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アジトからの脱出

 桃太郎は頑丈な手錠を掛けられたまま、ある部屋に閉じ込められた。カーマンはドア越しに、「暫くはこの部屋にいるんだ。一時間程したら小型潜水艇がやって来る。それに乗って鬼ヶ島まで連行する」

「そうかカーマン、それじゃあ暫くは休ませてもらうよ」桃太郎も、余裕綽々の表情で応えた。

「鬼ヶ島もそれほど悪いところじゃあない。まあ、楽しみにしておくんだな!」と、カーマン。

 そして、次に二人のドアの見張り番に向かって、「桃太郎の事だ、何をするか分からない。十分注意するんだ」と厳しく言いつけた。

 この部屋は特殊合金で出来ていて、とても頑丈な作りになっている。さすがの桃太郎も、この部屋から力ずくで出ようとしても無理なことは承知していた。

 その為、二人のドア番も“注意しろ”と言われてはいたが、ほとんど心配はしていなかった。それで二人の兵士はドアを背にして、たわいも無い話をしていた。ただ時々ドアにある小さな窓から、桃太郎を確認する程度であった。

 ところが三度目に確認したとき、桃太郎の姿が忽然と消えている事に気がついた。

「おい、桃太郎がいないぞ」、二人はビックリしてお互いの顔を見た。

「そんな馬鹿な。ドアを開けて確認してみろ」、二人は慌ててドアを開け確認した。 しかし何処にもいない。気が動転し生きた心地もしなかった。その時二人の頭上から突然声がしてきた。

「俺はここだよ」、桃太郎は特殊な吸盤を使って天井に張り付いていたのである。

 二人が天井を見上げ、桃太郎を確認した直後、再び彼らの視界から消えた。

 桃太郎は目にも止まらない素早さで飛び降り、二人の兵士の腹を打撃し気絶させた。二人は折り重なるようにしてその場に倒れこんでしまったのである。

 桃太郎の動きがあまりにも早く、攻撃してきたことさえ彼らには分からなかった。

 桃太郎は、倒れた兵士から部屋の鍵を奪い施錠し二人をその部屋に閉じ込めた。

 しかし、桃太郎は頑丈な手錠を掛けられていたはずである。それは、ここに来る前に、ユリカから貰った超小型レーザー銃を口のなかに仕込んでいたのである。これを器用に口から取り出し手錠を焼き切ったのだ。

 桃太郎は自分が部屋から脱出したことが、皆に知れ渡らないうちに、このアジトから外に出ようとしていた。その為、この広い家の廊下を、なるべく音を立てないように走って移動しつつ、出口を探した。

 それでも桃太郎は、向こうから歩いてくる二人の兵士に気付かれた。

 一人の兵士が「桃太郎が逃げ・・・・」と大声でしゃべっている途中で、桃太郎は彼の腹部に打撃を加え、更に隣にいた兵士を膝蹴りして気絶させた。

 更に走っていくと、今度は異変に気付いた兵士が電子銃を構えて立っていた。

 桃太郎は走りながら、兵士の立っている真上に天窓がある事を確認していた。桃太郎は撃ってきた電子銃を紙一重でかわしながら、その兵士に向かって突進していった。兵士に体当たりする直前で、垂直に飛び上がり、彼の肩の上に立った。そこから更にジャンプして天井にある天窓を打ち破って屋根の上に飛び出した。

 天窓を破壊した音に驚き、庭にいた数人の兵士が屋根の方を見ると、桃太郎の姿を確認した。

 彼らは一斉に電子銃を構えて撃ってきた。更に家の中にいた兵士たちも、次々に庭に出てきたのである。

 これでは再び桃太郎が捕まるのも時間の問題であるように思えた。桃太郎は電子銃をかわしながら屋根の上を走りまわった。

 桃太郎は逃げ回りながらも空を見つめていた。ここに来る前にユリカと立てた作戦では、飛雄が空で待機しているはずであった。しかし、その飛雄を見つけることが出来なかったのだ。

『おや、何か問題でも起きたかな?』中々計画通りには行かないものである。

 そうこうしている内に、ついに一人の兵士の放った電子銃が桃太郎に命中してしまった。

「おい、やったぞ。確認するんだ」

直ぐに数人の兵士が屋根に駆け上り確認した。だが、それを見た兵士は目を疑った。それは桃太郎の服を着た、ネビロン人であったのである。

「おい、これは桃太郎じゃないぞ」

「いったい何処へ行ったんだ」

 彼らは、周辺を探した。すると一人の兵士が「あんな所を桃太郎が走っているぞ」と叫んだ。彼の指差した方向を見ると、ティーシャツ姿になって走っている桃太郎がいた。

 その報告を受けて、カーマンは即座にエアバイク隊に指示し、桃太郎の後を追わせた。

 いくら桃太郎が早く走れても、エアバイクでは直ぐに追いつかれてしまう。そして悪い事に、この場所は森も無く、平坦で隠れるような所もない。

 ついに、桃太郎は追いつかれてしまった。しかも、そこは断崖絶壁である。眼下には太平洋の大海原が広がっているが、そこまでには相当の距離がある。飛び降りるには死を覚悟しなければならない。

「桃太郎、もう逃げ場は無いぞ。観念するんだな」

 桃太郎は、再び空を見上げた。だが無常にも飛雄は来ていない。そこで桃太郎は海に飛び込む覚悟を固めた。兵士が桃太郎を気絶させるために電子銃を放った。その瞬間、桃太郎はきれいな放物線を描いて海に飛び込んだ。

「なんて奴だ。ここから海に飛び込むとは!」

 しかし、ネビロン人の中にも勇気ある者がいた。彼らの中から二人が海に飛び込んだのである。

 だが、二人の内、一人はそのまま消息を絶った。そしてもう一人が海の中からひきつった顔を出し「ここは危険だ。サメがいっぱいいるぞ」と言って、悲鳴を上げた。哀れにも彼はサメの餌食となってしまったのである。

 カーマンが血が漂っている海を覗いて見ると、サメの背ビレを幾つも確認できた。

「桃太郎も、この海では助かるまい。生きたまま鬼ヶ島へ連れて行きたかったが仕様があるまい」とカーマンは言い残して引き返していった。


 しかしながら彼らの予想に反して、桃太郎は生きていた。そのサメの群れの中には、ひときわ大きなサメ『シーザー』がいて、その背中に乗っていたのである。

「桃太郎、久し振りだな。それにしても、あんな崖の上から飛び降りてくるとは驚いたぜ。無理ばかりする奴だ」

「はっはっは、まさかお前がここにいるとはな。地獄に仏とはこのことだ」

「サメが仏とは恐れ入ったぜ」

「それもそうだ。誰だって海でサメと遭遇したら、震え上がるからな」

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