鬼ヶ島探索
一方、ユリカは父親が作った研究室に閉じ篭っていた。
そしてキジ型ロボットの飛雄は実は一号と二号がいたのだ。能力はほぼ同じであったが、一号はユリカの護衛用にプログラムされており、常にユリカの近くにいた。それに対して、二号は偵察用に作られており、記憶装置やデータ分析能力に優れていた。また相手のレーダーに引っかからないようにステルス機能を備えていたのである。
また研究室は地下百メートルに存在していた。それはネビロン人に、その存在を知られたくないためである。その為、研究室の出入りには最善の注意が払われていた。本当は、ユリカは学校に行かなければならなかったが、秘密性を高めるために、“病気のため長期治療中”ということにして欠席しているのである。こうしてユリカは必然的に研究室に篭ることになってしまった。
桃太郎との連絡は例の宝石を使えば簡単に出来るのだが、それではネビロン人に傍受される危険性があるので、その使用を禁止していた。それで、仕方なく桃太郎との連絡にも飛雄二号を使っていた。
また、ユリカは飛雄二号を使って、何度と無く鬼ヶ島を偵察させた。そして、その膨大なデータの整理に没頭していた。ネビロン人の基地進入の経路は何処からがベストなのか、捕らえられたペルシカ人や地球人はどの場所にいるのか、ディアボロスという装置は何処にあるのか、警備体制はどのようになっているのか、エネルギー源には何を使用しているのか、そして食料はどうしているのか、などを調べなければならなかった。
空気孔なども島のあちこちに見られ、樹木などでカモフラージュされており、一見しただけでは分からない。また、そこからダクトがどのように基地内を巡っているかなども調べた。飛雄には透視能力も備えられており、それを使って詳細に調べ上げた。
また、地下には巨大な農園があることが確認された。捕らえられたペルシカ人や地球人のほとんどは、その場所で働かされていた。この農園から収穫される作物が基地内の食料として使われていた。そして、この農園は、ペルシカ人の頭脳と地球人の労働力とによって開墾され、そのシステムは画期的なものであった。
地下であるにもかかわらず、人口太陽があり、またそよ風も吹いており快適そのものであった。
そこで働く地球人たちもペルシカ人に感化され、良心が浄化され、人格が磨かれていった。
ペルシカ人は、そのような地球人を見て、地球の未来に希望のあることを実感していた。地上の乱れきった世界とは全く違う、おだやかな時間が流れていた。
そのような農園でもネビロン人の兵士は電子銃を持ち、何か不信な行動が起これば、それに敏速に対応できる体制が整っていた。
兵士は最初こそ神経を尖らせて、監視していたが、ペルシカ人と地球人との和気藹々とした姿を見て、ネビロン人の兵士も少しずつ感化されていったようである。兵士たちの鋭い目つきは、時間が経つに従って穏やかな目つきに変わっていった。そして、上層部の力づくによる地球侵略に疑問を持つ者も出てきたのである。
また、島の南側は絶壁なっている。そして、その水面下には潜水艇の出入り口があった。また更にその下には巨大な水槽があり、あらゆる種類の魚の養殖場があった。基地内の蛋白源はここから供給された。ここにもペルシカ人の技術が活かされていたのである。
捕らえられた地球人の中には寿司職人などもいた。そしてマグロなどの養殖にも成功していたため、基地内でも新鮮な刺身を食べることが出来た。
全体的に地上にいる人間たちの平均的な生活よりもずっと健康的で環境に優しい生活を送ることが出来た。それはペルシカ人の指導による所が大きい。
これらの膨大なデータを飛雄二号は調べてきたのである。ユリカはそのデータを飛雄の記憶装置から取り出し分析した。
また、ユリカは飛雄がもたらした動画データの中に自分の両親が映っていることを確認できた。ユリカはその元気そうな姿を見てほっとした。そして、桃太郎とともに必ず救い出すことを決意するのであった。