桃太郎捕らえられる
翌朝、桃太郎は貰った地図を頼りにネビロン人のアジトに向かった。
アジトが近づいてくると、桃太郎はまず近くにある高台に登り、眼下に見えるアジトの様子を探った。そのアジトは海沿いに建てられている。
『兵士が五十人ほどいるようだ。セキュリティシステムも相当しっかりしている。迂闊には手を出せんな。下手なことをすればお爺さんとお婆さんが心配だ。まあいい、彼らの計略通り大人しく捕まってやるか』と桃太郎は、そこまで考えると、大胆不敵にも平然とアジトに向かって行った。
暫く歩いていくと、アジトの門が見えてきた。「よし」と自分に言い聞かせながら、つかつかと歩いていった。門番の兵士に、「桃太郎が来たとカーマンに伝えるんだ」と言った。門番は驚いて無線機を使って桃太郎が来たことを告げた。
暫くすると、家の玄関からカーマンが数人の兵士を引き連れてやってきた。
「おや、桃太郎、久しぶりだな。今度ばかりは手も足も出ないようだな」余裕のある顔で桃太郎を迎えた。
「やあカーマン、元気そうだな。お前たちも軽蔑している地球人と同じように卑怯な手を使うんだな」、カーマンの目を真っ直ぐに見ながら皮肉った。
カーマンの顔が急に不機嫌になった。「桃太郎に手錠をかけるんだ」と兵士に命じた。
「ちょっと待て、その前に、お爺さんとお婆さんを解放するんだ」
「それもそうだ。二人を連れて来い」
苦々しい顔をしながら部下に命ずる。
すると、家のドアが再び開き、数人の兵士たちに囲まれて二人が現れた。二人は桃太郎の姿を見つけると、「ああ、桃太郎!私たちのことは、ほって置けば良かったんだよ」と涙を滲ませながら言った。二人の姿が妙に小さく見える。
「大丈夫ですか、私のことは心配しないでください。村の人達も心配して来ていますよ。」と桃太郎もなるべく平静を装いながら言った。そして、いつの間にか門の外には、大勢の村人と、犬のムサシ、そして猿のサスケとその仲間たちが来ていたのである。
すると、村人の一人が「正一郎さん、洋子さん。さあ、一緒に帰りましょう。桃太郎さんは強い子だから、直ぐに戻ってきますよ」と言って二人を慰めた。
カーマンは「さあ、早く二人を門の外に出すんだ。そして桃太郎に手錠を掛けろ」と命じた。
二人は早々に門の外に追い出され、そこから手錠を掛けられる桃太郎の姿を見た。
二人は「桃太郎」と叫びながら、その場に泣き崩れた。
桃太郎は、その姿を見ながら、「お爺さん、お婆さん、私は大丈夫ですよ」と言って、心配させないように自信に満ちた笑顔を見せた。
次回は、桃太郎のアジトからの脱出を描く予定です。
ご期待下さい。