いざ出陣
翌日、桃太郎たちは、はるかに鬼ヶ島を臨む海岸まで来ていた。夕闇迫る海を見ながら、猿のボスサスケが心配顔をしていた。
「さて、これだけの者たちを、どうやって鬼ヶ島まで連れて行くつもりなんだ。辺りを見回しても船などは無いようだが?」
「はっはっは、サスケ、あれを見てみろ!」桃太郎が指差した。その指の先にはユリカとともに何とも奇妙なマシーンが海に浮かぶ鬼ヶ島に向けて置いてあった。それはユリカの父が鬼ヶ島進攻の時のために用意した特別なマシーンである。
桃太郎は自信満々に言い放った。
「このマシーンさえあれば、みんな一緒に鬼ヶ島まで行くことが出来る。だがネビロン人に気付かれないように、もう少し暗くなるのを待とう。それまでは皆、休んでいてくれ」
サスケはいぶかしく思ったが、ここは桃太郎を信じるしかなかった。
「桃太郎さん、こっちはいつでも準備オーケーよ」とユリカは爽やかな声で桃太郎に告げた。ユリカは闇夜の出陣に合わせて、黒い戦闘服に身を包んでいた。
やがて太陽が完全に沈み、代わって満月がせりあがってきた。いよいよ出陣の時が近づいた。
「ユリカ、マシーンを起動してくれ」
「分かったわ」、月明かりに照らされたユリカのシルエットが機敏に動いた。やがてマシーンのウィーン、ウィーンという音が響いてきた。皆、固唾を呑んでそのマシーンを見つめた。
だが、見ている限り何の変化もないように見える。暫く経ってからサスケが
「いったい何をしてるんだ。失敗なのか、桃太郎?」と叫んだ。
「まあまあ、そう慌てるな」と桃太郎は平然と答えた。
やがてユリカが「もう大丈夫よ。完了したわ」ときりりとした声で言い放った。
「良くやった、ユリカ」。桃太郎はそう言いながら、海の方へ走って行った。
皆は分けが分からず、桃太郎を目で追った。暫くすると、皆からどよめきの声が沸きあがった。
「何が起きたんだ」
「う、海の上に立ってるぞ」
「どういう事だ。信じられん」
皆は驚きの声を上げながら、恐る恐る桃太郎のほうへ近づいて行った。
「おい、海が凍ってるぞ」
「なんて事だ」
なんと、ここから鬼ヶ島まで氷の道が出来ていたのだ。
皆、一瞬度肝を抜かれ静まり返ったが、やがて大きな喚声が夜空に響いた。
桃太郎は海の上から叫んだ。
「さあ出陣だ、行くぞ」
その号令一過、皆は粛々と海に向かって歩いて行った。
キジ型ロボット飛雄一号、二号とユリカは桃太郎の隣に、犬の群れの先頭にはムサシが、猿の群れの先頭にはサスケがいた。少し遅れて、熊のダイモンの姿もあった。
一方のネビロン人は、最も恐れている桃太郎は、既に死んでいるものと思っていた。更にまさか人間ではない動物の混成部隊が襲い掛かってくるとは夢にも思っていなかったのである。