失神させた。いつもの通り、目にも止まらぬはやわざである。
更に通路を走っていくと、二、三人の兵士たちがレーザー銃を打ってきた。桃太郎は機敏に避けながら手裏剣を飛ばした。手裏剣は正確に兵士を捕らえた。その手裏剣には強力な眠り薬が塗ってあり、直ぐに意識を朦朧とさせた。
ディアボロスの設置されている場所に近づくにつれて、そこを守る兵士たちも増えていった。
だが、彼らは桃太郎の敵ではなかった。次々に手裏剣の餌食にされてしまったのだ。
そして、いよいよディアボロスの設置されている部屋のドアの前までたどり着いた。