ユリカ拉致事件
桃太郎は、ユリカのもたらした情報によって、大きな希望を見出した。そして、ペルシカ人と地球人を救い出すために、更に厳しいトレーニングに励もうと決意した。
さて、ユリカの父はディアボロスによる邪心を増幅させる電波を妨害する装置を開発した。しかし、ネビロン人に捕らえられる直前に、その装置の場所と研究室の場所を自分の脳から完全に消し去った。
ユリカの父は、人の脳から部分的に記憶を消し去る装置を開発してあったのだ。そうすることによって、ネビロン人の拷問や自白装置によって不用意に秘密を漏らさないようにしていた。
そこで、ネビロン人は娘のユリカが、その装置の場所を知っているのではないかと思っていた。
それでユリカと桃太郎が湖で出会った後の帰り道をネビロン人が待ち伏せしていたのである。ユリカは桃太郎と別れた後、楽しい気分に浸りながら歩いていた。ネビロン人の特殊工作隊員の二人は気配を消しながら、一人は木の陰に、もう一人は向かい側の木に登って待っていた。
何も知らずに、ユリカがその場所を通り過ぎようとした時、背後からネビロン人が襲いかかってきた。
ユリカは悲鳴を上げる間も無く、大きな手で口を押さえられた。が、次の瞬間、そのネビロン人は数メートル先に突き飛ばされていた。上空を飛んでいた飛雄が、その異変に気付き急降下して攻撃を仕掛けたのである。
しかし、ホッとしたのも束の間、今度は樹上から網が投げられた。
そして、樹上のネビロン人は網を強い力で引き上げようとしていた。
万事休すかと思われたが、飛雄の体は特殊合金で作られており、その体を大きくしたり細長くしたり自在に変形できた。その機能を使って網の目からすり抜けた飛雄は一直線に樹上のネビロン人に突進していった。
そのネビロン人は紙一重で、その攻撃をかわした。さすがは特殊工作隊員である。さらに飛雄の攻撃を二度三度かわしていたが、勝ち目が無いと思ったのか、一目散に逃げて行った。
飛雄は深追いはしない。あまりユリカと離れてしまう事を恐れたからだ。その為、直ぐにユリカの所へ戻ってきた。
「ユリカ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」とユリカは平然として答えた。ユリカもまた、自分の両親を助けるまでは弱音は吐かないと決意していたのである。
「ユリカ、ここは危険だ。またネビロン人が襲ってくるかも分からない。急いで移動しよう」
「そうね、じゃあ頼むわよ」
飛雄は、その体を大きく変身させ、その背中にユリカを乗せた。
だが、その飛雄の後を直径数ミリの球形の物体が空中を浮遊しながら追跡していることにユリカは気が付かなかった。
勿論、その物体は研究所の場所を調べる為に特殊工作隊員が放ったものである。